2017年1月25日(水)にConsulactionセミナーが開催されました。
このページでは、当日の講演内容を要約した、セミナーレポートをお届けします。

データ分析、ターゲットのプロファイリング、タッチポイントに関するシナリオづくり──。
そういったマーケティング活動から発見された生活者のインサイトを、コミュニケーションやクリエイティブに適切に反映させていくにはどうすればいいのでしょうか。
この日のセミナーでは、さまざまなデータを連携させ、プラニングとマーケティングアクションをシームレスにつなげる“生活者データ・ドリブン”マーケティングの実践例が紹介されました。

博報堂 データドリブンマーケティング局 生活者データマーケティンググループ グループマネージャー 島野 真(写真左)
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局 データマネジメントプラットフォーム開発部長 徳久 真也(写真右)

デジタルトランスフォーメーションの時代

博報堂は、従来のメディアプランニングやマーケティングに、新しいテクノロジーや生活者データを組み合わせて戦略を立案する実践型組織「データウィングス」を2014年に立ち上げました。
今日は、その組織の「データマーケティング戦略ユニット」の担当者が、最新ソリューションをご紹介します。
現在、デジタルやITによって世の中の仕組みが大きく変化する「デジタルトランスフォーメーションの時代」を迎えています。
デジタルトランスフォーメーションは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる時代」と定義されていますが、マーケティングの視点から見れば「あらゆるタイミングや場面で、さまざまな機器を通じて、各種のデータが活用され、マーケティングが革新される時代」であると言えます。
鍵を握るのは、データの徹底的な活用です。

例えば、日本酒市場が年々縮小する中にあって、10年間で年商を13倍にした日本酒メーカーがあります。
日本酒づくりは、従来、杜氏の経験値に大きく依存していました。
同メーカーが目指したのは、その経験値(=暗黙知)の形式知化であり、属人性の排除でした。そこで、現場からのデータ収集、分析、共有によって誰もが美味しいお酒を作れる仕組みをつくり、また上手くいかなかったときでもデータに基づいて微調整・修正を行うことで大きな成果を上げたのです。

「生活全体」への働きかけが必要

一方で生活者の側でも変化が進行しています。 スマートフォン所有率は7割を超えました。
1日当たりのメディア接触時間を見ると、PC、スマホ・携帯電話、タブレットといったデジタルデバイスによる接触時間は、合計するとテレビを超えています。
スマホによって、情報発信も容易になりました。
スマホで撮った写真をSNSなどで共有する人の割合は67.1%にも上っています。

また、買物のスタイルも変化しています。
店頭で気になる商品があった場合、すぐに買わず、ネットで検索して比較検討する人が増えています。
車を買う場合も、以前は購入前のディーラー訪問回数は平均7回でしたが、これがこの10年間で1.5回に減っています。車の購入意向者は、必要な情報の多くを来店前にネットから得ているわけです。
多くの人々が、24時間365日、スマホを活用しています。
このような時代にマーケティングに求められるのは、生活者の「生活全体」への働きかけであり、生活者とのあらゆる接点で得られるデータを上手に活用することです。

シームレスなマーケティングモデルを

しかし、これまでマーケティングの現場では、データや分析プロセス、またそれに対するアクションが「分断」されていなかったでしょうか。
従来のマーケティングデータは、「潜在顧客への投網的なマスアプローチ」と「既存顧客へのCRMアプローチ」の両極での活用にほぼ限られており、その間には断絶がありました。
それに対し、私たちが提唱する“生活者データ・ドリブン”マーケティングは、DMP(データマネジメントプラットフォーム)を活用して、潜在客獲得から顧客化までをシームレスに実現するモデルです。そしてこのモデルで使われるのが、「生活者DMP」です。
博報堂が独自に開発した生活者DMPは、市場および生活者の意識と行動をトータルに捉えるだけでなく、適切な情報発信も可能にするソリューションです。
これを活用することによって、顔の見えないターゲットに無闇にアプローチをする非効率な方法や、自社データのみに依存したCRMによる「縮小均衡」のスパイラルから逃れることが可能になります。

データを起点にマーケティングを統合。売上の再拡大へ。

それでは、シームレスなマーケティングモデルについて、その具体的な事例を見ていきたいと思います。
まず、「意識調査×アクチュアルデータ」の融合が成功を収めた化粧品会社A社の事例をご紹介します。
商品開発力や店頭接客力に強みを持つA社は、テレビ広告によってブランドの世界感を訴求し、店頭に見込み顧客を誘引して顧客化するというモデルを長い間継続してきました。
しかし最近、売上が低迷し、そのモデルを検討する必要が出てきました。
検討の結果、売上低迷の背景には広告活動や販売促進活動といった個別の活動の改善だけではなく、マーケティングサイクルを全体最適視点でシームレスに再構築することが必要であると判断しました。
具体的には以下の4つのプロセスをつなげるモデルです。

●購買単価の高いターゲットを「見つける」
●ターゲットに精度よくアプローチし「連れてくる」
●納得して購入してもらえるまで徹底的に「育てる」
●次の成功パターンを「見極める」

このモデルを実現する方法が「意識調査×ウェブ上での行動データ」を集約したA社オリジナルデータベースを構築することであり、そのために活用したソリューションが「Querida(クエリダ)」でした。
まず、化粧に関する意識調査の結果から3つのターゲットクラスターを抽出し、それぞれの詳細なペルソナを作成しました。
次に、カスタマージャーニーのプロセス上で態度変容とメディアの関係を分析し、ターゲットごとのメディア戦略を見極めました。
そして、マスメディアでワンメッセージを発信するだけでなく、デジタルも活用してターゲットごとにきめ細かに異なるメッセージを発信する方法を模索しました。
マスでのメッセージに関しては、Queridaのテレビ視聴データを活用し、ターゲットごとの視聴率を抽出し、ターゲットの実態を踏まえたメディアプランニングを実施しました。

一方、デジタル領域に関しては、カスタマージャーニーの初期段階の情報接触内容や接触頻度によってブランドとの距離が変化することに着目し、マスメディア接触頻度の多さでそれぞれのターゲットをさらに11のクラスターに分類しました。
そして、そのクラスター別にメッセージシナリオを策定しました。

急がば、“デジタルを”まわれ

化粧品のような商品カテゴリーの場合、生活者はテレビCMの華やかな世界観に魅了されるものです。
しかし一方で、商品を選ぶ際の「失敗したくない」という不安が大きいという事実もあります。
マスとデジタルの統合は、そのような生活者インサイトを踏まえた戦略であると言えます。
これらの施策は、ブランド認知率、購買意向の向上、デジタル広告のクリック率の向上と、目覚ましい成果に結びつきました。
さらにオウンドメディアへの誘引に成功したのちも、どのコンテンツに接触したかで生活者の「ホット度」を判別し、それに基づいた情報提供を行い、効果を上げました。
重要なのは、見込み顧客を「育て」、購買へと誘導することです。
まだ「ホット度」の低い生活者を無理に店頭に送客しても、購買行動にはつながりません。
必要なのは、マスで「感性的な世界観」を伝えるだけでなく、デジタルで「理性的な商品価値」を訴求することです。
「急がば、“デジタルを”まわれ」──。
そんな視点が大切であると私たちは考えます。

Queridaを活用した新しいマーケティングモデル

Queridaの活用によって、以下のようなマーケティングのプロセスをつなげることが可能になります。

①データをつなぐ
②ターゲットを抽出する
③ターゲットを理解する
④最適なメディアでアプローチする
⑤最適なメッセージで関係を深める
⑥次の戦略にフィードバックする

Queridaを活用する新しいマーケティングモデルを導入したA社は、広告投資が前年同規模の中で、売上・営業利益において想定以上の成果を達成しました。同じく、顧客単価・新規客数でも改善しています。

そればかりではありません。DMPの活用によって、それまで異なるデータを使っていた商品開発部、宣伝部、販促部といった部門間の連携が成立し、全体最適視点での戦略立案ができるようになったことも大きな成果でした。
意識データ(調査データ)と行動データ(ウェブアクチュアルデータ)がつながることによってもたらされる効果は、以下の3点に整理できます。

①緻密なターゲティングで狙うべき顧客を見つけ、購入まで徹底的にアプローチできる。
②成果に繋げる「ターゲットの徹底育成」と、今後のマーケティング勝ち筋を発見し、競争力を高められる。
③データを起点に組織間の連携が強化され、企業全体のマーケティング活動を強化できる。

購買データとオンラインデータの融合

次に、「購買データ×オンラインデータの融合」が可能にする、シームレスなマーケティング実践例をご紹介します。
ターゲット分析は完璧。定性・定量調査を何度も実施し、生活者のインサイトを把握することもできた。しかし、施策、とりわけデジタルを活用した施策に、それらを生かすことができない──。
そのような課題をお持ちの企業が少なくないと思います。
その課題を解決するためには、「購買データ」に着目することが必要であると私たちは考えます。
購買データ活用は、ある意味でマーケティング戦略そのものです。購買データを使うことで、以下のような課題を解決することが可能になります。

●「ブランド浮遊層」をうまくつかまえ、自社ブランドのシェアを高めたい。
●同業他社ではなく、「異業態からのチャネルシフト」を促したい。
●最近ブランドから離れてしまった「離脱層」を取り戻したい。

では、購買データはどのように活用すればいいのでしょうか。有効なのは、購買データとウェブ閲覧データとの結合です。
それによって「マーケティングプラニング」と「エグゼキューション」を切れ目なく統合することが可能になります。
それを実現するマーケティング&メディアソリューションが「POS-AD®」です。
POS-AD活用のステップは、以下のようになります。

<STEP1>
大規模な購買アクチュアルデータから、マーケティング上狙いたいターゲットを設定する。

<STEP2>
STEP1で設定したターゲットの購買特性と似たウェブ上の閲覧傾向を持つ人を統計的に推定する。

<STEP3>
狙いたいターゲットの特性を保持して、幅広いデジタルメディアに広告を配信する。

大規模な購買アクチュアルデータを確保しながら、業態や地域などのかたよりを補正できるのがPOS-ADの特長であり、消費財メーカー、流通・外食チェーン、通信・金融・自動車など、多様な業界で活用いただける点にもPOS-ADの強みがあります。

複雑なターゲティングを可能にするソリューション

POS-ADのソリューションには、オンラインとオフラインのデータを掛け合わせる「マーケティングプラニング支援サービス」と、購買データを活用した「広告配信サービス」の2つがあります。
前者は主に事業部向け、後者は主に宣伝部向けのソリューションです。
またPOS-ADは、「ブランディング」と「購入喚起」の2つの目的で活用していただけます。
高精度なターゲティングによって、生活者に「深く」情報を届けることが可能です。

では、具体的な活用事例を見ていきましょう。
一つ目は、あるオンライン通販会社の事例です。
同社は、古くからオンラインで健康食品通販を展開するダイレクト系企業です。
これまでは、既存顧客へのリターゲティング広告を活用していましたが、最近になって広告のパフォーマンスが落ちてきました。
今までアプローチしたことのない潜在顧客をいかに発掘して獲得するかが大きな課題でした。
そこで、POS-ADを活用して「ドラッグストアでの類似商品購入者ターゲティング」 を実施しました。
「35歳の男女で、ドラッグストア店頭で直近1年以内に類似効果を持つ医薬品の購入経験者」をオンライン通販にチャネルシフトさせる戦略です。
成果指標は「購買(お試し購入+定期購入の合計)」でしたが、結果は、直接購買率が通常配信の1.9倍、間接購買率が同じく3.4倍を記録しました。
今までアプローチできなかった新規顧客を獲得し、ターゲットの裾野を広げることに成功したわけです。

的確なターゲティングがビジネスの成果につながる

二つ目の事例は、あるヘアケアメーカーの取り組みです。
高価格帯(2,000円超)のアウトバストリートメントの新商品の導入を効果的に行いたい。
本当に買ってくれそうな、購買ポテンシャルの高いターゲットにのみ広告を届けたい──。
それが同社の課題でした。

POS-ADで実施したのは、「ヘアケア超ウルトラ高関与層ターゲティング」です。

「18歳から34歳の女性」で、「半年以内にアウトバストリートメントクリームを1つ以上購入」していて、「半年以内にプレミアムシャンプーを1つ以上購入」していて、「半年以内にプレミアムコンディショナーを1つ以上購入」している人が対象でした。

成果指標は「サンプル応募完了」でしたが、サンプル応募完了率30.9%と、通常配信の4.1倍以上を記録しました。

三つ目は、飲料メーカーの事例です。

同社は、競合がひしめくプレミアム缶コーヒー市場に後発組として参入しました。
課題は、新商品発売時に狙いたいターゲットに商品特徴をしっかりと理解してもらい、購入意向を高めることでした。
POS-ADで実施したのは「購買条件×メディア接触条件“合わせ技”ターゲティング」 です。
「22歳から45歳の男性」で「缶コーヒーヘビーユーザー(週1回以上飲用)」で、「プレミアム缶コーヒー購入経験あり」で、「1カ月に2種類以上の動画サイトを閲覧している人」がターゲットでした。
つまり、購買条件を満たしているだけでなく、動画接触確率の高いユーザーに絞り込んで狙ったわけです。
この事例での成果指標は「ブランド理解率と購入意向率の向上」でしたが、ウェブで測定したところ、新商品のブランド理解と商品購入意向が通常配信に比べて1.5倍以上となりました。

POS-AD導入後の展開

続いて、POS-AD導入後の展開についても見ていきたいと思います。これはシームレスなマーケティングモデルの「育てる」「見極める」のフェーズに当たります。
POS-AD配信後のデータ連携サービスには以下のようなものがあります。

●実購買トラッキングサービス=POS-ADで配信した「広告接触者」が実際に店頭で購買したかをトラッキングするサービス

●プライベートDMPデータ連携サービス=自社DMP(プライベートDMP)と、実購買データを連携させ、短期的な購買効果のみならず、中長期的な顧客育成&見極めを実施するサービス

POS-ADが目指すマーケティングプロセスのデジタル化は、以下のようなものです。

①購買データ起点のマーケティング戦略プラニング
→購買データ起点のターゲットのペルソナを詳細に分析する

②購買データ起点のデジタル広告配信
→購買データでターゲティングし、直接デジタル広告を届ける

③購買データ起点のマーケティングPDCA
→購買データでターゲティングし、購買データでその効果を検証する

最後に、「購買データ(オフラインデータ)」と「ウェブ閲覧履歴データ(オンラインデータ)」がつながることによって、実現することをまとめておきたいと思います。

①マーケティングターゲットがそのままコミュニケーションターゲットになる。戦略と施策の分断が解消され、新需要創造や効率化が実現する。

②今まで見えなかったターゲットインサイトが深く見えてくる。また、それをクリエイティブに反映することも可能になる。

③デジタル広告の成果が「購買データ起点」でPDCAできるようになる。

私たちは、「データウィングス」を中心とし、博報堂DYグループ各社の連携によって、“生活者データ・ドリブン”マーケティングを推進する体制を整備しています。
マーケティングの課題をお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

講師プロフィール

※掲載時プロフィールです。

島野 真(しまの まこと)
博報堂 データドリブンマーケティング局生活者データマーケティンググループ グループマネージャー

博報堂入社後、主にマーケティングセクションに在籍し、通信サービス、酒類、自動車、家電、飲料、ネットサービス、事務機器、重電等の業種の得意先を担当。
事業開発、商品開発、キャンペーン開発、ブランディング等を主領域として、多岐にわたる企業課題に向き合う。
その後、エンゲージメントプロデュース局アカウンタビリティ推進部部長として、マーケティング投資とその効果の関係性の明確化を推進。現在はデータドリブンマーケティング局生活者データマーケティンググループグループマネージャーとして、各種のアクチュアルデータの活用と「生活者発想」を起点に、新たなマーケティングソリューション開発やそれらを活用した戦略企画を実践。
ネット利用環境やメディアの変化にともなって生活者の情報行動・購買行動が複雑化するなかで、全体最適視点でのデータ活用による統合マーケティングマネジメントの進化を目指す。

共著:2011 基礎から学べる広告の総合講座(日経広告研究所)

徳久 真也(とくひさ しんや)
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局 DMP開発部長

経営コンサルティング会社を経て、2005年博報堂入社。
以来、流通、通信、飲料、食品、自動車、電機機器メーカー等、50社を超える幅広い得意先のマーケティング/事業戦略立案、総合コミュニケーション戦略立案、ブランディング、商品開発、キャンペーン開発業務等を担当。
2016年より現職。生活者データを活用した新しいマーケティング×メディアソリューション開発に携わる。

お問い合わせには、ログインまたは、会員登録(無料)が必要になります。