2014年5月

 国勢調査の年少人口(0歳~14歳)を「子ども」、生産年齢人口(15歳~64歳)+老年人口(65歳以上)を「大人」として、(大人の数)/(子どもの数)を計算すると「子ども1人当たりの大人の数」が分かります。その推移を示したのが上の図です。

 第1回の国勢調査が行われた1920年(大正8年)には、子ども1人あたりの大人の数は「1.74人」でした。その後も戦前までは2人以下で推移。出生数が落ち着きはじめた1960年代から大人の数が増えはじめ、1970年には子ども1人あたりの大人の数は約3人に、1995年には5人を超え、2014年現在は「6.90人」と7人弱まで増加しています。今後もこの傾向は進み、約50年後の21世紀中ごろ(2061年)には、ついに1人の子どもを取り巻く大人の数が10人を超えると予想されているのです。

 少子化とは、ひとことで言えば子どもの人口が減っていくことですが、言い替えると「子ども1人あたりの大人の数が増えていく」ことでもあります。今回、私がお伝えしたいのは「子ども1人あたりの大人の数」という視点で少子化をとらえて未来を想像してみよう、ということです。

 

「最近の子どもは、妙に大人びているなぁ」と思うことありませんか。

 昔に比べて周囲に大人の数が増えているので、子どもは、子ども同士で過ごすよりも、大人と過ごす時間が増えています。口調や態度や考え方が大人のそれに似てくるのも当然と言えます。

 現に子どもたちだけで過ごせる時間や場所はどんどん減っており、公園や広場に行けば誰かと野球やサッカーができたのもひと昔前のこと。子どもが少ないため、地元などでチームを組まないと数が集まらず、試合もできない。そうなるとそこには監督やコーチとしてお父さん、そのサポートとしてお母さんという大人が加わります。大人がお膳立てし、習いごとのようにスケジュールを組む必要があるのです。こうなってくると、かつてのように放課後、気軽に友達の家に遊びにも行けなくなります。「○○君は今日はサッカーの練習だから」「××ちゃんは週末は塾だから」──子ども同士で一緒に遊ぶ日の調整をするために、スケジュール帳を持つ子も増えているとか、いないとか。

 1人の子どもを取り巻く大人の数が「10人」となり、2ケタ超えると予想されるのは約50年後、2061年。今の33歳が80歳になる時です。その頃には、子どものまわりは大人だらけですから、子ども同士でコミュニケーションをとる時に大人を経由しなければならない状況はますます増えるはずです。

 ですが、子どもは、大人が介在しない形で連絡を取り合いたいものです。ぐるりと囲まれた大人という障壁を超えるために、独自のコミュニケーションを生み出す必要が子どもたちの間に生まれるでしょう。その結果、子ども同士でしか通じない、大人に見られても分からない新しい言葉が生まれているかもしれません。(2014年現在も“JK”など、何となくすでに存在しますが)全人口の1割に満たない小社会の中だけでやりとりされ、取り巻く大人のバリアをすり抜けるための暗号、隠語のようなものです。

 そしてこのように先鋭化した市場を攻略するために、新しいビジネススキームが求められてきます。例えば、子どもの興味や動向などを大人の言葉に翻訳するスキルの価値化や、子どもコミュニケーションに精通した子どもがビジネスパートナーとして大人とプロジェクトチームを組むなど、これまでとは全く性格の異なる市場攻略のアプローチが編み出されることでしょう。

 

◆この連載は、さまざまなデータを独自の視点で分析し「常識の変わり目」を可視化していくコラムです。
「Business Media 誠」にて連載中の博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」を基にしています。

著者プロフィール:博報堂生活総合研究所 主席研究員 吉川昌孝
1965年愛知県生まれ。
1989年博報堂入社。マーケティングプラナーとして得意先企業の市場調査業務、商品開発業務、マーケティング戦略立案業務を担当。
2003年より生活総合研究所客員研究員ならびに博報堂フォーサイトコンサルタントとして得意先企業の未来シナリオ創造ワークショップを担当。
2004年より生活総合研究所。
2009年より現職。
著書に、「~あふれる情報からアイデアを生み出す~『ものさし』のつくり方」(日本実業出版社・2012年)、「Information Communication Technologies and Emerging Business Strategies」(IDEA GROUP INC.・共著・2006年)、「亞州未来図2010~4つのシナリオ」(阪急コミュニケーションズ・共著・2003年)がある。