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TBWA HAKUHODOの社員も多数登壇(アドバタイジングウィークアジア2017 博報堂DYグループセミナー④)

2017.07.18

2017年5月29日~6月1日、第2回となるアドバタイジングウィーク・アジアが東京・六本木ミッドタウンで開催されました。今回も広告、マーケティング、テクノロジーの各分野で活躍する第一人者が世界中から集結。モバイル・マーケティングや人工知能の未来など、刺激的なトピックについて議論を展開しました。

本稿では、TBWA\HAKUHODOの関係者が登壇したセッション「"つくり方"をつくる時代へ - DISRUPTIVE SOCIAL CREATION –」「マス広告の逆襲 ~TVCMオンライン運用がもたらす速度革命~」「人工知能と自動化: クリエイティビティは 友か敵か?」をご紹介します。

"つくり方"をつくる時代へ - DISRUPTIVE SOCIAL CREATION –

栗林和明:TBWA\HAKUHODO Buzz Machine
金清雄太:TBWA\HAKUHODO Digital Strategist

栗林和明

「『膨大な労力と時間をかけてつくったキャンペーンがほとんど話題にならない』『予算が足りず、大がかりな仕掛けは難しい』『もっとデータを活用した精度の高いクリテイティブを生み出したい』『ユーザーのインサイトをもっとしっかり掴みたい』。こんな課題を持っている人はいませんか?」。
栗林による、このような問いかけからセッションは幕を開けました。そして、こうした課題への対応策として「ソーシャルダッシュボードクリエーション」が紹介されました。

栗林はソーシャルダッシュボードクリエーションを「世の中のツールを使って、世の中の情報をリアルタイムに映し出すソーシャルダッシュボードを活用するメソッドです」と語り、さらに活用の5つのツボを解説しました。「イシュー(社会問題)、チェンジ(行動変化)、タイド(風潮)、ディスカバリー(発見)、トレンド(流行)で、中でも社会問題が重要です」とし、その例として紹介したのが「猫バンバン」。事故という言葉の検索から「猫の事故」につながって生まれたものです。寒い季節に、猫が温かい自動車のエンジンルームに入り込み、思わぬ事故に巻き込まれることがあるので、エンジンをかける前にボンネットを「バンバン」とたたいて追い出しましょう、という一種のキャンペーンでした。「通常ならば予算や期間をしっかり決めてアイデアを練りますが、こちらはまず最初、ツイートしただけ。それが話題を集めて拡散した結果を受けて、世の中の反応を見ながらスピーディに実施可能な施策を矢継ぎ早に展開。最終的には新聞やテレビなどにも取り上げられ、大きな効果を生みました」

このメソッドについて、金清は「私たちが属するTBWAネットワークは、このメソッドを体系化してDisruption LIVEと名づけました。これを栗林が解釈し、彼の視点で動かしているのがソーシャルダッシュボードクリエーションなのですが、そこには3つの重要なポイントがあります。ひとつはソーシャルダッシュボードの活用、残る2つはチームの編成と、コミュニケーションプラットフォームの構築です。チームは少数精鋭であることと、プロジェクトに応じて異なったタレントを持つ人で構成することが大切です」と述べています。
こうしたメソッドを活用する背景については「これまでの広告会社の、得意先からの与件を元に仕事をする進め方では、SNSなどを通じてものすごいサイクルで生み出される世の中のトレンドやユーザーのニーズに遅れてしまう可能性がある。」という危機感により生み出された、と述べました。また「企業やブランドは、ユーザーが生み出すカルチャーこそ競合として目を向けるべきであり、私たちは企業がこのマインドを持つために、今日紹介したメソッドを活用している」と語りました。

金清雄太

そして、今後については「ヒントを見つけられるツールを、自分たちでも作ろうと考えています」と栗林は語り、さらにはAIの活用も欠かせないとしました。「多くの企画をAIが出し、その中から私たちがいいものを選ぶ。私たち全員がクリエイターになる時代がやってくるのではないでしょうか」と展望しました。

<プロフィール>

栗林和明
TBWA\HAKUHODO Buzz Machine

デジタルマーケティングを専門とする部門「デジタルアーツネットワーク」に所属するプラナーで、自ら名付けた「バズマシーン」としてソーシャルメディアを中心とするマーケティングのプラニングを担当しています。モニタリングツールを駆使して、年間で3万本を超える動画を分析、あらゆるウェブ動画に汎用的に活用できるナレッジ「バズのツボ」を開発し、その理論を活用することで、数々のバズ動画を創出してきました。同時に、業界メディアでの執筆、カンファレンスイベント登壇、セミナー講師などを通じて独自の知見を積極的に共有しています。1987年に生まれ、2011年に博報堂入社。2014年よりTBWA\HAKUHODO勤務。担当作品はカンヌライオンズ Gold、Spikes Asia Grand Prix、釜山国際広告賞(AD STARS)Grand Prix、BOVAオンライン動画コンテスト Grand Prix、メディア芸術祭審査員特別賞、ACC Gold、広告電通賞最優秀賞などを受賞。Campaign Asia-Pacific’s Young Achiever of the Year 2016、日本広告業協会(JAAA)クリエイター・オブ・ザ・イヤー2016メダリスト。

金清雄太
TBWA\HAKUHODO Digital Strategist

武蔵野美術大学 芸術文化学科卒。卒業後は、オプトにて、Webディレクターとしてクライアントのダイレクトマーケティング向けクリエイティブ開発、PDCAサイクル運用に従事。その後、GREEにて、タイアップ広告開発を専門とするソーシャルアドプランナーを務めた後、2015年、TBWA\HAKUHODOに入社。ダイレクトマーケティングやソーシャル活用など統合的なデジタル施策の企画〜運用の実績を生かし、クリエイティブ、プロモーション立案のプロセスにデータドリブン思考を注入するデジタルストラテジストとして活躍。なかでも、ソーシャルモニタリングを活用した独自の生活者インサイト抽出手法を生み出す手法は、顧客視点の施策アイデアを着想する起点として、多くのクライアント向けに提供されている。データと経験に基づいたロジカルなアプローチにより、企業のデータドリブン化推進に大きく貢献している。

マス広告の逆襲 ~TVCMオンライン運用がもたらす速度革命~

近山知史:TBWA\HAKUHODO シニアクリエイティブディレクター
今西周:日本コカ・コーラ マーケティング本部 IMC コネクションプランニング&メディア統括部長
田中郷資:Group IMD 事業開発本部マネージャー

2017年10月から始まるテレビCMのオンライン搬入。広告搬入の高速化や広告の最適化などが可能になるオンライン搬入が、広告のあり方やクリエイティブなどにどのような変化をもたらすかについて、田中氏の司会のもと、国内外の事例を見ながら、近山と今西氏が展望しました。

オンライン搬入のスタートについて、「今からワクワクしています」と期待を示した両氏。近山は「SNSが普及し、反応スピードが上がっている時代に、オンライン搬入はふさわしい」とし、「日本は後発なので、オンライン搬入の特性を生かした面白い事例をつくって、他の業界関係者がオンライン搬入はいいね、うちもやろうというというようにすることが重要です」と、普及に向けた取り組みの必要性を訴えました。また、広告搬入の高速化を活用して、CMがどう受け止められているか、どのコピーが刺さっているのかといった実験や調査もできるのではと、さまざまな利用方法があるとしました。

リオオリンピックのキャンペーンで、日本人選手の活躍に合わせたメッセージを、テレビCMやサンプリング用の商品を通じて送った今西氏。「ちょうどいいタイミングで、ちょうどいいメッセージを流すことで、生活者とのエンゲージメントを高めることができました」と言い、オンライン搬入でも「広告の最適化で同じことが可能になり、クオリティの高いリーチが実現できるはずです」と、これからのマス広告とクリエイティブの可能性に期待を寄せました。

近山は「革命はスピードとともにスタートする」とし、テレビを基点とした広告、さらには広告全体のあり方が大きく変わると予測します。「生活者にもっと近寄っていくものになるとともに、夢のあるCMに進化してほしいと思っています」と今後を語りました。さらにテレビとオンラインの垣根がなくなり、「従来のクリエイターやプランナーだけでなく、もっといろいろな人がCMづくり携わるようになるだろうし、そうなってほしいですね」と、CMづくりのあり方にも言及しました。

テレビCMのオンライン搬入のスタートによって、「CMは変革するとともにより充実し、より一層の活発化につながって、コミュニケーションの可能性が広がるに違いありません」と、司会の田中氏はセミナーを締めくくりました。

<プロフィール>

近山知史:
TBWA\HAKUHODO シニアクリエイティブディレクター

2003年博報堂に入社。TBWAネットワークの社内留学制度により、2010年にロサンゼルスのTBWA\CHIAT\DAYでコピーライターとして1年間の経験を経て帰国後、TBWA\HAKUHODOに勤務。最近ではオーストラリア観光局「GIGA Selfie」リリカルスクール「RUN and RUN」などを手がけ、同社が、カンヌライオンズ Gold や Spikes Asia Grand Prix、釜山国際広告賞(AD STARS)Grand Prix、Campaign Asia-Pacificの 「Creative Agency of the Year」を受賞することに大きく寄与した。他にも、AKB48のMVおよびPR活動や、ベンチャー企業と協働して車椅子のブランディングを行うなど、広告業界の枠を超えて多方面で活躍。業界内でのセミナー、講演も多く手掛けている。日本広告業協会(JAAA)のクリエイター・オブ・ザ・イヤー2015メダリストに選ばれた他、Campaign Asia-Pacificの「Creative of the Year 2016」も受賞。

人工知能と自動化: クリエイティビティは友か敵か?

シャーロット・マクエレニー:THE DRUM アジア担当編集者
井上裕太:\QUANTUM.Inc CSO, \QUANTUM\GLOBAL Inc. CEO
松坂俊:マッキャンエリクソン クリエイティブ・プランナー
大川陽介:One JAPAN 共同発起人/副代表

「AIや自動化を敵ではなく、味方として語り合いたいと思います」という、モデレーターのマクエレニー氏の挨拶で始まったセッション。「現在の仕事の中で、AIをどのように使っているのでしょうか」という、質問に対して、「弊社の関連会社では自社事業としてサッカーのデータ解析にエージェントシミュレーションを活用しています。またどのプロジェクトでもAIの中長期的な影響や潜在的な活用方法について必ずと言っていいほど議論になります。ですが、具体的な活用例はまだまだ少ないのが現実」と答えた井上。CMのディレクションを行なうAIのクリエイティブディレクターを作った松坂氏も、「広告業界での活用はまだまだで、事例をあまり見かけません」と言い、大川氏もふだんの業務における使用例は少ないと答えていました。

井上は「AIはサッカーに関する大量のデータを解析して、普通の人間には気づくことの出来ない法則などを見つけることができます。例えばコーチや選手が長時間試合のビデオを繰り返し見てやっとつかめるような相手チームのクセなども見抜いてくれるわけです。しかも人件費などを鑑みれば安価に、スピーディーに実現できます。ところが、勝ち負けを予測するとなると、途端に難しくなります。ある選手は前の日にたまたま飲みすぎて体調を崩していて、普段はしないようなミスを連発するかもしれない。何より、AIは過去の教師データが豊富にある事柄にしか対応できません。たとえば、ゴジラが現れたらどうするのがいいか、AIから答えは出てこない。過去に例がないからです」と、現状では用途は限られると指摘します。

モデレーターから、AIのこれからや、他のエージェンシーやクライアントへのアドバイスを求められた松坂氏は、「AIのようなテクノロジーは、知るよりも作ってみることが重要です。作ってみるとわかることが少なくありません」と、実践の重要性を訴えました。大川氏は「AIが分析したものを使って何をするのか、私のようなものづくりの人間だけでは、答えがなかなか見つかりません。しかし、広告会社はそこができます。データの先にあるストーリーを紡いでいけるのです。だから、業界を超えた共創や共育、オープンイノベーションが必要だと思います」としました。井上は「AIは意思がないので、ビジョンを持ってゴールを設定するといったことはできません。AIは、人間にしかできない仕事、人間らしい仕事を考え、これまでの仕事を見直す契機になります」とアドバイス。大川氏も「人がやって楽しいことは、AIにさせたくないですね」と応じていました。

最後に、AIが人間の仕事を奪う可能性について問われた井上は、「AIの普及で、究極的には生活者一人ひとりに、そして特定の状況にカスタマイズされたサービスの提供が可能になります。提供可能なサービスのパターンが爆発的に増える。クリエイティブな人材が活躍する場所はむしろ増えるはずです」と予測。また、松坂氏も、「かつてのデザインは手作業でしたが、今や、イラストレーターやフォトショップなどのソフトを使えないデザイナーはいません。ですから、AIを使わないデザイナーもやがていなくなるはずです」と答え、AIと共働する社会になるはずで、不安は当たらないと展望していました。

<プロフィール>

井上裕太:
\QUANTUM.Inc CSO, \QUANTUM\GLOBAL Inc. CEO

慶應義塾大学卒業後、マッキンゼーで日米欧の顧客への 経営コンサルティングに従事。被災した若者のリーダーシップ 育成支援を行う財団法人の創設・経営を経て、独立。 フィールドマネージメントなどで日米で大企業の 新事業創出支援、スタートアップの経営支援を実施。『WIRED』 日本版の北米特派員も兼任し、Y Combinator のデモデイなどを 取材。また文部科学省のプロジェクト・オフィサーとして 官民協働海外留学支援制度の立ち上げにも参画。 St. Gallen Symposium により Leaders of Tomorrow (Knowledge Pool) に選出。ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS『クリエイティブイノベーション部門』審査委員。 現在は\QUANTUM で Startup Studio 事業の責任者を務め、 大企業及びスタートアップとの共同事業開発プロジェクト、 イノベーション・コンサルティング、コーポレート・アクセラレータープログラムの企画運営を統括。2017年5月に設立された初の海外現地法人、\QUANTUM\GLOBAL Inc.のCEOに就任。

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