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【セミナーレポート】2015年カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル 博報堂セミナー “Data-san -How Data Leads us to a Happier Life-“を開催

2015.07.16

データを擬人化したData-sanと、新しいデータの捉え方を語る!

2015年6月21日(日)から7日間に渡って開催されたカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルの「LIONS INNOVATION」にて、6月26日(金)に博報堂主催のセミナーが開催されました。

今回「LIONS INNOVATION」の審査員を務めた皆川治子(博報堂生活者データマーケティング推進局、TBWA\HAKUHODO)がモデレーター役となり、「データ」を日本流に、キャラクター化しData-san(データさん)とすることで、データとの向き合い方やデータというものに対する考え方、そしてデータを用いたアウトプットがどう変わるのか、いかにしてデータが私たちを幸せな生活に導いてくれるのかについて、データのスペシャリストである2人のゲストスピーカーが事例を交え紹介し、大盛況のもと終了しました。

1.生活者発想×データ

一人目のゲストスピーカーは博報堂生活者アカデミー主宰である嶋本達嗣。嶋本は、博報堂生活総合研究所が持つ生活者の意識調査のデータをもとに、データと人との関係性について話しました。新しい幸せのあり方、次の時代の幸福観を探していく広告会社のビジネスは「幸せの探検隊」であり、人々の意識・行動に関するデータが不可欠です。そして単なる手段ではなく「相棒」としてそのデータと付き合う、つまりData-sanとして付き合っていくことが大切です。そんなData-sanと幸せを探検した事例を、実際のデータと共に紹介しました。

① 生活定点調査からの発見

例えば、1992年より開始した「生活定点」調査で聞いている項目の中から「日本国民の人情味を誇りに思う」と答えた人のデータと「今の世の中は変化が多すぎると思う」というデータを重ね合わせてみると、それぞれが逆の形の推移をしていることが分かります。ここから、動乱期は自己防衛意識が高まり、安定期は他者への思いやりと感謝が帰ってくるという人々の意識が見てとれます。つまり、人情味を誇りに思う人の値が過去最高値となったいま、日本では連帯、互助する幸福へと幸せのモデルチェンジが起きているといったような仮説が立てられるのです。これは、長年に渡る大規模定点調査を元にData-sanとの対話を行うことで可能となりました。

② マインドスコア調査からの発見

また、普段何気なく使っている言葉を数字に直すマインドスコア調査によって、「近所」とは自宅から何メートルの範囲なのかについて聞いてみると、若い人々ほど遠くまでが近所で、歳を取るにつれ近所の範囲は狭くなっていくという結果になりました。超高齢社会に突入しようとしている日本において、移動範囲の広い若者やミドル層の家族は郊外に住み、移動範囲の狭い高齢者が都市中心部に住む、コンパクト・シティという構想は有効ですが、調査結果に従う考えは、実は高齢者をより弱くしてしまうという側面を孕んでいます。意欲の落ちた人を閉じ込めるのではなく、人の意欲を誘い出す「移動目的の開発」も必要なのです。つまり、時にはData-sanの指し示す答えに反論してみることで新たな関係を築いていけるということです。

2.テクノロジー×データ

二人目は株式会社日立製作所研究開発グループ技師長の矢野和男氏。矢野氏は、テクノロジーとの掛け合わせによって、データとハピネスの関係性を解き明かしました。

日立では、世界的に見ても早い段階からウエアラブルデバイスの研究を始めていました。そこではデータ収集手段と平行して大量データの分析システムも開発され、「どうやったら儲かるか」について研究されていましたが、実は利益を生み出すということとハピネスには深い関係性がありました。ハピネスがビジネス成果に繋がっている例を、2つのケーススタディをもとに紹介しました。

① ホームセンターの事例

ホームセンターの事例では、センサを用いて売上のPOSデータに加え、顧客と従業員の店内の行動と商品ごとの位置情報を取得し、分析では、流通のスペシャリストと日立が開発した人工知能とで勝負をさせてみました。するとデータのみで分析を行った人工知能の解決策の方が勝ち、売上は15%も増加したのです。

実は売場のホットスポットに従業員が立つことで従業員全体のハピネスが向上し、それが売上を生み出していたということがData-sanとの会話によって解明されました。

② コールセンターの事例

また、コールセンターの事例ではオペレータの身体運動のデータから、休み時間に雑談が弾んでいるとハピネスが高まることが分かりました。休み時間を取る際、ばらばらにではなく、同世代の人たち4人一組でとるようにした結果、受注率が大幅に上昇したのです。個人のスキルが業績を決めそうな仕事において、休憩中の雑談とそれによるハピネスの方が業績への影響が強かったということが分かりました。

本来ならばセールスやKPIなど無機質な数値として捉えられがちなデータですが、ハピネスと関連付けることによって、実際にビジネスをより包括的に、そして普遍的に説明できるようになりました。こうしてData-sanと協力し合い、そしてData-sanとの生活を楽しむということがビジネスにおいて実は非常に大切なことなのだと、会場と共有しました。

みなさんも、Data-sanとの幸せ探しを是非楽しんでみてください!

※登壇者プロフィール、PDF版はこちら

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