昨年9月のイベントの風景。場所もたたずまいもなんだか素敵な雰囲気を醸している。

2017年2月に立ち上がった活動・Quality Of Rōgo Challenge (QORC:コルク)。博報堂の30〜40代の女性プランナーとクリエイターなどを中心に、これからの老後を豊かにするための考察を重ね、具体的なアイデアに結びつけていく活動で、中心メンバーは、神長澄江(リーダー)・根本かおり・美田真知子・遠藤礼奈・こやま淳子の5人。連載第4弾は、認知症を抱える方々がサービスをする「注文をまちがえる料理店」を発案・実行した小国士朗さん、近山知史さん、徳野佑樹さんにお話を伺いました。

注文をまちがえる料理店(ちゅうもんをまちがえるりょうりてん)

ホールスタッフすべて認知症の方が務めるレストラン。「まちがえることを受け入れる・一緒に楽しむ」をコンセプトに、クラウドファンディングを活用し、2017年6月と9月にイベントを開催。世界中のメディアから取材が殺到している。2018年9月13日より活動資金の募金呼びかけをスタート。

左から近山さん・小国さん・徳野さん。

小国士朗(おぐに・しろう)
「注文をまちがえる料理店」発起人。2003年NHK入局。情報系のドキュメンタリー番組を中心に制作。その後、ディレクターなのに番組を作らない“一人広告代理店”的な働き方を始める。2018年6月をもってNHKを退局し、現在はフリーのプロデューサーとして活動。

近山知史(ちかやま・さとし)
TBWA\HAKUHODOシニアクリエイティブディレクター。
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。2003年博報堂入社。2010年TBWA\CHIAT\DAYにて海外実務経験を経て現職。グローバル企業の戦略・ブランディングからAKB48のMV制作まで活躍は幅広い。カンヌライオンズゴールド、アドフェストグランプリ、ACCグランプリなど受賞歴多数。2015年クリエイターオブザイヤー・メダリスト。

徳野佑樹(とくの・ゆうき)
TBWA\HAKUHODOアートディレクター。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2007年博報堂入社。2013年よりTBWA\HAKUHODOに所属。ポスター、VI、パッケージ、CMなど多くのデザイン領域を手がける。東京ADC賞、カンヌライオンズデザイン部門ゴールド、NYADCゴールド、CLIOゴールドなど受賞多数。

間違ってもいいじゃん、って思ったことが
きっかけなんです

QORC:はじめまして、コルクです。今回は、「注文をまちがえる料理店」を発案・実行したお三方にお話を聞きに伺いました。認知症の方々が注文を取ったり、配膳したりするホールスタッフをつとめるイベント型のレストランですが、昨年開催されて、すごく話題になってますよね。

小国士朗さん(以下、敬称略):はい。最初に、布石として2017年6月にプレオープンをやったのが大きいですね。それがものすごく話題になったんです。フェイスブックから始まって、次はヤフーの記事。それが国内外で広がった。その後お客さんのツイッターのつぶやき。そこからは、テレビ、新聞、雑誌、あと海外メディアからの取材依頼が殺到しました。
8月7日にクラウドファンディング始めますっていうのを言ったら、それを見たメディアの方が記事を書いてくださって、そこからは口コミで広がっていきました。

QORC:私たちはコルクを立ち上げた当初、この「注文をまちがえる料理店」を知って、「うわ、やられた!!」と思ったんです。すごく素敵なアイデアだなと。この最初のアイデアとネーミングを考えたのは小国さんなんですよね? 元々、発想されたのは、やっぱり認知症の方々にも役割が必要だというところでしょうか?

小国:全然そんなことは思ってなかったんです。昔、和田行男(大起エンゼルヘルプ取締役・注文をまちがえる料理店実行委員長)さんの「最期まで自分らしく生きる姿を支える介護」の現場を取材したときに、高齢者の方が作る昼ご飯をいただいたことがあるんですが、献立はハンバーグって聞いていたのに、出てきたのが餃子だったんです。え、これ違いますよねって言おうとしたときに、思いついたのが「注文をまちがえる料理店」でした。

QORC:なるほど。

小国:なんでこの人たちハンバーグって言ったのに餃子作ってるんだろう、でもそんなの別にどうでもいいじゃんって思えたんです。おいしそうに食べてるし、楽しそうだし。間違えてますよね?って言っちゃうと、その素敵な風景が崩れちゃう気がして。間違えても別にいいじゃん、って思ったことが、スタートなんです。別にあの方々に役割を与えなきゃとか、社会に雇用を生まなきゃとかは、1ミリも思ってなかった。

QORC:そうですか。ちょっと勘違いしていました。たとえば、『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』って、元々は視覚に障害を持った人の雇用の場を作ることがきっかけだったと聞いたことがあって、それと同じように認知症の方の雇用の場を作ろう、というのがあったのかなって勝手に思っていました。

小国:認知症の方々と普通にふれあう場を作りたい、とは思ってました。僕は、本当に認知症についてど素人の状態で、和田さんの現場に行ったんです。認知症ってなんだろう、本当に大変な病気なんじゃないかって、ドキドキしてたんですけど、あまりにも当たり前の風景がそこに広がってたんでびっくりした。その感じが大事なんじゃないかと。

つまり、僕らは認知症のことを“知ったかぶっている”状態なんじゃないかと思ったんです。認知症と言う言葉を知らない人は、僕も含めてほとんどいないと思うんですけど、でも、そもそも認知症のことを実はよく知らないんですよね。かつての僕のようにただただ怖い病気だと思っている人もいて。そうじゃなくって、こんな笑顔なんだとか、こんなに普通なんだとか、ふれる場を作らないと、わからないままで、その先に行かない。この企画は、僕のような認知症を単語では知っているけど、よく知らない“知ったかぶっている”人たちにふれてもらうためのきっかけだと思っています。

近山知史さん(以下、敬称略):小国さんは、漫画『ワンピース』で言うと、ルフィなんです。このアイデアをなんとか形にしたいと、いろんな仲間を集めていったわけですよ。その流れで僕が入っていった。僕も聞いた瞬間、めちゃくちゃいい企画だなと思った。僕がこれをやる以上は、とにかくもう世界中に話題を作れるような、めちゃくちゃおもしろくて強いイベントにしよう、っていうのを、小国さんと2人でまず話したんですよ。
そのステップの刻み方がものすごく重要で、いきなりクラウドファンディングやりますって言っても、なかなかお金は集まらないですよね? だから例えば第一弾のプレイベントは、準備のための実験の場でありながら、実はファクト作りのためのイベントでもあります。「好きだから始めて、やったらすごい話題になった、良かったです」っていう偶然の賜物にするつもりはまったくありませんでした。話題拡散の設計を綿密にやっています。

小国:相当詰めたもんね。

QORC:9月のイベントを見学したとき、異様に優しい空間でびっくりしたんです。普通、飲食店って、お客さんはサービス受けて当たり前っていう気持ちでお店に行くと思うんですけど、あの場ではサーブする人たちを温かく見守ってるお客さんの姿があった。でもあのお客さんたち、普段別のお店で間違えられたら、全員が全員許す人じゃないと思うんですよ。でもあの日は「許せる人」としてそこに存在していた。

近山:僕は、きっかけは認知症でも、認知症のプロジェクトって言いすぎると、それだけで小さくなると思っていて。世の中の大多数は、認知症とどう向き合っていくかについて、なるべく考えたくない。忘れたい。そういう人たちが大半の中、認知症の話です、ってするとやっぱり受け皿が小さくて、大きな話題って生めないと思うんですよね。
やっぱり、このプロジェクトの本質は、「間違ってもいいじゃない」ってことだと思うんですよ。いまの世の中って、例えばなんでお前が優先席に座ってるのとか、なんでベビーカーたたまないんだとか、もうみんなイラつきまくっていて、ちょっとしたことで炎上する社会になってる。でも、「注文をまちがえる料理店」という名前にしたとたん、みんな間違えることを期待しはじめて、もしかしたら間違えをエンターテインメントに出来るかも、ってところが最大のアイデアなんですよ。

QORC:じゃあこれは別に認知症じゃなくってもいいかもしれないですよね。例えば子供がやったっていいし、とにかく間違いを許す社会を作りたかったと。

近山:そうそう。ただ、認知症の人だけじゃなくて、例えば子供とか、知的障害や体に不自由がある方とか、そういう社会的弱者といわれる人達のものかって言うと、そうではないって思ってて。だって間違えるじゃないですか、日々、僕らも。ちょっとしたことがありますよね。そこを解消したいだけなんですよ。間違えても別にいいじゃんって気持ちを皆が言える場所を作りたい、ただそれだけだと思うんです。

QORC:日本って、間違えることが許されなくて、精密なオペレーションがあたりまえの国だったりするじゃないですか。なので、こういうことやると余計映えますよね。例えばこれ他の国でやったら…。

小国:まあ、普通かもしれませんね。

QORC:そんな日本の、ダイヤが1分も遅れないのが素晴らしい!みたいな空気の中で、これがポンっと出て来たところが良かったんじゃないかなって、思いました。

「いいことしてる」風な
デザインにはしたくなかった

QORC:それでお客さんが来るっていうことは、やっぱり皆、許せる人になりたいんですかね?どこかで。

近山:あとはやっぱり、単純に楽しいことは好きですよね。社会の問題に注目を集めたいときって、結局、感情を動かさないとダメだ思うんですよ。楽しそうとか、驚いたとか、ポジティブな感情を生み出さない限り、なかなか世界って変わらない。ちょっと社会貢献しているような優越感とか、そういう小さい理由じゃなくて、「すっごくおもしろいから私も参加したい」っていう感じを、どれだけ作れるかに尽きる気がするんですよね。

QORC:そこはデザインにも表れていますよね。いかにもボランティア活動みたいな慈善感のするコミュニケーションとも違うし、お洒落すぎて鼻につく感じもなく、「上質なんだけど分かりやすい」クリエイティブワークになっているのがすごいなと。あのさじ加減は、どうやってコントロールしたんですか? あのロゴを作ったのは徳野さんですよね。

注文を間違えるレストランのロゴ。ほぼ一発でこの案に決定した。

徳野佑樹さん(以下、敬称略):はい。おっしゃるように、認知症に理解のある人だけにしか伝わらない、いい人のための、いい人が来る、いいイベントだね、っていう、絶対狭いものにはしたくなかったんです。
そうではなく、そのイベント自体に来たくなるとか、おいしそうだとか、ちょっと洒落てるとか。レストランが持ついい部分をちゃんと作ってあげないと。コミュニケーションを上質にしていって世の中に広めるっていうのは、まさにすごく意識してやったところでした。

さまざまなグッズやツールのデザインはひとつも気を抜いているものが無い。

最初にこのお話をうかがったとき、「注文をまちがえる料理店」というネーミングが完璧だなと思いました。それを生かし、広げていくためには、やっぱりデザインの力が必要ですよね。ポイントはやっぱり「てへぺろ」のマークをつけたところです。この店名を見て来たお客さんが、間違えたら、嫌なの? 嬉しいの? どう受け止めたらいいの?っていう気持ちになるところを、「ゴメンネ、ペロッ」っていう絵をつけることによって、「あぁ、なんかほんわかと「ま、いっか」って気持ちになればいいんだ」って思えるコミュニケーションデザインをしたかったんです。

QORC:「間違える」ことのチャーミングさが全面に出てるデザインだなと思いました。

徳野: 赤とか黄色とか、そういうあったかみのある色味とかも絶対使いたくなかったんですよ。あったかいイベントですよ、って自分から言うのではなく、白黒で、来た人にフラットに楽しんでもらえるようにと。いちばんの主役は、料理であって、おばあさんたちなので。そこを邪魔しないけれど、期待感をあおる余白を、白と黒できちんと作っていきました。

QORC:冊子のデザインやイラストの雰囲気とか、ひとつひとつに理念が行き届いていますよね。説明パネルの文章ひとつとっても、字がちょっとピッて転んでいたりして。本気感が、細部にまで感じられて。絶妙なデザインワークだなと。

説明パネル。よく見ると「れ」の文字が転んでいる。

徳野:プロとして、請け負うからには仕事のクオリティーで返さなきゃいけないし、クラウドファンディングでお金も応援してくださる皆さんからいただいているので、そこはちゃんとしたいなって。グッズも、普通にもらってうれしいものじゃなきゃいけないなと考えて作っています。

認知症だからチャーミングなんじゃない。
チャーミングな人が認知症になっただけ。

QORC:そもそも間違える、という行為のチャーミングさは勿論あると思うんですけど、認知症のチャーミングな側面が活かされていたのでは、と思いました。何故あのおじいちゃん、おばあちゃん達はあんなに魅力的なんでしょう?

小国:…それって多分、認知症になったからチャーミングになったわけではなくて、もともとチャーミングな人が認知症になっただけな気がします。僕たちってつい、認知症の◯◯さんって思っちゃうんですけど、◯◯さんが認知症なだけなんですよ。けっこうそこは、大事な視点だと思います。

QORC:そうか、私は認知症の中にポジティブな面を見たんじゃないかって思ったけど、そうじゃない…。

小国:「別に間違ったっていいんだよ」という場だから、その瞬間に彼らはもともと持っていた魅力がドーンって出て、超かわいいし、超かっこいいわけですよ。ただそれだけだと思うんです。

QORC:スタッフィングはどうやって決めたんですか? 本当に皆さんチャーミングで。どうやってこんなに魅力的な人達を集めたんだろうって思ってたんです。

小国:人選は基本的には福祉の専門職である和田行男さんたちにお任せしました。ただ、一番大事だよねと話していたことは、ご本人が「やりたい」と言ったかどうか。やらされた感が出ちゃうとつらいんで。「こういうのあるんだけどやりますか?」って聞いた時に「私ぜひやりたい」「働きたい」という意志のあった方。結局それも忘れちゃって、来たときに「ここどこ?」みたいな話になるんだけど、それでもやっぱりそこを確認します。

僕たちが主催したケースではないのですが、僕たちも全面的にサポートさせていただいた東京町田市の「注文をまちがえるカフェ」という企画の時には、当初反対した当事者の方もいらっしゃいました。最初の会議の時に「注文をまちがえるの、“る”が反転しているけど、これは俺たちのことを馬鹿にしているじゃないか」と怒って帰ってしまった。でも、そこから、町田市の方が皆で「なぜこのプロジェクトをやるのか」ということを1ヶ月ぐらいかけて一生懸命話し合われて、みんなが納得してついに当日となったのですが、やっぱり、現場にいらっしゃっても、まだ表情が硬くて。でも、接客し始めてからどんどん表情が柔らかくなっていくんですよね。それを見たご家族が、「こんな夫の笑顔は久しぶりに見ました」って涙されていました。

QORC:いい話ですねえ。

お客さんに「サーブしてもらうのが当然」という空気のない、不思議な空間。食事が終わると達成感を含んだ満足感と一体感が感じられる。

料理店じゃなかったら、
こんなにうまくいかなかったかもしれない。

なんといっても、お料理がとってもおいしそう!

QORC:食っていうのもテーマと相性良かったなって思うんです。おいしいご飯って人が寄って来る。

小国:食は圧倒的に大きいですよね。レストランという形態は、コミュニケーションのポイントが多いんです。注文取ったり、サーブしたりとか接点の設計が作りやすい。「食べる」っていう根源的な人間の欲求がある。おいしければ、まず人は満足してくれる。だから料理の質はむちゃくちゃこだわってます。これが例えば「注文をまちがえる雑貨屋さん」とかだったら、こんなにあったかかったかなあって言うと、多分それはちょっと違うような気もしますね。出来なくはないんでしょうけど。

QORC:「注文をまちがえる映画館」とかだと…最初のもぎるとこしか間違うところないですね。

小国:あとは流れる映画が違うとかね(笑)。

QORC:コミュニケーションだらけで成立してるんですね、料理店って。

小国:そう。支え合うっていう関係が作りやすいのが料理店。料理店だとやれることが色々ありましたよね。

QORC:あのハッピーな空間は何!?と驚きました。

小国:でもお客様もみんな最初はやっぱり緊張していますよ。認知症の方にふれたことのない人もいっぱいいるから。何をしたらいいんだろうってすごく硬くなっている。だからオペレーションの中に必ず認知症の方とお客さんとふれ合うポイントを最低でも7つくらい置いていて。コミュニケーションが取れた喜びっていうのは、やっぱり大きいんですよね。

QORC:何かしらトラブル起こるかも、とか、そういう想定もされていったんですか。

小国:もちろん。必ず起きると思って設計しています。

近山:食中毒とアレルギーについては特に細心の注意が必要です。

QORC:あっていい間違いと、あってはいけない間違いのラインをどうやって決めたんですか。

小国:それはね、料理店としてのラインです。要は料理店としてあってはいけない間違いは無しにする。お金とか。 料金均一にしてるんですけど、あれはもう絶対に間違えたら腹立つじゃないですか。

QORC: だから事前会計なんですね。

小国:とにかくお金と食の安全。これがないと、もう料理店として成立しない。
あと、最初から間違えることは目的にしていない。間違えることを目的にし始めるとなんか違う。
さっき徳野くんも言ってたけどデザインも作為が無いじゃないですか。ここのオペレーションも、作為は一切入れてないんですよ。むしろ間違えないことをどうしたらいいかって考えていて、その為に福祉や料理の専門家や、デザインの専門家がいる。でも、そこまでやっても間違えちゃうことはある。具体的に言うと、お客様の3割は間違えを体験していました。それはごめんね許してね、てへぺろ、っていうことでしかないので。そこの順番を間違えて、どこかに作為が入っちゃうと、いやらしいじゃないですか。間違うことは、当事者にとって別に望んでいることではないので。

結局みなさん何に満足してくださっているかっていうと、アンケートによれば、おじいちゃんおばあちゃんと喋れたことなんです。そのためのコミュニケーションの回数を増やしてるんです。間違えることを期待して来ているお客様もいるんですけど、そこがゴールじゃないよっていうのを僕らは明示しています。

なによりも、自分たちがワクワクしている。

QORC:なんかほんと、どこ切ってもいい話で、金太郎飴みたい。なんなんですか(笑)。

小国:でもね。こんなのおかしいってやっぱり言われましたもん。 「認知症を見世物にするな」とか、「家族の気持ち考えたことはあるのか」とか。まぁ、それは僕自身も思います。一歩間違えれば不謹慎だなと思うけど、不謹慎って分かってやってる部分もあるんです。

QORC:分かってるけど必要なんですね。

小国:なんていうか、原風景がすべてなんですよね。献立がハンバーグだったはずなのに、餃子が来たっていう原風景があって、その風景があったのは事実だし、そのことに心動かされたのも事実なんですよね。なんとしてもその風景を街の中に普通に作りたかった。

だから、いろいろなご意見はあると思うけど、それ以上にワクワクしてるから。自分たちが。僕、人集めする時のジャッジポイントは1個で「注文をまちがえる料理店っていうのやりたいんだよね」って言ったときに「おもしろい」って、即答した人かどうかだけなんですよ。その人たちとだけやろうと決めてた。近山さんは速攻だった。食いぎみで(笑)。

おかしいって言われたって、それはもう仕方ないんです。それは解釈だから。それより自分はワクワクしている、これ見てみたい、っていうだけだったんで。この形になったらそういう評価を受けたってだけの話にしないと、いろんなことがややこしくなる。

QORC:小国さんと近山さんは、元々お知り合いだったんですか?

近山:一昨年の夏、NHKさんで研修の講師を担当したのですが、その流れで初めてお会いして。すごく変わった人でおもしろいなって思っていました。そしたら次の連絡が「おもしろいことがあるから行っていい?」って。

QORC:フットワークの軽さがすごい!

小国:いや、でも会った瞬間「いいな」っていうのは、本当にあったんですよ。僕の「バンドやりたいメンバー(=一緒に仕事をしたい人ストックリスト)」に入ってたんです。
いよいよ「注文をまちがえる料理店」やりたいなと思ったとき、和田さんにまず声かけて、和田さんに「うちにはもうめっちゃいい認知症の働き手がいっぱいいるから使ってや」みたいなこと言われて、「じゃあ後は、仲間をオレが集めてくる」って、最初に行ったのが近山さんとこでした。

QORC:確かにルフィですね(笑)。「バンドやりたいメンバー」って大事なんですね。

小国:超大事です。僕、いっぱいリストつくってますよ。

QORC:私も作ろうかな。企画するときにも参考になるような、本当におもしろいお話でした。ありがとうございました。

【ポジティブな老後へのTIPS】

あのお店を出たら、自分は誰かのまちがいをゆるせるだろうか。
試されている気がした。
もし自分が認知症になったとしたら。
それでもやっぱり、元気に、楽しく暮らしたいし、周りの人に愛されたい。
認知症になったら楽しくないかも、とか、愛されないかも、
なんて思い込みも、失礼なんだけど。
注文をまちがえる料理店でお会いした認知症の方々は
そりゃあもう、チャーミングで、魅力にあふれて、あたたかい空気につつまれていた。
ゆるされると、人はその人らしさが全開になるのか。
ならば結局、そのときのために人格を磨くしかないではないか、
という当たり前だけど難しいことに行きつく。
あとはゆるしあえる社会が必要になってくる。さらに難しい。
でもこれから一億総高齢化社会を迎えるわたしたちは、そこに向き合っていくのだ。
ゆるしあえる社会。ちょっと怖いけれど、楽しみでもある。
(QORC 遠藤礼奈)