2017年10月18日(水)にConsulactionセミナーが開催されました。
このページでは、当日の講演内容を要約した、セミナーレポートをお届けします。

2025年に日本は「平均年齢50歳社会」を迎えます。
この急激な人口構成の変化にともなって、サービス、流通、価格設定、コミュニケーションなどが大きく変わっていくことが予想されます。
博報堂では、2014年以降、人口動態に基づいた社会と市場の構造変化を分析し、主にシニア層(50歳以上)を中心にマーケティングの転換を考えるプロジェクト「LEAD2025」を進めてきました。
この日のセミナーでは、これまでのプロジェクトからまとめた今後の市場分析とその活用方法に加えて、50歳以下の市場の見方も紹介されました。


博報堂 第三プラニング局 ストラテジックプラニングディレクター 古賀 晋(写真左)
博報堂 第一プラニング局 リサーチャー 西原 隆史(写真右)

50歳以上が市場標準に

2025年、団塊世代が75歳となり、後期高齢者の人口は総人口の18%に当たる2180万人に達します。
世帯数で見ると、75歳以上世帯が総世帯の22.6%に当たる1186万7000世帯に上り、うち単身世帯が447万2000世帯を占めるようになります。
今後、社会的サポートが必要な人が多数となる「負の高齢化」が順次進行していくことになります。
人口動態の予想は、ほぼ確実に当たると言われています。
「確実に来る未来」に私たちはどう対応していけばよいでしょうか。
ここでは2つの視点で見ていきたいと思います。まず、「市場標準としてのシニア」という視点です。

2つの「キラーデータ」をご紹介します。
1つは「2025年には、夫婦と子供あり世帯1152万に対し、単身世帯1782万になる」というデータです(「社会保障・人口問題研究所 推計値」より)。
つまり、単身世帯が標準世帯になるということです。
それだけではなく、単身世帯の高齢化も同時に進行します。

もう1つは、「2025年には、生活者の在宅時間が長くなる」というデータです。
70代以上女性の在宅時間は平日が19時間46分、日曜日は20時間21分、同じく男性の在宅時間は平日が18時間57分、日曜日は20時間01分です(「2010年国民生活時間調査」NHK放送文化研究所より)。
人口における高齢者の比率が高まれば、生活者が家にいる平均的な時間が長くなるわけです。

その結果、家は「住むだけの空間」ではなくなり、多機能化が進んでいくことが予想されます。
また、高齢ドライバーの運転免許証返納が増えるため、遠出がしにくくなることも考えられます。

そういったデータを踏まえ、企業や事業における「未来の課題」をあぶり出し、その解決方法を探っていくことを私たちは提唱しています。
その際、自社の「強み」と「弱み」を明確にした上で、データを踏まえて「機会」と「脅威」を特定し、課題を抽出していく「SWOT分析」が基本的ではありますが、有効であると私たちは考えます。

「LEAD2025」の具体的な活用法

さて、「LEAD2025」の「OVER50」のデータには、どのような活用法があるのでしょうか。
考えられるニーズは、例えば以下のようなものです。

  • 2020年オリンピック以降の社会がどうなるかを知りたい。
  • 次世代の経営者・マネジメント層を育成したい。
  • 中期経営計画立案のヒントがほしい。
  • 組織を「縦割り型」から「横串型」に改革したい。

私たちは「OVER50」のデータの活用例を、これまでの実績に沿って3つのタイプに分けてみました。
その1つが「企業ブランディング」です。
例えば、「新部門を設立し、R&D起点の企業ブランディングを実施する」という案件があります。
これは、社内のモチベーション低下や、企業イメージの低下、主要事業の売上不振といった逆境にあるメーカーが、「LEAD2025」を活用して若手社員を巻き込んだプロジェクトを実施し、組織の横連携による新部門を設立して「R&D起点の健康」というテーマでメーカー初の企業ブランディングを遂行する、といったケースです。

「R&D起点」という方法には大きな可能性があります。
これまで発見されていない企業の資産が見つかるケースがしばしばあるからです。
またここから、「CTO(最高技術責任者)起点の企業ブランディング」という実践の可能性も開けるはずです。

2つめが「新事業・ブランド開発」です。これに該当するのは、ブランドを横断した役員・担当者が参加する社内ワークショップで「LEAD2025」を活用し、それをきっかけに新しい事業や商品を考える、といった事例です。
新事業開発ニーズはあらゆる分野の企業で増えています。
それにともなって、アイデアをストレッチするツールとしての「LEAD2025」の活用例も増加傾向にあります。

3つめが「インナー意識統一」です。社内における働き方のデザインをしていくに当たって「LEAD2025」を活用していくことで、「ビジネスに直結するワークデザイン」をつくることが可能になります。

会社や事業のストーリーを描く

課題や方向性を明確にしたうえで、事業分野などに合わせた個別のストーリー構築をすることも可能です。
例えば「2025年における“働く”」「2025年における“食”」「2025年における“住”」などです。

「働く」というテーマに関して、ここでまたキラーデータを提示したいと思います。
「フリーランスが増加し、全労働者の3分の1になる」というデータです。
個人事業主で店舗を持たないフリーランス労働者は、現在、日本に約127万人います。
一方、アメリカではフリーランス人口は5300万人で、労働者の34%まで達しています(政府税制調査会/2015年9月3日)より。
日本も今後、アメリカのようにフリーランスが増え、労働者の3分の1を占めるようになることも十分考えられます。

フリーランスの増加にともなって、働くスタイルも新しくなっていくでしょう。
すでに日本でも社員の副業を認める企業が増加傾向にあり、多様な人材が働く場を共有するコワーキングスペースも増えています。
今後はさらに働く場所が多様化し、これまでになったような新しい「場」が生まれることも考えられます。
そこから、企業の垣根を超えた新しいビジネスが立ち上がる可能性もあるでしょう。
今後は、新しい状況に合わせて企業内からアイデアを出していく取り組みが重要になります。
例えば、次世代を担う社員を選出し、部門を超えて課題を探るワークショップを実施して会社のあるべき姿を考え、その結果を経営層に提言する、といった方法を私たちは推奨しています。

UNDER50を見る7つの視点

さて、「LEAD2025」のプロジェクトの中から見えてきた課題もあります。それは以下のようなものです。

  • 高齢者を対象としない事業は今後どうあるべきか。
  • 超高齢社会における新しい「ビジネスの芽」を見出すにはどうすればいいのか。
  • どのようにして需要を創造していけばいいのか。

そのような課題に対応していくためには、人口の50%を占める「UNDER50」について見ていく必要があります。
高齢化が進む一方で、「若い世代を起点にした社会づくり」に関する議論も活発になっています。
例えば、「こども保険」の導入をめぐる議論などがその一例です。
「OVER50」がどちらかというと「課題解決視点」であるのに対し、「UNDER50」は「未来創造視点」であるということができます。
この二つの視点を両立していくことがマーケティングやブランディングにも求められています。
「UNDER50」には7つのキーワードがあると私たちは考えます。それぞれについて見ていきたいと思います。

1、 ミレニアル世代
ミレニアル世代とは「1980年以降に生まれ、21世紀に入った頃に社会に出た30代半ばまでの若者たち」のことです。
2025年には、世界の労働者の75%がミレニアル世代になると言われています。
日本国内ではこの世代のボリュームは小さく見えますが、世界的には今後ミレニアル世代が主役になっていきます。
ミレニアル世代の特徴として「国境を越えて価値観が共通していること」が挙げられます。
ミレニアル世代にとっての価値はたった17の要素に集約されるとも言われます。
これは、例えばグローバルコミュニケーションにおいて「一つの強力なメッセージをシンプルに伝える」という戦略が有効になることを意味します。

2、人生100年
2045年には人々の平均寿命は100歳になります。この先、先進国で生まれる子どもは50%を上回る確率で105歳以上まで生きると言われています。
そうなると、従来の社会の仕組みと個人の命の長さにズレが生じることになります。
人生の後半戦をどう生き抜いていくか。
その「人生の予防」は、お金やモノよりも、スキルや人間関係などの無形資産によって構成されることになるはずです。
リタイア後に「セカンドキャリア」を考えるのではなく、若いうちからさまざまな仕事をし、さまざまな人間関係をつくる「パラレルキャリア」が100年スケールの人生のモデルとなっていくでしょう。

3、訪日客6000万人
2030年には、年間の訪日外国人が6000万人に達すると見られています。
これはもはや「旅行客」の規模ではありません。
そのうちの7割から8割はアジアの国々の人々です。
これは、日本とアジアがほぼ地続きの市場になることを意味します。
そのような時代には、インバウンドとアウトバウンドを組み合わせた「クロスバウンド」が重要になります。

4、ベーシックインカム
「すべての人」に「無条件」で、「毎月一定額」を支給する社会保障制度であるベーシックインカムの導入が世界中の国で議論されています。
もしこの制度が実現すれば、生活の基礎が安定するので、収入を気にせずにいろいろなチャレンジができるようになります。
つまり、ベーシックインカムは、人々を「総チャレンジャー化」するのです。
これまで、会社を起業する人(アントレプレナー)や社内起業家(イントレプレナー)はいましたが、ベーシックインカムの実現によって、自分の「好き」のために起業する「オウントレプレナー」が増える可能性もあります。

5、シェアリングエコノミー
さまざまな分野で盛んになっているシェアリングエコノミーですが、今後は「シェア」と「購買」の垣根はどんどん低くなり、部屋、移動手段、モノ、お金と拡大していくと見られます。
そうなるとむしろ「シェアできないものは何か」を考えるところにビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
健康に関わるもの、所有することに価値があるもの、人のネットワークなどはシェアできないものであり、そこに付加価値の高いビジネスが成立する可能性があります。

6、プラットフォーマー
プラットフォーム事業者が「一人勝ち」するビジネスモデルが拡大しています。
プラットフォームビジネスには、拡大すればするほど競争力が上がるという特徴があります。
それによって、関連する既存の事業者が収益を上げられなくなるケースも増えています。
そのような流れの中で自社のビジネスを守っていくには、従来の「4P(製品、販促、流通、価格)」モデルから、「4E(経験、約束、どこでも、値打)」モデルに発想を変えていく必要があります。
4Eの本質は「体験や経験によって顧客との絆をつくる」点にあります。
自社の資源を4Eで捉えなおしてみることがビジネスの防衛につながります。

7、教育2020年問題
2020年までに進められる教育改革によって、より実践的な「アクティブラーニング」が拡大すると考えられています。
それによって、これまでいなかったような新しい人材が生まれ、企業の人材確保のあり方も変わる可能性があります。
比較的低年齢の段階でビジネスを体験する人たちが増えたり、実際に企業をしたりする人たちが増えたりすることも考えられるでしょう。
教育とビジネスは今よりも接近していくと見られます。

以上のように、UNDER50を起点に「新基準」を捉えることで見えてくるマーケットチャンスが数多くあります。
OVER50は、将来確実に向き合うことになる課題をあぶり出し、自社の技術による解決策を見つけ出すために必要な視点です。
一方、UNDER50は、未来の兆しから発想し、新しい基準をつくる変革の芽を生み出すために必要な視点です。
クライアントの課題や目的に応じて、これらの視点、発想、データを組み合わせながら、最適な協業の形をつくっていくこと。
それが私たちの役割であると考えています。

講師プロフィール

※掲載時プロフィールです。

古賀 晋(こが すすむ)

博報堂 第三プラニング局 ストラテジックプラニングディレクター

2004年博報堂入社後、ブランディング専門部門を経て、以後マーケティング部門に在籍。
一貫して、ブランディング・マーケティングを担当。
金融等のサービス系業務、自動車会社における国内/グローバル戦略等幅広く従事。
近年では、アルコール、飲料、外食等のマーケティング戦略を立案。東京農工大非常勤講師。

西原 隆史 (にしはら たかし)

博報堂 第一プラニング局 リサーチャー

2016年博報堂入社以降、マーケティング部門に在籍。
昨年から「LEAD2025」プロジェクトに参加。現在はトイレタリー、保険、菓子等を中心にリサーチ・プラニング業務を行っている。


お問い合わせには、ログインまたは、会員登録(無料)が必要になります。