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戦略ブティックという新しいエージェンシーの形
「Paasons Advisory」特集#2 クラウド活用編

2019.07.12
#チームビルディング

非連続な市場創造を目指して、クライアントとワンチームになるためのクラウドプラットフォーム活用

「クラウドプラットフォームの活用 = 業務効率化」のためだけのものなのか?

前回の記事でご紹介させて頂きましたが、私たち「Paasons Advisory」は博報堂社内の戦略ブティックとして、クラウドプラットフォームを活用し、クライアント企業の方々に向けてアジャイルな戦略プランニングを提供することを目指しています。

働き方改革が喧伝されて久しい今の時代、「テクノロジーを活用した効率的なワークスタイル」を目指す動きは珍しいものではありません。数あるテクノロジーの中でもクラウドプラットフォーム、例えばクラウド型オフィススイート(G Suite, Office 365 など) は現代の働き手にとって、日々の業務を前進させるために不可欠なものの一つではないでしょうか。
ステークホルダーとのメールやチャット、予定表の管理と共有、共有ストレージや共同編集といったタスクをパソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなど、デバイスを選ばず、時間的、地理的な制約に捕らわれない形で行うことを可能にしてくれます。

今回はお節介ながら、私たちから皆さんの日々の業務に少しでも役立てられる情報を提供させて頂きたく、「クラウドプラットフォームを使った業務効率化 の tips」としてどんなものがあるか、メンバー内で議論してきました。
その中でクラウドプラットフォームを使い始めたことで、個人での仕事の進め方、チームとしての協働形態、クライアント企業の方との関係性がポジティブに変わっていく、という実感が共有されました。

なぜこの実感を得るに至ったのか。
執筆メンバーの 3 名が 明日から使っていただける tips と合わせて、自らの実体験を元に紐解いていきたいと思います。

共有カレンダーは、”プロジェクトタイムラインを最適化する”

関係者全体で予定を共有し、「日程調整と段取り」に使う時間は最小限に。

私個人の予定管理用に クラウド型のカレンダー使ったことはありましたが自社のチームメンバー、またクライアントの担当者の方も含めた、関係者全体でカレンダーを共有し合う経験は初めてでした。

クラウド型のカレンダーを起点にすると、予定の確認や調整だけでなく業務の進行自体もスムーズになります。
打ち合わせの終盤、次回に向けた段取りの話になった時は自分の PC の画面で関係者全員の予定を表示しながら、
以下のステップを行えば、仕事の振り出しは一気に完了です。
① 全員が参加可能な日程を確認
② 打ち合わせの場所(社内会議室、クライアントのオフィス等)を入力
③ アジェンダ/タスク分担を、カレンダーの概要欄にテキストで記入
④ 関連資料をカレンダーの枠に直接添付
⑤ 関係者のアドレスを入れて、招待メールを発信

なお、移動中や外出先でも同様のタスクをスマートフォンのアプリから実行できます。
例えば、クライアントとの打ち合わせからの帰り際。スマートフォンで参加メンバーの予定を見つつ、その場でF次の段取りを決めてしまうのも非常に効率的なやり方だと学びました。

数週間 ~ 1ヶ月単位のプロジェクトのタイムラインを、その場で組み立てて最適化。

単に次回打ち合わせの設定だけでなく、数週間 ~ 1か月単位での短いサイクルで、プロジェクト管理する時にも活用できます。
ある打ち合わせの席で調査の実施が決まった時に準備 -> 実査 -> 報告のタイムラインを大まかに確認し、関係者のカレンダーを一覧で見ながら、必要なタイミングで打ち合わせを予め設定し、仮押えしてしまいます。
大まかなマイルストーンが決まれば、後になって「打ち合わせ/確認の時間が取れない」という心配もありませんし、進捗に応じた時間の変更、必要がなければ削除するなど柔軟に対応可能です。

また「 4 週間後の xx 日 をレポートタイミングに設定しよう」と話を進めていたけど、カレンダーを見たら担当者の方の海外出張が入ってしまっていた、ということが分かることもあります。
その場合は出張先の時差もカレンダーに表示させ、関係者全員が参加可能な時間帯で設定できます。

クラウド共同編集機能は、”アップデート志向の業務デザインを実現させる”

チームでの資料作成は共有ドライブを使って、よりスムーズかつ低ストレスなタスクに。

資料を作るとき、皆さんはどのようなフローで作業をされていますか?
自分のパソコンで作成して、メールで展開して、更新版をまた送り、と資料作成以外の周辺作業に、イライラしてしまうことがあるかと思います。私たちのチームでは共有ドライブを駆使して、クラウド上で資料を作成しています。普段、このような進め方で資料作成を行っています。

① 共有ドライブ上で資料を作成する
② チームの人に共有ドライブにある資料を、URL のリンクで共有する
③ チームの人は共有ドライブ上で、資料にコメントを入れたり、直接修正を加える(同時編集)
④ 一つの資料を更新していくので、ファイルはずっと一つのまま
⑤ 誰かが修正を間違えてしまった場合は、資料のバージョンはいつでも巻き戻せる

チームの人以外は URL がわからなければアクセスすることはできませんし、特定の人のみに共有をすることもできるのでセキュリティも万全です。

共同編集がもたらす、「アップデート志向」の業務デザイン

資料作成の進め方が変わって、たしかに無駄作業が減って仕事が早くなりました。しかし、それ以上に仕事のカルチャーが変わったと思っています。

まず、新たにチームや案件に加わるときの”垣根”がなくなりました。チームに入っても今までの経緯がわからないから、なかなか思うように動けない。そんなとき、チームでフォルダを作成して、そこに提案物やファイルを整理してあれば、一通り眺めてキャッチアップできます。さらに、案件の共有用に作成したドキュメントやメールには、簡単な経緯と資料タイトル、リンク集があれば、そのリンクからそれぞれのファイルを見ることが可能です。

また、共有ドライブ上でファイルへのリンクを共有してもらえれば、どこまで資料が進んでいて、課題はどこか、フォローする箇所はどこなのか、がすぐにわかります。時間がないときにはチームで手分けして、同時に資料を作成していくこともあり、限られた人的リソースを有効に使うことができます。

共有ドライブの活用で、クライアントとの関係も大きく変わりました。今まで、資料を完璧に仕上げてから一発でご提案する、というのが基本スタイルでした。今は、資料の作成途中でも共有ドライブ上の資料を一緒に見ながら、何度かディスカッションを交わして、進めるスタイルに変えました。
すると、やり直しから最終のご提案までの工数が圧倒的に削減されました。都度、意識を合わせて同じ方向に向かっていく、というのが非常に効率的な進め方だと感じています。

コミュニケーションツールは、”情報共有に対するモチベーションを触発する”

クラウドを活用したコミュニケーションにおいては、メールか電話 の2択から、役割に応じてチャット・ビデオチャット・資料内のコメント機能など、コミュニケーションをとる方法が増えます。

私、安森もチームに入った当初は、コミュニケーションをとる方法が増えたことに戸惑い、うまく使いこなせないことにもどかしさを感じていました。しかし、深く考えすぎずに使い続けることで、クラウドを活用したコミュニケーションならではのメリットを理解することができてきました。

このパートでは、資料作成時のコミュニケーションにフォーカスして、クラウドを活用したコミュニケーションの利点について、安森がお話します。

チャット/ビデオ通話/コメント機能のハイブリット利用が、ミスコミュニケーションを激減

従来のメール・電話のみを用いるコミュニケーションには、ミスコミュニケーションを生みやすい特徴があります。
ビジネスメールにおいては、一般的に定型的な挨拶や丁寧な語調が必要とされます。これにより、メール文全体が長文化する傾向にあり、修正指示の見落としリスクが大きくなります。

また、メールで修正指示をやり取りする場合は、基本的に文章で説明する必要があるため、視覚的にどの部分をどのように修正すべきかがわかりにくいです。電話でやりとりをしたとしても、メールよりは伝えやすくはなりますが、やはり視覚的にどの部分を修正するかまでは把握できません。

結果的に、修正意図が正確に伝わらない / 正確に理解できないことで、ストレスを抱えたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、クラウドを活用したコミュニケーションにはミスコミュニケーションを最小限に抑える様々な機能があります。

まず一つ目に、前章で説明があったように、社内外問わず全員がクラウド上にアップロードされた一つの資料を閲覧・編集しているため、各々が閲覧・編集している資料のバージョンが違っていたということが起こりません。

また、具体的な修正指示は、資料内のコメント・サジェスト機能で行うため、具体的にどの部分をどのように修正すれば良いかがオブジェクトレベル・テキストレベルで視覚的に指定できます。

さらに万全を期したい場合は、ビデオチャットを用いて資料を画面上に投影しながら、丁寧に確認することも可能です。ラフスケッチをその場で作りながら、認識に齟齬がないかをすり合わせることもあります。

やり取りのハードルを下げて、カジュアルな情報共有を増やす

私はクラウドを活用したコミュニケーションがチームに浸透した先には、「単にミスが減る」ことを超えて、チームの業務がより質の高いものになるという素晴らしいメリットがあることを体感しています。

クラウドを活用したコミュニケーションにおいては、
チャットやコメントで、短い文章でのやり取りが、多くの回数行われることが当たり前です。
皆さんが、日々使われている LINE や Messenger 上でのやり取りと同様です。

例えば、クライアントの担当者の方とのチャットグループで以下のようなやり取りが日々行われています。

このように、チャットには「お世話になっております」「上記、お手数をおかけしてしまい、大変恐縮ですが、ご確認のほど、よろしくお願いいたします。」のような、定型文はほとんどありません。
気を遣いすぎないカジュアルなやり取りが頻繁に行われると、業務に関わるすべての人がパーソナルな部分を開示しやすくなり、親近感が醸成されてきます。

その結果として、業務に関する質問はもちろん、直近の業務には直接関係しない参考情報のやり取りまでもが活発になります。私自身も、得意先の方と興味深いデータや知見のやり取りなどを日々チャットベースで行っています。

このように、クラウドを活用したコミュニケーションによって、チーム全体が様々なナレッジを気軽に共有できるオープンな環境に変容していく可能性があると信じています。

「オンタイム」での情報交換は、”チーム全体の思考と議論の熱量を上げる”

「今、考えたこと/思ったこと」を可能な限り、その場ですぐに交換し合える情報環境を整える

製品の開発やマーケティング施策立案を目的に、デプスインタビューやグループインタビューを実施されることがあるかと思います。私たちもそういったご相談を多くいただいております。

ユーザーと接点が持てる非常に貴重な時間であり、実際に行動を観察したり生の声を聴くことで、更に深堀したいポイントが出たり、追加で質問したい内容が出てくることも頻発します。しかしながら実査中にオンタイムで柔軟に対応することが難しいケースも出てきます。
モデレーターへの追加指示を適当なタイミングで行ったり、観察を続けながら全体で深堀したいポイントをすり合わせるために意見交換をするのが難しかったりもします。

私たちはスプレッドシートやドキュメントを、クライアントの皆さんで共同で更新する議事録メモや、インタビュアーとも共有した追加質問用メモとして活用しています。

各々がインタビューを見ながら考えたこと、感じたことをメモに起こしていくことで、その場にいる全員の視点と思考を瞬時に共有できます。そのため例えば、追加したい設問が重複することが避けられ、モデレーターへの指示もシンプルになり、インタビューの時間を有効に活用できます。
また実査直後の認識すり合わせの議論を短縮し、その代わりにレポートの大まかな方向性や調査のサマリーまとめを一緒に作る時間に集中させることで、当日の短い時間で完了することも可能です。

その場での思考/直感を大事にすると、全体の議論の熱量が高まっていく

読んでいただいている方の中には「ここまでオンタイムにこだわって、急ぐ必要があるのか?」と疑問に思われた方もいるかと思います。私自身も最初はまさに同じように感じていました。

私たちエージェンシー以上に、クライアントの担当者の皆さんは複数の案件を同時並行的にこなしていく、非常に忙しない環境にいらっしゃるかと思います。
そのため、調査の現場に来ていただけても同時に他のタスクを進めていく必要に迫られている場合もあるかと思います。
その状況下では、その瞬間に考えたこと/思いついたことを忘れるまえに言語化して残したり、他のメンバーの視点も同時に確認することで「この場に集中する」というスイッチを常にオンにしておく仕組みとして、オンタイムでの情報交換が機能するのです。
「後で時間が取れた時にまとめよう」と考えていたけど、結局タスクがあふれて時間が取れずに、視点や発見を無駄にしてしまうことも避けられます。

また同時に、他人の思考や考え方もドキュメントの中で共有されることで、それに触発されて更に違う視点で考えるようになることも大きなメリットです。ある種のディスカッション/ブレインストーミングがデジタル上で、できてしまうことでチーム全体の思考と議論の熱量が高まり、それに呼応してアウトプットの質も上がっていきます。

おわりに

ここまでご紹介した仕事の進め方は、最初からルール化されていたわけではありません。
私たちも最初から全てを意図していたわけではなく、「使っていく中で結果的にこうなった」というのが正直な心象です。

その立場から、とにかく「試しに使ってみる、思い切ってやってみる」ことが重要だと思っています。
1人で始めるのが難しい時は、ご自身の周りの最小限のチームでトライしてみることをお勧めします。
新たな使い方や運用方法を編み出したり、場合によっては問題点を防ぐための簡単な原則・ルールを設定する等、ご自身のチームにあった活用方法を「走りながら」考えて実行していくことが、結果的に活用の近道になるはずです。

そういった試行錯誤を通じて確立されたクラウドプラットフォームを活用したアジャイル型のワークスタイルにより、戦略立案から実行・検証までのスピードと精度が向上し、「非連続的な市場創造」を実現するためのベースになっていくと考えています。

次回のコラムでは外資系のクライアントの皆さまとの協業についてチームメンバーからご紹介させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

由利 啓祐
博報堂 ストラテジックプラナー

2014 年博報堂入社。営業職として IT 企業のマス広告とデジタルの統合コミュニケーションを担当した後、2016 年からストラテジックプラニング職、2018 年から Paasons に在籍。入社以来、IT 企業を中心に担当しソフトウェアやハードウェア、ブランドイニシアティブまで、コミュニケーション全般の戦略立案に従事。

柴田 慎平
博報堂 ストラテジックプラナー

2015年博報堂入社。初任配属で博報堂DYメディアパートナーズに出向し、ダイレクトマーケティング/メディアプラニングに従事。​オンラインサービスやアプリ事業を行うクライアントに対して、デジタルとマスの統合プラニングを行う。また媒体社とのEC事業開発を行い、レベニューシェアモデルの事業を展開。​2018年 博報堂に戻り、外資系クライアント中心に戦略立案​や、調査企画などのマーケティング業務全般に従事。

安森 啓
博報堂 リサーチャー

2016年博報堂入社。通信・製造・流通業界における広告コミュニケーション戦略立案に従事した後、2018年から Paasons に在籍。以降、クラウド・フィンテック・ゲームアプリなどのIT 業界のクライアントが抱える課題に対して、ユーザーインサイト発掘・マーケティング戦略立案・UI / UX 開発など、広告に限らない幅広い領域での支援を行っている。

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