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【Consulactionセミナー】「生活者の行動」をシナリオ化する、次世代型統合マーケティング~統合マーケティングの効果を最大化する「アクティベーション発想」とは?~

2017.04.19
#Consulaction
2017年4月19日(水)にConsulactionセミナーが開催されました。
このページでは、当日の講演内容を要約した、セミナーレポートをお届けします。

近年、マーケティングにおいて「アクティベーション」というワードを頻繁に目にするようになりました。
ですがその定義は未だ曖昧で、様々な解釈が存在しています。

博報堂ではアクティベーションを「統合マーケティングの進化形」と捉えています。

この日のセミナーでは、次世代型統合マーケティングとしての博報堂のアクティベーションの考え方と方法論が詳しく語られました。

博報堂 アクティベーション企画局長 エグゼクティブクリエイティブディレクター 才田 智司(写真左)博報堂 統合プラニング局 大澤チームリーダー/クリエイティブディレクター 大澤 智規(写真右)

アイディアルから、アクチュアルへ

今日のセミナーのキーワードの一つは、「Ideal(理想)から、Actual(現実)へ」です。

従来のマーケティングでは「アイディアルターゲット」、あるいは「アイディアルカスタマー」を設定するケースが一般的でした。例えば、「週2回ヨガスクールに通っている22歳のOL」といったケースです。
しかし、実際にこのような生活者はどのくらいいるでしょうか。

これは、「カスタマージャーニー」について考える場合も同様です。
メディア環境が複雑になっていくと、生活者がどこにいて、それに対してどういう施策を打ち、ビジネスのゴールにどうやって導いていけばいいのか、を考えなければなりません。すなわち、カスタマージャーニーを作るということですが、これも往々にして「理想的なカスタマージャーニー」になってしまいます。

たとえば、「ウェブで検索し、店舗で品定めをし、その後ECで購買する…」
というような話はしばしば出てきますが、本当にその商品は、そのような動線で買っているのでしょうか。実際には、口コミで買っていたり、リアル店舗とECサイトの間を何度も往復するような人がいたりするのではないでしょうか。

また、自社のフェイスブックで「いいね!」をしてくれるのは、理想的な生活者かもしれませんが、その人が、本当に商品を買っているかどうかはわかりません。「いいね!」をして満足してしまったり、消費した気になってしまう「いいね!満足」「いいね!消費」といった現象は実際におきているのです。

このように、「理想」を念頭においてマーケティングを進めていくと、「現実」が見えなくなりがちです。
この視点がこれからのマーケティング、とりわけ統合マーケティングにおいては重要なポイントだと私たちは考えています。

「理想のターゲットの理想の行動」を想定するやり方から、
「現実のターゲットの現実の行動」を把握し、アプローチする統合マーケティングへ──。

それが私たちの考える「アクティベーション」です。

KPIは、「認知」や「共感」ではなく、「行動」

アクティベーションは直訳すると「活性化すること」「行動を促すこと」ですが、
マーケティングにおいては様々な定義があり、国内の広告会社の間でも、それぞれに解釈が異なっています。

博報堂のアクティベーションは、「理想」ではなく「現実」の行動にコミットする次世代型統合マーケティングです。単にブランドや顧客を活性化することではありません。

そしてこれは、「生活者発想」と「パートナー主義」という博報堂のフィロソフィーから生まれたものです。

博報堂のアクティベーションと一般的な統合マーケティングとの最も大きな違いは、目標(KPI)です。

一般的な統合マーケティングでは、様々な手法を一義的に統合することでメッセージ到達力を強化し、認知や共感を高めることが通常です。

一方、博報堂のアクティベーションでは、目標は「行動」です。
いかに生活者を「動かす」か、どの程度「動く」かがKPIなのです。
ですから、単に統合するだけではなく、様々な手法から最適なものを選択し、連鎖させる(生活者を動かすためのシナリオを構築する)ことになります。

一般的な統合マーケティングがIntegrate Creative(クリエイティブを統合する)だとすれば、博報堂のアクティベーションはConnected Creative(クリエイティブを連鎖させる)なのです。

「生活者発想」とアクティベーション

先に述べたとおり、博報堂には「生活者発想」と「パートナー主義」という2つのフィロソフィーがありますが、まず生活者発想とアクティベーションの関係についてお話します。

生活者発想とは、「人々を単に消費者として捉えるのではなく、多様化した社会の中で主体性を持って生きる生活者と捉えてすべてをプランニングする」という考え方なのですが、博報堂のアクティベーションは、まさにこの発想から生まれています。

インターネットやスマートフォンが普及した結果、私たちは膨大な情報と常に接していますが、その量は既に、人間が消費できる限界を超えているそうです。
ですから、以前に比べると、なかなか情報が届かなくなり、また届いたとしても、すぐに新しいものに上書きされ、忘却されてしまうようになりました。

こんな現代の生活者を基点に発想した結果、KPIを「行動」に設定する、という考え方が生まれたのです。
なぜなら、受験生が英単語を暗記する際、参考書を見るだけでなく、書き写したり声に出したりするように、単に見聞きするよりも行動が伴ったほうが、印象が強まり強い記憶になるからです。(これは脳神経科学で、『エピソード記憶』と呼ばれているものです。)

広告を見るだけでなく、イベントに参加したり、アプリをダウンロードしたり、SNSに書き込んだりなど、何らか行動させることで、レスポンスを高める。
これが、生活者発想を哲学とする博報堂が考え出した、次世代型統合マーケティングとしてのアクティベーションなのです。

3つのマーケティング効果をもたらす

もう1つの博報堂のフィロソフィーが「パートナー主義」です。
「パートナー主義」とは、「責任あるパートナーとして、ともに語りあい、行動し、
新しい価値を創造すること」を意味します。これはすなわち、クライアントの皆様のビジネス成果にコミットするということです。

博報堂のアクティベーションでは一般的な統合マーケティングにはない、3つの特徴があります。

1つめは数値化できるため、効果を検証しやすいということです。
認知や共感の場合、どうしてもその効果が曖昧になりがちですが、行動(来場者数、応募数、ダウンロード数など)はリアルで明快です。ですから、検証し改善していくことが容易になるのです。

2つめは、インナーが盛り上がったり、バズが拡散するなどの副次効果が生まれやすい、
ということです。
皆様も、イベントの雰囲気を体験した関係者のモチベーションが上がったり、アプリの
ダウンロード数が話題になった・・・などの経験があるのではないでしょうか。

そして3つめの特徴は、結果として、継続性のある取り組みになりやすい、ということです。
効果検証のしやすさとインナーや世の中の盛り上がりがそれを後押しするからです。
継続性のあるマーケティングは、単発のものに比べ、投資効率が良いことは言うまでもありません。

博報堂のアクティベーションとは

一般的な統合マーケティングは「one message→one action→one value」です。
メッセージを1つに統合することで、購買や来店などの行動を1つ創り出し、1つの価値を生み出します。

一方、博報堂のアクティベーションは「one scenario→two actions→three effects」です。
シナリオは“1つ”ですが、生活者は“2度”動きます。来場したり、ダウンロードしたり、
書き込んだり、という比較的敷居の低い1度目の行動の結果、購入や来店などの成果に直結する2度目の行動が生まれるからです。
そしてその結果、先ほど述べたように①数値化しやすい、②副次効果が生まれやすい、③継続性が生まれやすい、という3つの効果がもたらされます。

様々な手法を単に統合するのではなく、連鎖させることで生活者を動かすシナリオを構築する。
生活者を行動させることで、印象を強め、忘却されないようにする。
そして、3つの効果をもたらす。これが博報堂のアクティベーションなのです。

マーケティングは常に進化しています。

バラバラに広告していては、生活者に情報が届かない。だから統合が必要である──。
そんなことがしきりにいわれたのは、数年前でしたが、今では「統合」は当たり前のことになりました。
今ではさまざまな統合マーケティングの形が生まれてきています。
認知や共感を目的にメッセージを統合するマーケティングも1つの方法であり、そのようなアプローチが最適な場合もあります。
ですが、それではすぐに忘れられてしまう、知名度は十分あるのに売れない、キャンペーンの時は売れるけれど長続きしない…。

そんな場合にはアクティベーション発想での統合マーケティングが有効だと思います。

「行動」によって生活者との関係を「継続」させる

冒頭で「アイディアルから、アクチュアルへ」というキーワードをご紹介しました。
これはすなわち生活者を「行動」で考えるということなのです。
「週2回ヨガスクールに通っている22歳のOL」という想像上のターゲットで考えるのではなく、実際の行動から、生活者を把握し、マーケティングするということです。

日本の人口は、これからどんどん減っていきます。ですからブランドのファンになってもらい、リピーターになってもらうことが今後、より一層重要になっていきます。
そのためには、生活者と商品が長期にわたり関係性を持つことが必要になってきます。
1回の行動ではなく、2度、3度と行動を続けてもらうことが重要です。

私たちはこれを『基点化』と呼んでいます。言い換えれば、マーケティングやブランドをプラットフォーム化するということです。

そのためにも、アクティベーション発想での統合マーケティングによって、単発ではなく、継続性のあるものとしていく。そんな取り組みを、ともに進めさせていただきたいと考えています。

講師プロフィール

※掲載時プロフィールです。

才田 智司(さいだ ともし)
博報堂 アクティベーション企画局長 エグゼクティブクリエイティブディレクター

1988年博報堂入社。コピーライターとして、配属。現在の弊社会長である、戸田の下で修業を積む。
1990年代より各種広告制作業務を担当し、アルコール、飲料、食品、自動車、航空、化粧品等、多様なジャンルに携わる。統合マーケティング、統合ソリューションに早くから取り組み、広告、プロモ、PR、イベント、デジタル等々、他領域で業務実績。
2005年クリエイティブディレクター
2008年シニアクリエイティブディレクター
2009年チームリーダー(部署長)
2011年グループマネージャー(局長代理)
2012年Cannes Lions、ADFEST、SPIKES等、国際賞9冠
2013年エグゼクティブクリエイティブディレクター
2014年第一クリエイティブ局長
2016年アクティベーション企画局長

大澤 智規(おおさわ とものり)
統合プラニング局大澤チームリーダー/クリエイティブディレクター

1996年博報堂入社。
SPセクションに配属後、飲料・自動車・通信・化粧品メーカー等のキャンペーンやイベント立案を担当。
その後、CMやPR、Web、店舗開発などアクティベーション領域全体に軸足を拡大し、現在は、アクティベーションプラニングを軸に、統合型の業務を担当。
ポリシーはクライアントの事業戦略からアウトプットまでの一貫したストーリー(Scenario)のクリエイティブと実際に生活者を動かすための”仕掛け”(Contrivance)のクリエイティブの2つを同時に行うこと。
シナリオを実現するために必要なあらゆる仕掛け~CM/Gr/Web/商品開発/イベント/インナー/流通対策/ショップ開発など、あらゆる領域をクリエイティブするスタンスでチームを率いる。

第二弾のセミナーレポートは、
デジタル&リアル基点の「アクティベーション」で、効かせる統合へ。
~「生活者の行動」をシナリオ化する、次世代型統合マーケティング Vol.2

第三弾のセミナーレポートは、
コンテンツ基点の「アクティベーション」で、売れる&売れ続ける統合へ。
~「生活者の行動」をシナリオ化する、次世代型統合マーケティング Vol.3~

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