「働く女性が“生きやすい”社会をつくる」ことをビジョンとして活動する博報堂キャリジョ研が、人々の多様な生き方や働き方を支えている方々とお話をさせていただく対談企画です。今回は、“人々を社会の固定観念から解放し、エンパワーメントする”をコンセプトとして注目を浴びる株式会社BLASTのCEO石井リナさんと対談しました。前編はこちらから。

企業としてエンパワーメントに取り組んでいくことについて

長谷川 広告会社のなかで働く女性のエンパワーに取り組むキャリジョ研と、エンパワーメントメディア「BLAST」を運営されている石井さんとの対談ということで、ここからビジネスの話をしたいなと思います。
近年は、企業のマーケティングを考えていくなかでも、ダイバーシティ、女性のエンパワーメントといった言葉が飛び交うようになってきています。しかし、商業主義的に活用されているように見えてしまったり、真摯に取り組んでいる活動があまり目立たないものになってしまっていたり、なかなかうまく取り入れられないという壁もあります。企業が人々をエンパワーしていく、ということについてどのように考えられていますか?

石井 そういう点でこそ、キャリジョ研のような団体が活躍できるんじゃないでしょうか?「ダイバーシティコンサルタント」のような形で、チームに1人入れるとか。近年のダイバーシティやフェミニズムに関する広告などにおけるトラブルは、問題を本質的に理解できていないということが原因になっているものもあると思っています。アドバイザリーみたいな立場の人が1人でもいれば企画段階で変わっていくのかなと思っていて。

松井 なるほど、キャリジョ研がそのような存在になれるようにがんばらないといけないですね。今まさに、そうしたアドバイスができるような組織となっていけるよう、エンパワーメント文脈の広告や取り組みについて分析してみようと話していたところです。

博報堂キャリジョ研 松井 博代

長谷川 私たち自身も一生活者として、電車内の広告をみていたり、SNSを見ているなかで、発信されているメッセージに少し違和感を覚える瞬間があったりする。その違和感をちゃんと分析し、言語化していかないといけないねと話し合っていました。

松井 マーケティングだけでなく、キャリジョ研が今後やっていこうとしている中に、学生へのキャリア教育があります。キャリジョのターゲットは働く女性としているので、20代以降の方だったのですが、もっと早く、生き方や働き方の多様性に触れる機会をつくってあげられるといいのではないかと考え、活動を始めようとしています。

石井 いいですね。『BLAST』の取材で、STEM領域(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリングなどの領域)の先生に取材をしたことがあったのですが、男女不平等であればあるほど、STEMキャリアを選ぶ女性が増えるというデータがあるそうなんです。それは、経済的な自由を求めているからだとされているのですが、ジェンダー・ギャップが大きい日本では、STEMキャリアを選ぶ女性は少ないんですよ。なぜ、そこに矛盾が起きるのかというのを聞いたところ、日本はレディスデーや女性専用車両といった表層的な女性を優遇する仕組みがあることで、キャリアを選ぶ時点まで、ジェンダー・ギャップに気づかず、社会人になってはじめて、男性上司の多さや、育休のとりづらさとか、そういう不平等性にやっと気づくみたいなところがあるようです。学生のうちに考える機会を与えるような働きかけはすごくいいなと思いますね。

BLAST CEO 石井 リナさん

あるイベントに出席した際、男性から「日本は、全然男女不平等ではないと思う」という話をされました。「女の人の方がいいなと思うことがたくさんある」と言われて。おそらく男性でそう思っている方もいるし、女性でも沢山いるのではないかということを、改めて認識しました。でも、「政界に女性は何人いると思いますか」「会社の役員はほとんど男性ですよね」といった、「意思決定できる場所に男性しかいないのっておかしくないですか」という問いかけをしました。それが当たり前の光景すぎて疑っていない人も結構多いのだなというのは感じますね。

長谷川 女性を何人は管理職にしましょうといった施策って、男性にとっては女性に特別なチャンスがある感覚、優先されていると感じる方もいるような気がしているのですが、そのような形をとることにはどう感じられていますか?

博報堂キャリジョ研 長谷川 佑季

石井 「アファーマティブ・アクション(※)」(※ポジティブアクションともいい、性別や人種などにおいて、社会的に差別されている人たちを救済するための措置)だと思っていて。今までの差別されてきた歴史とか、現在の体制を鑑みて、そこを平等なレベルまで持っていくためには必要な措置なのだと思います。なので、それをやらないと、ずっと男性に占有されていく業界が多いので、そのような措置が必要かなとは思いますね。健全な業界を沢山つくっていかなければいけないと思います。

『ハフィントンポスト』の記事ですごく腹落ちしたのが、女性がマイノリティである場合に、「私は女性だから登用されているのではなくて、実力でちゃんと使われている」ということを示したいから、“女性で~”と呼ばれることを嫌がり、女性の中で溝が出来てしまうという内容です。「女性起業家」というラベリングがあったりしますが、その括りで出て行くことを嫌がる人も多いんです。私自身も、そう表現されてしまうことについて致し方ないと思っています。ただ、次の世代のことを考えて、ひとつのロールモデルとして出て行くべきだと思うんです。

松井 働く女性たちを意味して造った「キャリジョ」という言葉もいずれ死語になるような時代が来るといいなということを書籍に書いたのですが、まだ、言わないといけない時代なんじゃないかなと思いますね。

一人ひとりができること。

長谷川 ここまで、企業として人々をエンパワーできることについて話したと思うのですが、キャリジョ研メンバーも石井さんも、一人の女性としての私たちもあると思っていて、お互いにエンパワーし合っていくために、今を生きる働く人一人ひとりが心がけていけること、できることみたいなことについて考えてみたいと思います。

岡村 キャリジョ研メンバーは、色々な意見が出ること、多様な考え方があるということを面白いと感じる人が集まっているのですが、これを働く上だけでなく、普段の生活でもその姿勢を大事にできるといいのかなと感じています。自分と意見が違うときに、「自分と違う」と拒否をするのではなくて、「But why」という「違うけど、何で違うんだろう、面白いな」という感覚を持てたらいいなと思っています。

博報堂キャリジョ研 岡村 実玲

石井 色々なタイプの人がいると思うんです。デモに行くような積極的なコミュニティもありますし、そうではないタイプの人もいます。自分に合ったやり方でできることでいいかなと思っていて。静かにSNSで情報を取得するのでも良いと思うんです。でも、そういう人が、何か違和感を覚えるような現場に立ち合わせた時に、自分なりの意見を言うことができるようになったらいいですよね。

長谷川 そうですね。日常のなかで自然にできることからですね。日本の女性一人ひとりが、そうした自身を取り巻く環境や多様性のあり方についてまずは知り、そして自分なりに考えるきっかけ・場作りを今後もお互いにしていきたいですね。本日はありがとうございました。