去る9月6日(木)、東京・青海にグランドオープンした「TOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)」は、東京都と選定事業者5社の協働で実現したまったく新しいかたちの体験型英語学習施設です。5社コンソーシアムの一角を担う博報堂のテーマビジネス局の渡邉由美子と、TGGの代表取締役社長を務める織田信雄氏に、同プロジェクト誕生の背景や、見据えている未来像などについて話をうかがいました。(ニュースリリースはこちら

英語を使う楽しさ、英語に対する「成功体験」を味わえる場

織田
「TOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)」誕生のもとになったのは、東京都教育委員会が発表した、“英語村”構想です。官民連携で学校とは異なる施設をつくり、OECD加盟国の中でも最下位とされている日本の子どもたちの英語力を向上させようという構想で、平成28年に事業方針が発表されると同時に事業者募集も公表されました。その結果、最優秀事業者として選定されたのが、(株)学研HD、(株)市進HD、(株)エデューレエルシーエー、(一財)英語教育協議会、そして博報堂の5社コンソーシアムです。これら5社で連携をとりながら、約2年をかけて今回の体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY(TGG)」オープンへとたどり着きました。
TGGが目指すのは、英語をコミュニケーション・ツールとしてとらえ、利用者に英語で「伝わる」「わかる」「協働する」感動を提供するということ。日本にありながらまるで外国に来たかのような環境下で、TGGのイングリッシュ・スピーカーが徹底して英語でのコミュニケーションを促すことで、英語を使う楽しさ、英語に対する「成功体験」を味わっていただき、さらなる学習意欲を掻き立てます。つまりここは英語“を”学ぶ場ではなく、英語“で”何かをする場所だということ。英語としての正確性とか、上手下手ということよりも、ちゃんと通じることこそが大事だというコンセプトに基づいています。

渡邉
5社コンソーシアムに名を連ねるのは、出版だったり学習塾だったりと、何かしら教育に関係する事業体がほとんどなので、博報堂の名が入ること自体意外に感じられるかもしれません。私自身は、当時博報堂のテーマビジネス局に所属し、東京都を担当する中で本プロジェクトについて知り、素晴らしい取り組みに是非博報堂も関わっていきたい、という思いがありました。ただ、なんとか参画できないだろうかと思案はしつつも、10年間という長期に及ぶ事業構想で、かつ規模も大きいことから、当社が主体となって取り組むにはハードルが高かった。そこへ学研を中心とするコンソーシアムができつつあるという話を小耳にはさみまして(笑)。すぐに担当の方とつながることができ、ご一緒させていただけないかと申し出ることになりました。
その後は、コンペの際の準備に始まり、TGG立ち上げ時の宣伝やPRはもちろん、協力いただける協賛企業、企業色の異なる5社全体をまとめることを意識して動いているという現状です。

徹底した英語によるコミュニケーションで、殻を破って世界に触れる

織田
TGGには、英語を活用する「アトラクション・エリア」と、英語で学ぶ「アクティブイマージョン・エリア」があります。アトラクション・エリアには、薬局、ファストフード店、スーベニアショップといった店舗や、ホテル、病院など日常生活の場が再現されていて、そこでリアルに使われる英語コミュニケーションを体験できます。アクティブイマージョン・エリアでは、映像制作やダンスパフォーマンスから国際問題、ビジネス・プログラムまで、多様なテーマについてグループで企画、ディスカッション、発表をすることで、英語と知識を同時に身につけることができます。
それぞれの体験をサポートするのは、TGGに100人ほど所属する英語を話す外国人スタッフです。8人の児童・生徒につき1人のイングリッシュ・スピーカーが付き添い、プログラムの相手役や指南役を担います。英語が母国語ということにこだわらず、英語を自在にしゃべれる国際人という基準で採用しているので、彼らは異なるなまりの英語を話すだけでなく、服装も違えば見た目も違う。実際、世界中ではさまざまなバックグラウンドの人たちが英語によってコミュニケーションを取っているわけですし、子どもたちもそんな彼らと会話をすることで、その先にある世界や文化に触れることができると考えます。

飛行機、売店、薬局、病院などさまざまな日常生活のシチュエーションで英語を使う体験ができる

渡邉
国際機関やグローバル企業、海外の教育省と連携したプログラムもありますし、ここに来れば、学校では限界のあること――たとえば留学準備だったりキャリア教育だったりにもつなげられるという点も魅力だと思います。織田社長は以前、ご自身が学生時代にこういう場所があればきっと違う人生を送っていただろうとおっしゃっていましたね(笑)。

織田
確かにそうですね(笑)。TGGではいわゆる我々が学校で英語を学んできた方法とは異なる学習法として、「PICサイクル」という考え方をベースにしているのですが、これは立教大学の松本茂教授が提唱する効果的な英語学習方法で、Practice(個人学習)、Interaction(対話的学習)、Communication(実践)を回していくことこそが肝心だということ。日本における英語教育では、PとIはなんとかなっても、Cの機会がどうしても不足しがちです。それこそが日本人の英語力がなかなか伸びない理由でもあると松本先生はおっしゃっている。本当にその通りで、どうしても日本の環境だと実際に英語を使う場所が少ないんですよね。多くの人が、練習はできているけど、試合に出たことがない状態と言えるのではないでしょうか。

渡邉
実際ここに来た子どもたちも、順番を待っている時などについ日本語で友だち同士おしゃべりを始めてしまいそうになるんですが、基本的にはそういう間を与えずにイングリッシュ・スピーカーがどんどん話しかけていきます。子どもたちも最初は恥ずかしがったり戸惑ったりしますが、イエスでもノーでもリアクションしなければ次へ行けないので、何かしらちゃんと反応するようになり、次第に殻を破っていきます。正確な文章になっていなくても、たとえば3つのワードを並べるだけで相手に通じれば、次はもっと話そうというやる気が素直に芽生えてくるんですね。イングリッシュ・スピーカーたちのテンションもすごく高くて、恥ずかしがっている方が恥ずかしいよ!という空気にしてくれます。

織田
このPICサイクルに基づいて、中でもCommunication(実践)を実現できる場をどうしたら作れるだろうか、と考えた一つの答えがこのTGGなんです。学校利用のコースとしては、3時間半の半日コースと7時間の1日コースがあり、その間はみっちり海外での生活を疑似体験できるようになっている。ただし、当然ですが1度ここへ来たからと言ってペラペラになれるわけではありません。ここでの体験を通して、もっと英語の勉強を頑張りたいと思ったり、自分の英語でも通じるんだという気づきを得られたりすることが重要なんです。

博報堂ならではの強みを活かし、TGGに貢献していく

渡邉
アクティブイマージョン・エリアで提供するプログラムの中には、弊社の社員の協力を仰いで開発した、SDGs(国連が提唱する、持続可能な開発目標)について学ぶものもあります。博報堂としてもSDGsの認知を広げていくというミッションがある中、そうした形でTGGと連携をとっていけるというのも、また意味のあることかなと思っています。今後社内へも積極的に呼びかけることによって、社会的に意義のある、特徴的なプログラム開発などにも貢献できるといいなと思っています。

アクティブイマージョン・エリアを受講する生徒たち。イングリッシュ・スピーカーが生徒それぞれの語学レベルに合わせてサポートしながらプログラムを進める。

織田
今後は、東京都近郊以外の学校様に対して、宿泊付きのコースや、修学旅行のコースとしての利用を提案してまいります。現状の利用者のイメージは主に小学生から高校生ですが、対象年齢をもっと広げていくことを考えています。週末の一般利用で来場されたお子さんの保護者の方も「自分も体験したい」と非常に高い関心を寄せられていますし、幼児や社会人を対象としたプログラムも計画中です。
いずれにしても、いま渡邉さんのおっしゃったような実際のプログラム開発はもとより、企業連携の推進や、TGGをより広く一般に認知させていく過程において、博報堂が持つ知見はとても心強いと感じています。学校や自治体なども含めて縦横に展開させていくコミュニケーション力など、TGGの発展のカギになる部分ですから、これからも大いに頼りにしています。

渡邉
それはありがとうございます!頑張ってまいりたいと思います(笑)。