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地域社会と学校をつなぐ新しい取り組み―未来教育会議主催「くんま森の学校」開催

2016.10.06
#共創#博報堂ブランド・イノベーションデザイン#教育

杉本奈穂
博報堂ブランドデザイン ストラテジックプラナー

2010年入社。プラニング局にてトイレタリーや精密機械を中心としたマーケティング業務に従事後、2015年より博報堂ブランドデザインに在籍。未来教育会議には、2016年度の活動に参加。

 2016年8月3日(水)~5日(金)、静岡県浜松市天竜区熊にて、博報堂もメンバーの一員である未来教育会議主催の「くんま森の学校」が開催されました。

 本プログラムは、教育先進国のひとつであるデンマーク発祥と言われる「森の幼稚園」(自然の森の中で保育を行う幼稚園)から着想を得たものです。地元の浜松市立熊小学校に通う児童8名(1~6年生)と神奈川県横浜市にある学習塾スターグローブから同地を訪れた小中高生12名が、地域の大人たちとの交流を楽しみながら、FSC(※1)に認証されている「くんまの森」中心に熊(くんま)の自然について学び、体験し、語り合うというものです。そこで学んだ魅力は、最後に広告ポスターにまとめて発表してもらいます。

  • FSC: Forest Stewardship Council=森林管理協議会。国際的な森林認証制度を行なう第三者機関のひとつで、① 森林環境を適切に保全し、② 地域の社会的な利益にかない、③ 経済的にも継続可能な森林管理を推進することを目的としており、WWF(世界自然保護基金)の推奨を受けている。

 未来教育会議は、今後ますます重要になると考えられる、学校、家庭、企業、地域が連携する豊かな教育の実現に向けて様々なアクションを創造するプロジェクトで、2014年2月に発足しました。今回のプログラムは、これまで未来教育会議が培ってきた知見を活かし、学校と地域社会とが関係を築いていく新しいアプローチを開発するためのモデルケースとして実施されました。地域の大人に教わりながら地域の魅力を発見し伝えるという豊かな教育体験、地方と都会の子どもたちの交流、横浜から来た子どもたちにとっては特に新鮮な自然体験と、未来教育会議が理想と考える学びの要素を凝縮した、密度の濃い3日間となりました。

<1日目> 「授業の日」

 FSCジャパンの河野絵美佳さんから、海外の事例も交えながらFSCと森を守ることについて、浜松市役所産業部林業振興課の藤江俊允さんから、FSCに認証されているくんまの森について、それぞれお話をしていただきました。この日は、熊小学校の児童と横浜市から来た子どもたちの初顔合わせの日でもあり、約半日の授業の後は、熊小学校の児童たちが日頃から慣れ親しんでいる百人一首で親交を深めました。

<2日目> 「体験の日」

 午前中は、くんまの森で林業を営む太田誠さん・さをりさんご夫妻にご指導いただき、子どもたち全員が、森の奥に入ってノコギリで木を切ることを体験しました。自分たちの手で木を切り倒すという鮮烈な経験を通じて、間伐で山に光を入れることでFSCの森の環境が維持されていることを学びました。
午後は、地域の大人たちの引率のもと、くんまの古道を歩くチーム、山奥の川辺で珍しい石採りをするチーム、くんまの職人さん手作りの竹水鉄砲で川遊びをするチームに分かれて、それぞれが楽しみながらくんまの自然を満喫しました。
この日のお昼ご飯は、地域のみなさんにお手伝いいただき、まちおこしに取り組むNPO法人ゆめ未来くんまの協力も得て、名物・五平餅をみんなで手作りしていただきました。また、夜には地元の光雲寺にて、くんまと横浜の子どもたちが一緒に座禅を体験し、大お泊まり会で楽しい夜を過ごしました。

<3日目> 「アウトプットの日」

 博報堂メンバーが、ものごとの魅力を伝える広告のポイントを説明し、続いて子どもたち同士でお互いの良いところをほめ合うワークを体験した後、くんまと横浜の子どもたちが入り混じってグループに分かれ、3日間の体験で発見したくんまの魅力を広告ポスターにまとめることに挑戦しました。頭をたくさん使う作業の合間には、地域のご年配の方々と保護者のみなさんから、地元の食材を使ったおいしい朝食と昼食を振る舞っていただきました。そして午後には、保護者の方を中心に「くんま森の学校」にご協力いただいた地域の方々にお集まりいただき、子どもたちによる広告ポスターの発表会を行って3日間の活動を締めくくりました。

 初めこそ緊張した面持ちで集まった子どもたちですが、出身地域も学年も関係なくあっという間に仲良くなり、元気いっぱいに3日間を過ごしました。地域の大人たちと一緒に森の中で林業を体験したり、地域の自然の魅力を再発見したりする活動は、横浜の子どもたちだけでなく地元の熊小学校の子どもたちにとっても非常に新鮮に映ったようでした。子どもたちのきらきらした表情から、地域社会と学校が繋がることで、子どもたちにとっての学びの成果や楽しみが大きくなるのだということが改めて感じられました。

 今回の試みについて、未来教育会議から本プログラムに関わった博報堂ブランドデザイン 副代表の兎洞武揚は以下のように振り返っています。
「学校と地域社会との関係づくりというテーマに対して、FSCのような世界レベルの“地域の宝”にフォーカスした今回のプログラムは非常に画期的であったと感じますし、同じような他の地域にも展開していくことができるものであると思っています。自身のこれまでの経験に照らしても、子どもたちだけでなく大人も一緒に学べるすばらしい体験だと感じました。
また、本プログラムの実現に至るまでには、2015年11月に熊小学校PTAのみなさまのご協力を得て実施した“夜の授業参観”(※)から始まった、地域のみなさまを中心とする幅広い関係者の方々との信頼関係の構築が欠かせないものであったと感じています。」

  • 夜の授業参観: 2015年11月13日(金)の夜に浜松市立熊小学校で開催された、学校参観会と地域の未来を語るワークショップの総称。全校児童6名(当時)に対して、保護者と地域住民の方々を合わせた約70名が参加。
■ご参考■
未来教育会議 http://miraikk.jp/

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