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【アドテック東京セミナーレポート②】先進的なデータマーケティング戦略でグローバル展開する日本企業

2017.11.27
#グローバル#生活者データ・ドリブンマーケティング

今年9回目を迎えた、アジア最大級のマーケティングカンファレンス「アドテック東京(ad:tech tokyo)」。10月17日(火)、18日(水)の2日間に会場を訪れた人は1万4095人にのぼりました。本稿では、博報堂グループ関係者が登壇したセッションの模様を紹介します。

【先進的なデータマーケティング戦略でグローバル展開する日本企業】

川本暁彦:博報堂 グローバルデータマーケティンググループ データマーケティングコンサルタント
Liu Ken:Acxiom Corporation Managing Director, Acxiom China
一色健人:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 グローバルビジネス本部 リージョナルビジネス開発部部長
佐藤崇史:株式会社エムピーキッチン 代表取締役社長兼CEO

「データマーケティングは、事業活動全体にどのような影響を与えるのでしょうか」と、基本的な設問からセッションを始めたモデレーターの川本。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の一色氏は「海外では、国内よりももう少し広い視点でデータマーケティングをとらえています」とし、「たとえば、顧客のオーディエンスデータに、別のユニークなデータを掛け合わせてインサイトを引き出すといったこともしています」と、いわばマーケティングの上流での活動例を紹介。また、広告主には「マーケティングだけでなく、商品開発や在庫予測なども手伝っています」と幅広い活動をしている現状を説明しました。

Ken氏は「日本でもいわれているように、デジタル広告業界では、枠から人へと変化しています。つまり広告枠ではなく、オーディエンスデータを買うようになってきています。オーディエンスターゲティングをした上で、枠ではなく人ベースでバイイングをして、広告を打つわけです」と、データの重要性を指摘。さらに「事業側でも、たとえばブランドマーケティングとCRMやデジタルマーケティングなどを担当する部署が、データによって串刺しされるというか、ひとつになることができます。こうした方々に対して私どもはトラディッショナルなパネルデータによるインサイト導出ではなく、アクチュアルデータを用いて大容量かつ迅速なインサイト導出を実現させています」と、データの役割は大きいと語りました。

そうしたデータをどのように使っているか、また、自社の競争優位性はどこにあるかを質問された一色氏は、国内外に分けて説明しました。国内については「ほぼ全人口に匹敵するブラウザー利用などのリッチなデータを有しています。オンラインなどで消費者がどういう行動をしているかを示すデータですね。こうしたデータはパブリッシャーやデータパートナーからのものです」と紹介。さらに意識調査や購買行動などのデータを結びつけることによって「顧客のデータだけでは見えないことを可視化しています」と、博報堂DYグループならではの生活者視点のデータを提供できることを強調しました。海外については、主に活動している東南アジア、中国ともにエコシステムが日本とは異なるので、現地のパートナーとアライアンスを組んで活動していると語りました。

一方、Ken氏は「データのバリューを、事業会社、パブリッシャーやエージェンシー、システムベンダーやコンサルをはじめ、さまざまなステークホルダーに提供しています」と説明。「ファーストパーティデータに、サードパーティデータを連携させて分析し、その上でターゲティングをして広告配信につなげています」と、事業内容について解説しました。ファーストパーティデータの活用は、日本ではあまり行われていませんが、中国では進んでいます。Ken氏は「ファーストパーティデータを利用した場合と、利用しない場合を比べると、売り上げに大きな違いが生まれます」と、その重要性を指摘しました。

国内外で75店の飲食店を運営する佐藤氏は、リクルーティングではデータの活用は進んでいるが、「マーケティング部分、たとえば商品開発などで個人のデータの活用を実現するのはこれからの課題です」といいます。「これまでの商品開発は、すべてお客様が食べたすべてのメニューのABC分析と、クーポン券の利用から得たデータなどをもとに、あとは勘と議論で行っていました」。個人のデータを得ることによって「たとえば20歳代の男性、30歳代の女性がそれぞれ食べているメニューがわかり、ターゲットに合わせた商品開発がようやくできるようになったところです」と、現在の状況を話しました。

海外での事業展開について問われた佐藤氏は、「国内では店舗運営、マーケティング、商品開発など、それぞれに専門の人材がいますが、海外ではそうはいきません。一人で担当することがほとんどです。そうなると個人の経験や勘に頼ることになって、トライ&エラーが続き時間がかかります。事業を体系化したり、後任に引き継いだりするのにも時間が必要になります」と課題に言及。「トライ&エラーの時間や精度を、データで買うわけです」と、その重要性を説明しました。

海外における法規制やデータリソースついて、一色氏は「アジア諸国に比べると日本の法整備は比較的しっかりしているという認識です。よって我々は海外で活動を行う際、日本基準に当てはめて行うようにしています。一方データリソースについて、中国はサードパーティーデータベンダーが乱立しており、データの売買は日本より進んでいる面があります。東南アジアは発展途上であり、データリクルーティングを手掛けている我々にもビジネスポテンシャルは高いと思っています」と状況を説明。人材については「人材確保は重要課題の一つです。日本以上に東南アジアにおいてはデータマーケティング人材が限られている為、育成方法も大きなテーマになっています。一方中国は、人材はいるものの、アリババなどのIT巨人との獲得競争にさらされている為、獲得方法も大きなテーマとなっています」と、地域によって様々な課題があるとしました。

Ken氏は、「技術の進化に対応できる俊敏性、バランス感覚、よりベーシックなデータをセグメントするシンプリシティ、顧客のデータを大切に扱う倫理性などですね」と、今後のデータマーケティングに求められるものをあげました。最後に佐藤氏が「スピードが必要な事業の立ち上げと、その後のトライ&エラーにおけるエラーの削減に必要です」と、データマーケティングへの期待を寄せて、セッションを締めくくりました。

モデレーターを務めた川本は、「このセッションを通じて、同じデータマーケティングでも、中国と東南アジアにおいては、その進化の違いから事業課題が明確に違う事をお伝えできたのではと思います。博報堂と協業するDACにしても、Acxiomにしても、それぞれの国における事業課題をとらえ、最適な基盤整備を行った上で、我々とその先のクライアントにサービス提供をしようとしてくれています。とはいえ、データマーケティングはまだ発展途上のビジネスであり、我々としては基盤整備の部分から彼らと協業してビジネスチャンスを開拓しています。一方、企業経営者の佐藤さんに参加して頂いた事により、事業課題視点でセッションを進められたのは大きなメリットでした。データをマーケティング活用に閉じるだけでなく、人材リクルーティング、商品開発や事業推進に活用するなど、データの活用性を拡げて議論する事により、データマーケティングの意義と重要性をより深くオーディエンスに示すことができたのではと考えております」と語っています。

川本 暁彦(かわもと・あきひこ)
博報堂 グローバルデータマーケティンググループ データマーケティングコンサルタント

東南アジア、中国、および欧州得意先のデータマーケティング業務を担当。得意先のプライベートDMP構築から3rd Partyデータを活用した分析・セグメント開発、広告配信までカスタマージャーニーにおけるプラニング、エグゼキューション、そしてメジャーメントを提案実施中。博報堂DYメディアパートナーズ海外事業室およびDMP部にも所属しており、海外戦略の策定・投資案件のソーシング実行およびデータマーケティング基盤整備も行っている。

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・【アドテック東京セミナーレポート①】顧客中心主義とブランドの体験化

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