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ヒット習慣予報 vol.28 『お試し家族』

2018.06.19
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの楠田です。この6月よりヒット習慣メーカーズに参画し、本稿が初めての担当コラムとなります。よろしくおねがいします。
全国的に梅雨入りしてジメジメと、家から一歩外に出るのがどうにも億劫になる日々が続きますね。雨だと、つい家で撮りだめしたドラマを見て、だらだらとした一日を過ごしてしまっています。

さて、今回のテーマは、「お試し家族」です。
実際には家族にはなっていないけど、家族になったような体験ができる。そんな体験が少しずつ増えている、という話です。

直近では、今話題の映画の影響もあってか、「家族」をキーワードにした検索は、増加傾向にあります。

出典)Google Trends(※「家族」の検索推移)

家族をお試し?という違和感があるかもしれませんが、近年、様々なサービスが浸透してきていることから増えてきているようです。中でも、チームの若手から聞いてびっくりしたのは、若いカップルの間で「ペットレンタル」が人気になっているとのこと。
このサービス自体は昔からあるようですが、若いカップルがペットレンタルのサービスを利用する理由として、この人と結婚してペットを飼ったらどんな生活になるのか、を体験するためだそうです。なんともイマドキの発想だなと思いましたが、ペットを介したお試しの共同生活を通じて、相手を見極めているのでしょうか。

また、それ以外にも、同棲のお試しを民泊で体験する、ということも増えてきているよう。いざ、同棲するとなると、家を借りるのに、敷金・礼金、家財道具などを揃えるのに、初期投資が結構かかります。しかし、同棲して初めて実感する、相手の許せない部分があることもあるので、その時の投資リスクを最小限に抑えるために、民泊を利用して同棲のお試しをするそうです。ちょっと夢がないようにも感じますが、賢い選択かもしれませんね。

他にも、「VR育児シミュレータ」。
VR空間上で育児体験ができるというものです。体験者の方の顔画像から、目、鼻、眉、口、輪郭の特徴を抽出し、体験者の赤ちゃんの顔を推定して生成。その赤ちゃんの顔画像を元に、VR空間で赤ちゃんをあやしたり、ミルクをあげたり、寝かしつけたりするなどの育児体験をすることができます。自分が子供を育てるとしたらどうなるんだろう、というのを試してみる体験としては興味深い取り組みだな、と思います。また、妊活や婚活市場へのアプローチにも効果があるかもしれませんね。

このように、「お試し家族」が増えてきている理由が大きく2つあると思われます。
1つ目は、「サービス・技術の進化」にあると思います。共働き世帯の増加で、社会と家族のあり方が過渡期になる中で、VR・AR技術が進化し、さらには、シェアリングエコノミーの浸透などもあり、それらを活用した新しいサービスが増えてきています。このようなサービスをうまく活用していくことが、これからの時代を生きていくためには求められるのでしょう。
2つ目は、「できるだけ、失敗をしたくない」という心理にあると思います。3人に1人が離婚する時代、と言われるようになってきてはいますが、あくまでそれは他人事で、自分は幸せな結婚生活を送りたいと考えている。だからこそ、あらかじめ相手をしっかりと見極めておきたいのでしょう。

このような「お試し家族」は、今後、様々な分野にビジネスチャンスがあると考えます。

「お試し家族」のビジネスチャンスの例
■(資格や法律的な問題などは絡みますが、)保育事業者が、妊活中・妊活予定の家族に対して、子育てのお試し体験をできるようなサービスを展開。
■住宅仲介業者が、家の内見を行かなくてもできる、VR内見サービスや、その暮らしのお試し体験サービスを展開。
など

「家族」を「お試し」しながら、自身の理想の家族を追い求めていく。一昔前ですと、ふざけたことを言っているな、と思われがちかもしれませんが、これからの新しい人生設計において、「お試し」も必要な一つの有効な手段なのかもしれませんね。

楠田勇輝(くすだ・ゆうき)
統合プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2011年 博報堂に入社。
入社以来、マーケティング職に従事し、お得意先や世の中の課題と向き合う。基本、テレビっ子。ドラマと、阪神タイガースをこよなく愛し、阪神の勝ち負け次第で翌日の気分がちょっと違う虎吉。

▼「ヒット習慣予報」とは?

モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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