こんにちは。ヒット習慣メーカーズの鈴木です。

突然ですが、実は今年初めからカナダのトロントにあるグループ会社に中期交換研修で来ております。今の時期のトロントは酷寒。先週は気温が-20度になり、冷たい風が吹くと体感温度は-30度にまで下がります。今日は気温が0度ですが、滞在1ヶ月を迎え、0度でも「今日はすごく暖かい!」と思えるようになってきました。
ということで、今回は通常のヒット習慣予報とは少し趣を変え、滞在1ヶ月とまだ短いながら鈴木が気になった、カナダ版のヒット習慣をお届けしたいと思います!

今回のテーマは「NOT BEST BUT BETTER」トレンド。
カナダからのコラムということで、60回目にして初の横文字タイトルです。「NOT BEST BUT BETTER」トレンドは、主に自分の健康や食生活に関して、「ベスト」な選択をし続けることは難しくても、「ベター」な選択であれば無理せずに習慣として続けられるという現象です。

まず、ものすごい偏見ですが、私は勝手に欧米人といえば朝にピザ。昼にピザ。そして夜にもピザ。さらにそれを甘い炭酸飲料で流し込むため、体型も日本人と比べると相当ふくよかという印象でした(ド偏見です)。したがって、私も郷にいれば郷に従え。今回の滞在では好きなだけ食べて太って日本に帰国しようと企んでいました。

ところがそんな勝手な印象はトロントに到着してから次々に覆されます。トロントはいたる場所にジムがあり、その数は感覚的には日本のコンビニクラス!街を歩いていても大手ジムのロゴが入ったバッグを持っている人や、週末はヨガマットを丸めて持ち運んでいる女性をよく見かけます。今回お世話になっているオフィスでも会社の近くのジムと契約をしていて、週2回ほど従業員がジムに通うプログラムが組まれていました。このように、非常に多くの人が体を動かす習慣を身につけている印象です。

さらに驚いたのは食事です。今回お世話になっている会社の同僚達が、日本から来た私を歓迎しようと会社の近くのイタリア料理店にランチで連れて行ってくれたところ、私が美味しそうなチーズたっぷりのいかにもカロリーが高そうなパスタを頼む傍、ある同僚(男性)は、「冬休み中色々食べ過ぎたし、ちょっと炭水化物は控えたいからサラダを頼むわ」と言ってサラダを頼んでいました。さらにもう一人の同僚は決して大きくないピザを少し残していました。他にも、こちらの会社は皆さん時間を効率的に使おうと基本的にはお昼をオフィスで食べます。社食がない中、何を食べているのか見てみると、野菜を持参してサラダにしていたり、手作りのいかにも健康的なものを食べていました。

なんだか気づくとよっぽど自分の方が体に悪いものを食べていて、運動もしていないような気さえしてきます。。。

ただ、この傾向はあくまでも自分の周りの同僚の話だけなのかなとも思いました。しかし、この健康志向はどうやら社会的にも広がっているようです。そのことを意識したのはとある会議で「最近のカナダ人の特徴」を話し合っていた時のこと。「最近は、無理をしすぎるのは嫌だけど、少しだけ妥協することで健康になりたいと思う人が増えているよね」という話が出てきて、多くの人が賛同していました。

具体的な例として挙げられていたのは、添加物を一切排除することを宣言したソーセージ等を作っている精肉会社。炭水化物、砂糖、甘味料を排除したウォッカのカクテル。おいしいけれど体にも気を遣ったお菓子を定期的に届けてくれるサブスクリプションサービス等。どの商品も、「肉は食べたい!お酒は飲みたい!お菓子も食べたい!でも、どうせ食べるなら少しでも体に良いものを選びたい」という気持ちに応えています。

このように、決して無理はしすぎないけど、少しだけ体に良いことをしたいというのが「NOT BEST BUT BETTER」トレンドなのです。この傾向を裏付けるようなデータも見えてきました。日本でも数年前から注目されている、小麦粉に含まれるタンパク質の一種、グルテンをカットする食事「Gluten free(グルテンフリー)」と、炭水化物の摂取比率や摂取量を制限する「Low carb(低炭水化物)」を比較してみると、「Gluten free」は近年検索が落ちている一方、「Low carb」は上昇傾向でした。

  • グルテンフリーはあくまでも小麦たんぱくを摂取しないことが主眼で、元々はセリアック病や小麦アレルギーを軽減するための食事療法なため低炭水化物とは本来的には意味が異なりますが、ここは「何かを全てカットする食事法(Gluten free)」と、「全てではなく一部をカットする食事法(Low Carb)」という意味合いで参考として見ていければと思います。

「Gluten free」過去5年間の検索推移(カナダ)

「Low carb」過去5年間の検索推移(カナダ)

出典:Googleトレンド

このように、「フリー」や「オフ」等ストイックに全てを断つのではなく、少しだけ減らす「レス」や「ロー」の方が近年では勢いがあることが伺えます。

さて、ここまでは日本でもありそうな現象ですが、おもしろいのはスーパーに行くと通常の商品と、少し健康や原材料に気をつかっている商品の売り場が分かれていることです。下の画像をご覧ください。

これはカナダ大手スーパー内の売り場コーナーの看板です。よく見ると、1番の売り場にも3番の売り場にも「ジュース」が置いてあります。1番の売り場には低カロリーや100%果汁のジュース等が置いてあり、3番の売り場には炭酸飲料等が置いてありました。どうやらクリーム色の看板が健康や原材料に気をつかった商品の売り場。黒色がそれ以外の売り場なようです(ちなみに売り場の数は黒色の方が多いです)。同じジュースや食べ物なのに売り場が離れているのは少しややこしい気もしますが、こちらの人はこだわりのあるものはクリーム色の売り場から。それ以外は黒色の売り場からと、ここでもまたどちらかに偏らず、無理なく両方から選択している姿が見て取れました。

今回の「NOT BEST BUT BETTER」は主に食べ物中心でしたが、この考え方を拡大解釈することで、様々なビジネスチャンスが生まれるのではないかと思いました。

◎「NOT BEST BUT BETTER」のビジネスチャンスの例
■毎日続けられる、15分限定ジムクラスの開設。
■毎日5分のリスニング勉強ができる語学アプリサービス。
■長時間は難しくても、週30分の施術が受けられるサブスク型のマッサージ店。
など。

ということで、まさか海外で自分の食生活を見つめ直すことになるとは思いませんでしたが、あと2ヶ月間健康的な生活を心がけていきたいと思います。

鈴木 康司(すずき・こうじ)
統合プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2007年 博報堂に入社。
ヒット商品やヒット習慣には飛びつかずにはいられない、ドミーハー。好きが高じて、ヒット商品やヒット習慣を生みだせると良いなと思い日々奮闘中。休日は家でアイドルのDVDを見るのが好き(主にジャニーズ)。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。