政治、行政、大手企業などのスピーチライターを務め、「言葉の潜在的なちから」をテーマに子どもからビジネスマンまで読める著作多数。
明治大学をはじめ様々な教育機関で熱弁をふるう博報堂スピーチライターひきたよしあきが、企業経営における言葉のちからを綴る。

健康診断の結果、尿酸値や血糖値が
高いと知らされます。
体脂肪も多い。
「もっと運動するように」と勧告されます。

大抵の場合は、生活習慣のなせるわざ。
自分の行いが、体に招いた結果です。

同じようなことが、企業をとりまく
言葉にもあるのではないでしょうか。

「体に悪い言葉」

使えば使うほど、企業の体力を奪うのに、
伝染病のように組織に蔓延する言葉です。

例えば、「それやって、儲かるの?」

無責任上司の十八番です。
誰だって、会社に損をさせたくない。
よかれと思って提案している。
しかし、どれほどの利益が上がるかまでは
見通せない。それを見通せるのは、
提案者よりも経験を積んだ上司のはずです。

その上司が、こうした人ごとのような
言葉を吐く。
明らかに、体に悪い言葉です。
その会社から、未知なものに挑戦する力を
奪います。

「おれ、聞いてないぞ」

私よりも早く誰かに報告するとは何事だ!
私をなんと心得ておるのか!
という心理をふんだんに含んだ言葉。
征服欲と嫉妬心が見え隠れします。
こういう言葉が蔓延すると、企業は
報告の順番ばかりを考えるようになります。

「そこをなんとか」

ルールはある。でも、今回は特別な事態だから、
私のためにルールを破ってくれませんか、という
お願い。ムシがいいですね。これが横行すれば
ルールがなくなります。そこをなんとかお願い
できる人と受ける人だけが、会社を回す結果に
なります。

「私的には、ちょっと・・・」

断る場合によく使われる表現です。
話の中に「ちょっと」「少し」という言葉が
多く挟む人は、その案件に自信がありません。
この場合は、「私的」にはですから、
個人的な理由で断りたい意思を示しています。
甘えですね。断るならばしっかし理由を述べる
べきでしょう。

「もし、そこに誤解があったなら」

あきらかに自分に非があり、謝らなくては
ならない。しかし、素直に謝るのもの癪だし、
これまで言ってきたこととの間に齟齬が生じる。
そこで、「私が本来伝えたい意味と違った意味を
あなたが受けとったならば」と「誤解」を
前に押し出して謝罪したふりをする。
保身は、大抵体に悪い言葉です。

いくらでも出てきます。

スピーチライターになるために
アトランダムに録音された会議を
文章に起こすという勉強法があります。

内容ではなく、様々な人の「語り口」を
書けるようになるためです。

この作業をやっていると、知らず知らずに
吐いている「体に悪い言葉」が多いことに
唖然とします。
多くの場合は、無意識で使っている。
指摘すると、

「おれ、そんなこと言ってないよ」

と必ず否定されます。

しかし、こうした「体に悪い言葉」を
吐き続けていると、企業が体調を
崩し始めます。業績はもちろん、
中で働く人のモチベーションや向上心をも
奪います。

もし企業に「健康診断」があったなら、

「それやって、儲かるの?」を生活習慣に
してしまった結果、社員に活動不足が起き、
企業の体脂肪が上がっている。

なんて結果が出るのかもしれません。

言葉は、人ばかりでなく、
企業の体調にも影響します。
体調のコトダマによって、企業は
光を放ったり失ったり、するのです。

言葉の健康診断だと思って、
普段あなたがでている会議を
こっそり録音して研究してみてください。

言葉の生活習慣病を見直してください。

<経営のコトダマ>
第1回 あなたの会社が終わるとき
第2回 徹底的に戦いを省け
第3回 サービスとホスピタリティ
第4回 文学は、実学。
第5回 未来を五感で味わいつくせ