博報堂ブランドデザイン・若者研究所リーダーの原田曜平が、2018年6月に、「人事採用担当者に役立つ若者攻略本」とも言える『若者わからん! ―ミレニアル世代」はこう動かせ―』(ワニブックス|PLUS|新書)を発表しました。
この度、著者として本書に込めた思いについて聞きました。

「就職氷河期」は去り、「採用氷河期」が到来した

―「企業で働く若者」をテーマに選ばれた背景、理由を教えてください。
原田
「企業の採用対象者としての若者攻略」をテーマに本を書いてみませんか?というご依頼は各方面からいただいていたんです。にもかかわらず、僕はどうしても乗り気がしなかった。それは僕がマーケターであり研究者であるからだと思います。広告会社の社員として、どうすれば若者の消費意欲を刺激できるのか?とか、ブランドと若者の関係構築こそが自分が取り組むべきこと。最先端マーケティングで勝負したかったし、採用については、採用コンサルタントとか、多くの専門家がいらっしゃいますし、僕なんぞが踏み込んでいく領域じゃないと思っていました。
では、後ろ向きだった自分の背中を押したのは何か? それは「景気の復調感に伴う業務量の拡大と採用強化」「団塊世代の本格的な退職(団塊世代が後期高齢者に)」「長引く少子高齢化による若手人口減少」で、若者をとりまく就業環境が一変し、「超ウルトラ売り手市場」が出現したことです。
そのまま「就職氷河期」ならぬ「採用氷河期時代」に突入し、それに悩んでいる得意先が急激に増え、すごい危機感を感じたのが、この本を書こう!という結論に至った理由です。これはもう、社会テーマでもありますからね。
あと、自分が40代を迎え、彼らとのコミュニケーションにギャップを感じることが多くなったこともあるかな(笑)。腹が立ったり、ショックを受けることも沢山ありました(笑)。

―企業は、それほど本気で若者研究への取り組みをしていないということですが、理由は何でしょう?
原田
日本は儒教思想の影響で、職場での年功序列から中々抜け出せない。若者は上の世代を立てると思われているんです。そして、上の世代は「今の若い奴らはなってないなー」と言って酒飲むという構図。何もガンバッテ若者に媚びなくても、自分達に裁量権があるのだから、彼らは言うとおりにするさ、と思っていた節があると思うんです。欧米じゃ考えられない光景です。だから日本企業では言うほど真剣に若者に向き合おうとはしていなかった時間が長く続きました。
しかし、この数年、特に地方の中小企業では、裁量権をふりかざしても「求人が来ない」というケースもすごく増えています。大企業はまだ人気があるとはいえ、じわじわとその余波はきているようです。

「個人」と向き合い「大人」として接する時代

―企業が若者にむきあう上で注意すべき点は何でしょう?
原田
この世代の若者は、無駄に尖って悪い印象を与えたり、衝突することを好まず、表面的にはとても素直。古い世代よりずっとコミュニケーション能力が高く、賢いんです。
だからって企業の色に染めやすく、血気盛んだった昭和の若者より洗脳しやすいだろうと思ったら大間違いです。中身では、かなり個人主義化は進んでいるのです。間違ってもひとつの会社に骨をうずめようなんていう思いは持ちません。

若手プロ野球選手を見ても、いわゆる上の世代からみて“生意気”だったのって、中田翔さんとかダルビッシュ有さんが最後。最近は大谷翔平さんに代表されるような、自然体でかわいく、それでいて周りに左右されない強い個人を確立しているのです。僕ら世代だったら、たとえ能力があっても“二刀流”って、たぶん恥ずかしくてできなかったと思うんですよ。周囲の「おまえ、イタくない?」「何を調子乗ってんの」的な雑音ばかり気にして自滅していたでしょう。 でも、今の子たちは良い意味でも悪い意味でも個人主義なので、我が道を貫き結果をきちんと出せるタイプが多いと思うんです。表面のやわらかさの奥にある芯の強さや行動力を見のがしてはいけないんです。採用時にも、企業は若者をどちらかというと子どもとして見ていた。今後は個人を確立した人間として、大人として向き合っていかないといけない時代になったといえるかもしれません。

―とはいえ、「短い面接」「筆記試験」だけで、本質を見抜ききれません。採用方法も考え直さないといけないのでしょうか?
原田
それは大いに感じます。たとえば、3日間とか合宿形式で、かなり深く面接するぐらいまでやるのもいいように思います。それぐらいやらないとわからないと思うんですよ。15分の面接や、SNSにだっていいことしか書いてないんだから、本質までちゃんとたどり着く採用方法がそろそろ必要です。
あと、新卒一括採用というものにも限界を感じます。今まで、90年代~2000年代のある時期までの就職氷河期世代、若者が弱者だった時代には、若者を救済する、日本的な優しいシステムでした。
採用氷河期の今、たぶん新卒採用時でなくても、例えば大学卒業後、オーストラリアでワーキングホリデーして、それから就職するというのでも就職できるようになっています。それぐらい若者がすごく強い時代になっているし、その傾向はこれからも加速するはずです。

企業の未来は若者にかかっている

―原田さんは、この本で、若者に嫌われないようにするだけじゃなくて、若者と企業がうまく合致点みたいなのを見つけて、互いに相乗効果を上げるべきとおっしゃっていますが。
原田
例えば博報堂が、完全に若者目線の会社にします、若者に媚びる会社にしますと言って、人事システムとかいろいろなものを変えたとしたら、たぶん博報堂じゃなくなっちゃうところがあると思うんですよね。
博報堂のもともと持っている良さー社風とか武器とか何かそういうものと、若者の能力・感性を掛け合わせ、若者が絶対許容できない部分は考え直しながらも、これだけは捨てないというのを企業側は持つべきだと思う。単に迎合するだけではなくて、その掛け算というか、それを最大公約数にしていくというのが大切かなと思っています。 この採用氷河期は、旧態依然とした意味のないものは捨て、守り発展させるものを見定める時期になってくれればいいと思います。
若者と企業の将来のビジョンをうまくすり合わせ、いわば“最高の妥協点”を見出し、創造的な未来をつくっていかなければ、その企業や自治体は利益を作れないばかりか、消滅していきます。

―この本に対する評判はどうですか?
原田
まだ出たばかりですが、地方都市にいる採用担当の同級生とかは既に購入してくれて、「実用的で役立った」と言ってくれました。
あと、博報堂の採用担当者も、喜んでくれましたよ(笑)。彼らは、多くの若者たちと接しているけれど、本当に彼らの本音に触れられているのかな? 心を開いてくれているのかな?って、基本的にいつも心配しているんです。この本に接して、「あ、やっぱりここはそうなんだ」とか「あ、こんな新たな面を読み取るべきなんだな」とか気づいてくれたり、自信が深まったことがあったようでした。

―今後、新たに取り組んでいきたい領域はありますか?
原田
今まで企業の人事系の方とお仕事をする機会が殆ど無かったこともあり、企業人としての若者を、新たなビジネスカテゴリーとして深め、拡大していきたいです。
採用氷河期は今後も継続していくし、そのことに悩む企業のお手伝いをしていきたい。自分が身を置く広告業界にも、それでちょっと新しい風を吹き込めたらいいなと感じます。

『若者わからん!』 ―「ミレニアル世代」はこう動かせ―

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著者:原田 曜平 定価:880円+税 発行:ワニブックス

「ミレニアル世代」のなかでも「ス-パーゆとり世代」と呼ばれる若者たちとの付き合い方に困り果てている人が増えています。どのような対応・言い方をすれば、言うことを快く聞いてくれるのか。嫌われないのか。採用できるのか。辞めないのか……。

若者研究を続けてきた原田曜平が分析・検証。誰にでも使えてすぐに役立つメソッドにまとめました。「人手不足倒産」 が叫ばれる昨今、部下・後輩とのコミュニケーション、育て方、採用に悩む、 上司、先輩、総務、採用担当から経営者までのすべての方々にお読み頂ければ幸いです。

新卒採用など若者の採用・育成にお悩みの方はぜひ、博報堂ブランドデザイン若者研究所までお問い合わせください。

原田 曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)

博報堂入社後、ストラテジックプラニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務める。大学生や20代の社会人と共に、若者の消費行動について調査・分析し、次世代に流行るものをいち早く紹介するほか、マーケッターの立場から現代社会を読み解く。著書に「近頃の若者はなぜダメなのか」(光文社新書)、「さとり世代」(角川oneテーマ21)、「ヤンキー経済」(幻冬舎新書)、「パリピ経済」(新潮新書)、「ママっ子男子とバブルママ」(PHP新書)、「18歳選挙世代は日本を変えるか?」(ポプラ社)、「力を引き出す~『ゆとり世代』の伸ばし方(青山学院大学陸上競技部 原晋監督との共著)」(講談社+α新書)「平成トレンド史(角川書店)」などがある。TV出演も多数。