深谷 信介
スマート×都市デザイン研究所長 / 博報堂ブランドデザイン副代表 / 博報堂ソーシャルデザイン副代表

いつもより大きめのスーツケースに
たくさんの荷物を詰め、ドライビングシューズを履いてみた
いつもよりちょっと気を引き締めて、
人生半世紀、はじめての地に向かう

<写真1|大きめのスーツケース+ドライビングシューズでGO>

いつもの空港なのに
ちょっと空気感が違うのは
ひとびとのウキウキ度合いによるんだろう
場はひとが創る
いつもながら趣があって面白い

<写真2|もうひとつの羽田空港>

どこまでもつながる世の中
山奥をトコトコッと移動中なのに
電話もメールも、そして会議まで普通にできてしまう今

それなら、って感じで空の上から初web会議を試みる
ゴーっという風切り音とエンジン音が絶え間なく響きつづく
それが空の移動。自席とお手洗いくらいという自身のスペースでの居住環境は、映画・ゲーム・美味しいお食事と、圧倒的にエンターテインメント性がアップしている
そしてついにネット環境まで! が本日はなぜかなかなかWi-Fiが繋がらない
CAさんのご好意でスペースをお借りし、
スイーツ&ドリンクをいただきながら
小一時間ほど格闘したが、時間切れ終了

バックヤードという新たな場が
乗客の方々のお声がけもあり、不思議に楽しい空間になっていた
場はやっぱりひとが創る
気持ち良く自分の席に戻ったすぐさま
深く深く長い長い眠りの場に

「おまえ、いったい何をやってんのか? いまだに全然わからないよ」
「そうだよな〜、働いてるような働いてないような、俺もよく分からない」
「はははっ」

迎えにきてくれたこの地で働く同級生とこうやってお茶してても、
遊びっていえば遊びだし、しごとモードになればしごとだし、
オンもオフもない、いつもシームレス。
それが生活者発想(都合いい)。
現場でくらしを感じたい、考えていたい、と常々思う

日本の田舎をトコトコッしていたら、
世界の中心のまちってどうなんだろうか?
とふと思い降り立ったのが、いつもより東に行った「こめのくに」
昔ニューアムステルダムと呼ばれたまち、ニューヨーク。
なぜか初上陸のこの地にふわっと誘われた

<写真3|郊外の素敵な駅前>

「マンハッタンからちょっと郊外のこの辺に、割と住むんだよね」
お世辞にも最新とは言えない券売システムを通過し、ゆったり座って鉄道で30分ほど。帰宅通勤時間帯にもかかわらず、ちょうど乗客が十分座れるくらいの混み具合。途中車掌さんがチケットチェックにくる、こののどかさは終ぞ日本の地域にもみかけなくなってしまった光景だなあ〜なんて思って窓の外を眺めると、広々とした自然豊かなランドスケープ。そう海外はアナウンスがない、どこで乗ってどこで降りるか、みな乗客ファースト、日本のローカル線のよう。「次は◯◯駅に到着します/◯◯線・◯◯線はお乗り換えです/優先席に限らず席をお譲りください/混み合いますのでドア付近に留まらず、車内奥にお詰めください/ご協力お願いいたします/・・・」常にアナウンスが流れ急かされているような感もある日本の電車とは対照的、通勤にもゆったり感が、ストレスフリーな居心地、いや移動心地。
緑に囲まれた住宅地が、拓けていてアナウンスもなくすーっと駅に到着した。

「クルマないと不便なんだよね〜」といいつつ、徒歩でもいろいろなところにアクセスできるようだ。
ドキドキワクワクを胸に、って年齢でもないわたしに、柔らかい灯がボッとついた気がした。ああ、こういうところで暮らしているからこそ、世界中と戦えるんだなあ
モノコトが鬼速ですすんでいるはずなのに、あらゆるものがゆったりしてみえるのは、そもそもカラダが大きいからなのか?土地が広大だからか?それとも他に何かあるのか?

「マンハッタンの移動は、いま配車アプリを使うのが常識かな。アプリダウンロードして、そうこうしてこうやって。簡単でしょ。いまはA社よりB社の方が評判いいかな。あっイエローキャブもけっこう便利なんだけどね、その場で捕まえるので待たなくていいから。」
若い頃からダメダメのわたしを、いつもやさしく丁寧に面倒みてくれる彼は、いまも変わらずだ。あれから◯十年(きみまろ風)、わたしの手の届かないお偉いさんになっているのに、本当にありがたい限り。

教えるだけではなんだから・・ということで、実地訓練も兼ねて、教わった交通機関を使って、マンハッタンまで出向いて夕食を。ということに。
さっそく使ってみると、スマホのインタラクションも超わかりやすく、英語がからっきし苦手な私でも「ひとりでできたっ!」状態。待ち時間や待ち合わせ場所、クルマの車種やナンバー、ドライバー情報などがススっと確認できて、待ち合わせ場所に指定したまちかどに立っていること数分。それらしきクルマが現れ、まるで友人のクルマに乗るようにススっと乗って、すぐ発進。到着時間のお知らせもついていて刻々と時を刻みながら、目的地までスーッと到着。決済はすでに事前登録されているので、着いたら降りるだけ。まさしくスマートフォンでスマート移動・スマート決済。さっきまで乗っていた列車の超アナログさとのギャップが激しすぎて、とても面白い。

<写真4−1〜6|移動シリーズ>

まちなかを歩けば、なんかポスト(標識)に座り込むひとが・・・なんだろうと思ったらスマホから充電ケーブルがポストに刺さってる。充電スポットだ、充電しながらネットサーフィング。なんてフリー、なWi-Fi環境なんだろっ。

<写真5|まちなか充電>

忙しい彼の計らいでニューヨークくらしプチ体験をさせてもらったところ、急遽もう一人の同級生にも会えることに。グローバルな同級生たちとローカルな自分、縁は奇縁だ。

人生の半分くらいを機内で過ごしてるんじゃないか説があるくらい世界を飛び回るこの同級生とは、義兄弟みたいなモノ。ここでは書けないようなくだらない話は、お互い大得意。
「日本の地域って、どんな感じなんだ?」そんな彼が、珍しくまともな話をふっかけてきた。しごとのことは特に今まで話したことはないが、どうもこの連載をみてくれているらしい。
「う〜ん、なんとかしないと日本の活路は見いだせないと思う」
真面目に応える自分。照れ臭さが隠せない会話だったのが、段々と熱量を帯びてくる。一次産品を扱う彼と、一次産業由来で地域活性に磨きをかけたい自分とドンドン話がシンクロしてくる。

「おまえ、ちゃんとしごとしてんだなっ」
笑ってしまうくらい落ちこぼれだった自分を、いろんなひとが手を差し伸べてくれる・救ってくれる。見よう見まねで、現場で何かすることしかできない不器用な自分が、ほんとに世界を動かしている彼から、こんなことを言われるとは・・

「おまえは世界中をなんとかしてくれ。おまえが帰ってくるまで、俺が日本を守っとく。」
お酒も入り(わたしは下戸ですが)かなりの大風呂敷を広げた会話のあげく、白々と開けてきたニューヨークのとある街角で別れ、そこからホテルまで気分良く歩いて帰ることにした。

京都のように碁盤の目のように街区が配置されている、ニューヨーク・マンハッタン島。都市計画の世界でも、もちろん先進的・野心的なアクションを続けていてしかも新しい成果を生み続けている素晴らしいまちだ。

<写真6|まちかど・目印(日中)>

方向音痴な自分でも、◯stと◯aveと書かれた街かどサインさえ見れば、どこをどう歩っているのか?頭の中にクリアに可視化できる。ふらふら寄り道しても大丈夫、迷わず愉しくかつしっかりと歩いて帰れるこの街区設計は、ユニバーサルデザインの礎そのものだ。しかもこんな真夜中(というか明け方近く)、女性もちらほら歩いている。
安全はどうも日本の特権ではなくなりつつあるのかもしれない。

<写真7|まちなか・夜景2>

ひとはどこまでも移動する生き物
移動こそ、人類の歴史である
とある教授から聴いたことを思い出す
そんな愉しみを、どんどん拡張していきたい

あしたはどんな手段で、このまちを巡ろうかな?
いろんな想いを巡らせながら、
移動のパターンを多様に備え拡張してきた人間の素晴らしさを感じつつ、
すっかり朝を迎えたホテルはやけに笑顔だった

<写真8|まちなか・夜明けの駅>

次回は、こめのくに(後編) です。

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