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博報堂社員のインプット術!
第一回 TBWA HAKUHODO の関谷“アネーロ”拓巳

2019.08.29
#クリエイティブ#トレンド#ミレニアル#広告賞
常にアイデアを生み出し続ける博報堂社員は、普段どんな方法で情報をインプットしているのでしょうか。博報堂社員のユニークな、自分の発想を刺激する方法を紹介していきます。
第1回はTBWA\HAKUHODO の関谷“アネーロ”拓巳。
世界最大級のクリエイティビティの祭典カンヌライオンズの30歳以下の部門、“ヤングカンヌ”でゴールドを獲得し、世界一に輝いた若手プラナーは、どんなモノ、コトから発想のヒントを得ているのでしょうか。

食も広告も、肝になるのは“ストーリーテリング”。

――普段はどんな業務をされていますか?

ウェブやリアルな体験イベントの企画を中心に、老舗企業のリブランディングやSNSの運用まで幅広く担当しています。博報堂にいた時もアクティベーション企画局(現 統合プラニング局)で、TVCM以外の様々なこと、プロモーション全般を手掛けていました。CMなどのメディア枠を使わなくても、ファンや世の中の人がぐっと興味を持ってくれるような、PR力のある企画を心がけています。

――関谷さんが日常的に注目しているモノ・コトは何でしょうか。

衣・食・住のデザインが好きです。もともとデザインには興味があったのと、大学・大学院では建築学科だったこともあり、空間そのもの、あるいは空間での体験というものに興味を持つようになりました。そこから、最近は「食の体験」への興味も広がっていきました。

――建築を学ばれてから、博報堂に入社をしようと思ったのはなぜでしょうか?

空間設計よりも、コンセプトをつくったり、その場所がどんな風に使われたらいいかを考える方が好きで、得意だったんですね。それって、まさに広告会社がやっていることだし、アウトプットの幅も広告業界の方が広くて面白そうだと思ったんです。あと、大学時代はアカペラなど音楽活動をしていたのですが、ライブハウスやストリートライブ、あるいはYoutubeなど、場所に応じてどのような体験を提供すればお客さんが喜んでくれるか?ということを考えていました。エクスペリエンスデザインというブランディングに興味があったんです。

――最近特に興味を持っているのが「食」だと伺っています。
いつも、たくさんの美味しそうな写真をSNSにアップされていますよね(笑)。
「食」って、広告とは一見離れている気もするのですが・・・?

いいお店に行くと、単なる「美味しい」を超えて感動することがあるんです。その理由は、料理を提供する体験全てが素晴らしいからなんです。料理の味だけではなくて、空間デザインも良く、給仕の人が絶妙なタイミングでやってきて、この食材はどこの誰がつくって、こういう調理方法なのでこんな味になります…というエピソードを添えて話してくれたりします。一流の料理店って、味はもちろん素晴らしいですが、どういう順番で、どういう器で出して、どういうエピソードを添えれば、人が感動するのかがすごく練られていると思うんです。つまり綿密に練られたストーリーテリングなのです。そのようなところを自分の仕事にも活かしたいなと。

――「ストーリーテリング」は、最近広告でも鍵となる要素ですよね。
食のおもてなしについてもそのようなことを感じられていますか。

そうですね。広告は、その商品を生活者に向けてどういう形で、ストーリーテリングしていくかということだと思うので、通じるものがあるなと感じています。当たり前かもしれませんが、美術館でもホテルでも音楽フェスでも、全てストーリーテリングが肝心だと言える気がします。

――では、普段プランニングにおいて大事にしていることは何でしょうか。

理想としているのは、ひとつのキャンペーンを、「コース料理」として考えてつくることです。SNSがない時代のオーソドックスな広告だと、ひとつCMができたらそれをローンチして完結、という感じも多かったですが、それは言わばワンプレートランチみたいなものだと思います。今はまず前菜というか、事前にティーザー広告が出て世の中がざわついて、そこから次の企画が生まれて、SNSで何かしらのリアクションがあり、それに対してメインディッシュが出て、さらにリアクションがあり……という風に、一連の情報の流れで考えていくべきだと思っています。

カンヌで学んだのは、“世の中の流れを設計する”こと

――関谷さんは、2017年にヤングスパイクスPR部門ゴールド受賞、ヤングカンヌPR部門では2016年と今年2019年に日本代表として選出され、今年ついにゴールドを受賞。
こうした世界の舞台で戦う機会を何度も経験されて、刺激を受けたことや学んだことはありましたか?

日本の広告会社でクリエイティブ職やプラナー職の若手って、すごく真面目だと思うんです。徹夜をしてでも全力で考え抜く!という姿勢の人が多い。でも、「本当にこれでいいのか?」と推敲に推敲を重ねるうち、始めは良いインサイトに気付いているのに、結果的にそれを見失ってしまうということもある気がします。一方で海外の人って、「何そのアイデア、いいね!それで行こう!」「じゃあビール飲みに行こう!」みたいなノリの人が多いんですよね(笑)。当たり前のことではありますが、楽しい気分で企画し、仕事をするという点は、学ぶべきところだと思いましたね。

それから、ヤングカンヌでPRの審査員の方に言われたのが、「PRはフェーズが大事」ということ。先ほど、理想的なプランニングをコース料理に例えたのと同じように、ローンチして終わりではなくて、例えば、「何か社会課題を発見したら記者に伝え、記者が記事にし、その記事をもとに政治家が法案を作り…という風に、世の中の流れを計算して企画をつくるんだ」、と教えてもらいました。今の広告コミュニケーションは、いざSNSで話題になった後、次はそれに対してどう切り返すか、どうリアクションして次を仕掛けていくかが大事。「世の中の流れ」を如何に設計できるかが問われている気がします。

話題の場所には自ら足を運び、「そこに行きたくなる気持ち」を確かめる

――“人々が動く流れ”を計算するためには、生活者がどういうところに反応し、引っ掛かりを覚えるかを熟知していなければいけませんよね。関谷さんはミーハーと自称してSNS投稿までされていますが、人よりもすごくミーハーであり続けたり、生活者の気持ちや温度感を掴むためにどんなことを意識してやっていますか?

仕事中はTwitter、Facebook、Instagramを常時開いています。Facebookではファッション・アート関連のニュースをチェックしていて、Twitterではバズったコンテンツを投稿する人や、単純につぶやきの内容が面白い人をフォローしています。気になる人が「いいね」を押したものも表示されたりするので、彼らがいま何に興味を持っているかがわかるのも便利ですね。Instagramでは、情報感度が高い友人たちが普段どんな場所に行っているのかなどを見ています。最近は特に、食の投稿をよくしているインフルエンサーが行ったお店をチェックして、すぐに予約を取るなどしています。先日は、ある「うな丼」のお店が上げた調理中の動画がバズっていたので、埼玉の奥地にあるお店まで2時間半くらいかけて行きました。あと、とあるレストランのオーナーのブログがタイムラインで話題になっていたので、早速予約を取ったところです。(笑)

常に、自ら足を運ぶことを大事にしています。スマホやテレビを通じて情報は手に入っても、行かないとわからないことってたくさんあるんです。土日はとにかく、どこかしらの流行りのスポットに出かけています。自分で足を運ぶことで、「確かにこれだったら行きたくなるな、人に伝えたくなるな」という気持ちを生活者目線で確かめたいんです。

――影響を受けている人はいますか?

建築家で言うと隈研吾さんとか安藤忠雄さん。広告の世界では、社内にも尊敬する人はたくさんいますが、佐藤可士和さん。挙げきれないですね。創られているものがすごいだけでなく、メディアなどを通じて自分の言葉を発信することを両立されている方を尊敬しています。広告会社の社員って、黒子に徹しがちで、あまり自分のことは発信しない人が多いですよね。やむを得ない部分もありますが、どんな人間がこの会社にいて、どんな思いで広告をつくっているのか、発信していかないといけないような気もしているんです。情報発信をすることで、クライアントも安心してクリエイターを選ぶことができるようになりますからね。

――そうですね!この連載を、社員の人となりや想いを伝えられる場にできたらと考えています。本日はありがとうございました!

関谷“アネーロ”拓巳
TBWA\HAKUHODO Disruption Lab細田チーム
アクティベーションプラナー、コピーライター

平成元年、栃木県生まれ。東北大学大学院卒業後、2014年博報堂へ入社。
2017年よりTBWA\HAKUHODOへ出向。
2019年、カンヌライオンズ/ヤングライオンズ PRコンペティションでGOLDを受賞。
30歳以下で世界1位のPRプランナーに選ばれる。

受賞歴:2016年ヤングカンヌPR部門日本代表、2017年ヤングスパイクスPR部門日本代表/本選GOLD、2019年ヤングカンヌPR部門日本代表/本選GOLD、2017年販促会議コンペティション 審査員個人賞/協賛企業賞、2018年Metro Ad Creative Award メトロアド賞、2018年Date FM ラジオCMコピーコンテスト 佳作

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