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タイでのピックアップトラック人気はいつまで続くのか?【アジア生活者のリアル Vol.2:アセアン篇】

2016.09.05
#ASEAN#生活総研

博報堂生活総合研究所アセアン(生活総研アセアン)は、日本で培った生活者研究のノウハウを生かし、タイ・バンコクを拠点にアセアン各国のリサーチャーをつなぎ、アセアン生活者の意識や行動を研究、企業のマーケティング活動をサポートしていくと共に、これからのアセアンでの新しい暮らしの在り方を洞察・提言しています。 その活動の一つとしてWEBマガジン「アセアン生活者マガジン」を発行しております。アセアン生活者マガジン第2号のテーマは「クルマお絵描き調査」です。

 その昔、モータリゼーションが進展していた1960年代、1970年代、日本では子供がクルマの絵を描くと、ほぼセダンの絵を描いていたと言われています。かくいう自分も、クルマの絵を描くときは、無意識にトランクのあるセダン型の絵を描いていました。クルマといえばほぼセダンだった時代ですから、当然のことかと思います。

 ところが近年は子供にクルマの絵をかかせると、セダンではなくミニバンの絵を描く子のほうが多いと言われています。ニーズの多様化に伴い、車型のバリエーションが増え、特に子供を連れた家族世帯ではミニバンが主流の車型になっていることを反映しているのでしょう。

 では、モータリゼーションが本格化している現在のアセアンの子供たちにクルマの絵をかかせたらどんな絵を描くのでしょうか? こんな問題意識からスタートした企画、今風に格好よくいえば「生活者発想による未来市場トレンド予測手法」でもあるのです。

 調査手法は、アセアン五カ国の子供とその親それぞれに、「クルマと聞いて思い浮かぶもの」と「将来乗りたいクルマ」の絵を描いてもらいます。 ※シンガポールでは子供だけ聴取。

 そして「クルマと聞いて浮かぶもの」と「将来乗りたいクルマ」として描かれたクルマの車型を比較分析することで、将来のクルマトレンドを抽出します。

実査にあたっては事前に下記のようなクルマトレンドの仮説を立てています。

  • タイでは、今はピックアップトラックが人気だけれども、将来子供が乗りたいクルマとしてはどうなのか?(人気は下がるのではないか?)
  • インドネシアでは、今はMPVが人気だけれども、将来子供が乗りたいクルマとしてはどうなのか?(人気は下がるのではないか?)
  • いずれの国でもSUVが少しずつ注目されているが、将来子供が乗りたいクルマとしても人気が出ているのではないか?

さて、結果を見てみましょう。

 これがボディタイプに関する結果まとめ表です。ここでは見にくいと思いますが、各国ごとに「クルマと聞いて浮かぶもの」と「将来乗りたいクルマ」として描かれたものを、親子それぞれ表に入れています。

        ボディタイプの傾向
    (クリックして別ウィンドウで開く)

では、この表からどのような傾向が見えたのでしょうか。
アセアンに共通する主なファインディングスは下記のとおりです。

  • 将来のセダン人気は低下傾向? 「クルマと聞いて浮かぶもの」と比べ「将来乗りたいクルマ」としてセダンが描かれた数は減少。現在のメジャーな地位と比べ将来のセダン人気は低下の可能性。
  • インドネシアを除きMPVの人気が向上。 「将来乗りたいクルマ」としてMPVが描かれた数は「クルマと聞いて浮かぶもの」と比べ増加。MPVへの市場シフトが進む可能性(インドネシアではMPVが既にファミリーカーとして定着していることもあり、将来乗りたいクルマとしてはむしろ減少)。
  • スポーツカーへの憧れは健在。 将来乗りたいクルマとしてスポーツカーを描く人は多く、アセアンでのスポーツカー人気は健在であることをうかがわせる。
     ASEAN5カ国のファインディングス
    (クリックして別ウィンドウで開く)

仮説に対し、インドネシアでは、将来乗りたいクルマとして、スポーツカーの人気が高く、SUVは堅調、一方でセダン、MPVの人気は低下しています。タイでは仮説通り、将来乗りたいクルマとしてのセダン、ピックアップトラックの人気が大きく低下しています。

ASEAN全体では日本の子供たちと同じく、MPVの絵が増加し(インドネシアを除く)、セダンの絵を描く子供は減少傾向と出ました。しかし、スポーツカーへのあこがれが根強いのはASEAN成長のパワーを象徴しているような気がします。実際、私の周りの現地スタッフに聞いてもスポーツカーへのあこがれは日本より強く感じます。

各国のファインディングスなどの詳細は、アセアン生活者マガジンVol.2に掲載しておりますので、ぜひご一読ください。生活総研アセアンホームページの「Magazines」より、日本語版と英語版のPDFをダウンロードいただけます。

博報堂生活総合研究所アセアン所長 帆刈 吾郎

【プロフィール】

 帆刈 吾郎(ほかり ごろう)
博報堂生活総合研究所アセアン 所長/博報堂アジア・パシフィック エグゼクティブ・リージョナル・ストラテジック・プランニング・ディレクター

1995年 博報堂入社。 マーケティング・プラナーとして得意先企業のマーケティング業務を担当
2005年 英国ロンドンの広告会社に出向
2006年 英国ロンドンのブランドコンサルティング会社出向した後、同年、博報堂に復職
2013年 博報堂アジアパシフィック(HAP)にエグゼクティブ・リージョナル・ストラテジック・プランニング・ディレクターとして赴任
2014年 博報堂生活総合研究所アセアン所長

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