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【担当者に聞く】日本の地域を、世界の観光地に…デスティネーション・プロデュースで、インバウンドは進化する! -博報堂DYグループ「株式会社wondertrunk&co.」設立インタビュー

2016.07.15
#インバウンド#グループ会社#地域創生

ペリーが来訪し、バスコ・ダ・ガマが出航したという7月8日、博報堂DYホールディングスは、「AD+VENTURE」(※)制度により「株式会社wondertrunk&co.(ワンダートランクアンドカンパニー、以下wondertrunk)」を設立したことを発表しました。

wondertrunkは、「日本の地域を、世界の観光地にしていく」をゴールに、戦略(まだ知られていない地域の魅力を開発する)から、広告制作・PR(海外に地域の魅力を伝える)、また実際の旅行商品や地域の旅コンテンツ制作(実際に地域に来てもらい、体験してもらう)まで、統合的に企画・実施する旅行・インバウンド専門会社です。

新会社設立にあたり、メンバーが背景や意気込みを語りました。

(左から)岡本岳大、高橋亘

 

「ビジット・ジャパン」で得た仲間・ナレッジを活かしたい-
7年の構想を経て、「AD+VENTURE」に挑戦

 

-おふたりの経歴を教えてください。

高橋:僕は2003年博報堂入社で、初任はマーケティング部門でした。配属されてすぐ営業局へ異動になって、営業的に動きながらマーケティングやメディアも…トータルでクライアントのビジネスサポートをしていました。

その後、マーケティング局に戻り、様々な業種のクライアントの戦略立案やリサーチ等に従事しました。その頃ちょうど国内でインバウンドが叫ばれ出して、観光庁の仕事に誘われたのがインバウンド業務に取り組んだきっかけですね。その後は、統合プランニングを推進する部署を経て、中国に赴任しました。3年の任期を経て、この2016年4月に帰国しました。

岡本:僕は、2005年博報堂入社で、初任はデジタル系の部署でした。広告とデジタルの融合に取り組んでいましたね。その後、スタッフ視点でビジネスを開発していく、開発系の部署に長くいました。職種の垣根を越えて、全方位でプランニングしていくようなところです。その後はプロモーション系の部署に所属していました。

「ビジット・ジャパン」の仕事には、亘さんと同じタイミング、たしか2009年ぐらいから携わり始めました。僕ら2人とも統合プランニング系なので、「ビジット・ジャパン」業務に何となくプロジェクトリーダーっぽい感じで従事していましたね。亘チームと岡本チーム、2チームあったんですよ。亘さんが中国を担当して、僕はその他アジア各国を担当して。そのときはあまり交流がなかったのですが、一時コンペで負けることが続いて、せっかくだからチームを合体しようとなって一緒に取り組んだのが亘さんと親しくなったきっかけですね。そのコンペも負けたんですけどね(笑)。

 

-今回、おふたりで組んだきっかけは?

岡本:もともと、僕たち2人とも海外のクリエイターやチームと一緒に仕事をする機会が多くて。そういう業務って楽しいよね、会社をつくったら楽しいかもねといった話はしていました。

 あと、やっぱり旅というテーマはすごく魅力的でした。「ビジット・ジャパン」業務を重ねる中で、自分たちのところにどんどんナレッジもたまっていたので、何らかチャレンジしたいという話はしていましたね。本格的に検討を始めたのは2012年か2013年頃かなぁ。

高橋:うん。僕が転勤する前に一度「AD+VENTURE」に挑戦しようとしました。でも、実は構想自体は2009年頃、「ビジット・ジャパン」を始めたころからあったんです。「ビジット・ジャパン」業務に取り組む仲間たちには、博報堂や博報堂DYメディアパートナーズの人間もいれば制作会社さんもいるし、もちろん海外のメンバーもいたのですが、彼らみんな一緒にチームで取り組んでいて、「TRUNK HAKUHODO」というチーム名を勝手に作っていたんですね。そのときから現地の人と共にチームでやるというやり方は変わっていないです。なので、足かけ7年構想ですね。

そして、ちょうど去年、帰国が翌年に控えていたのと、世の中的にもインバウンドがかなり社会テーマになっていたので、いろんな意味で今だ、と「AD+VENTURE」に挑戦しました。

インバウンドの次、「デスティネーション・プロデュース」を実現する


-wondertrunkの具体的なサービス内容を教えてください。

高橋:大きく3つの柱を想定しています。

1つは、デスティネーション・マーケティング・コンサルティング。インバウンドに関する調査・分析や戦略コンサルティングの実施ですね。具体的に送客まで見据えたコンサルティングを実施するという意味で、付加価値のある戦略立案が提供できると考えています。 

2つめは、デスティネーション・コミュニケーション・プロデュースです。僕たちがこれまで培ってきた海外クリエイターネットワークを活用して多言語コンテンツを制作したり、海外旅行メディア&旅行会社・エアラインネットワークを活かしてグローバルPRを提供します。

3つめは、デスティネーション・ビジネス開発です。海外クリエイターや国内外の旅行関連事業者と一緒に、外国人旅行者の誘致に繋がる新しい旅行関連事業・サービスの開発・運営を実現していきます。

岡本:ヒアリング等で様々なニーズを聞いてみると、やはり1つめ・2つめのコンサルティングやグローバルPR・コンテンツ制作は、今すごく求められていると感じました。まだプレイヤーもそこまで多くないのと、特に統合的にプランニングをできるところがないということだったんです。

 でも、一方で、自分たちで新しい会社でチャレンジしていくときに、これまでのナレッジをフックにして、新しい旅領域のビジネスをつくれないものだろうかって考えるようになったんですね。そこから生まれたのが3つめのビジネス開発です。たとえば、絶景はあるけれど泊まるところがないとか、一ついい温泉旅館はあるんだけど、他に観光地がないとか、そういう悩みをかかえている地域は多くて。

高橋:旅のパーツが足りていない。

岡本:そう。でも、見方を変えると、そのパーツさえ揃えば、そこが大スターになる可能性もあるじゃないですか。なので、自分たちでヒーローの仕込み(ビジネス開発)をするというチャレンジをしたいと思ったんです。

高橋:僕たちはインバウンドではなく、デスティネーションという言葉を使っています。

 これまで、国内でデスティネーションというと、日本人を外に出すか、日本人を国内で動かすといった意味が強かったのですが、僕らは日本の地域を世界の人たちからの旅の目的地に変えていくという意味で活用しています。手口自由で統合的にプロデュースしていくということで、「デスティネーション・プロデュース」と命名していますね。

岡本:インバウンドという言葉がちょっと流行り過ぎて、そのバブルが終わるというのをたぶんみんな何となく感じていると思うんですね。そういう意味でもインバウンドの次、デスティネーションという言葉がキーワードになってくる気がしますね。

-「wondertrunk」設立に込めた思いを教えてください。

高橋:もともと僕らは、インバウンドの本質は経済効果を生み出すことでも訪日人数を達成することでもないと考えているんです。日本人または地域と外国人の繋がりをつくることで、異文化交流や相互理解が進んで、その結果として人が動いて、モノが動いて、お金も落ちていくという構造だと思っているんですね。その環を継続的につくっていくことを、僕たちはすごく大事にしていて。

岡本:そうですね。そこは2人とも昔からブレていません。

高橋:今回、専門会社化したのは、受託の広告案件だけではなく、旅行業やPRなど、業界をまたいでトータルで事業に取り組みたかったからです。そうすることで、手を組んでくれるプレイヤーが違うし、海外に行ったときの向き合い方がエージェンシーではなくなるのも大きいですね。

岡本:あと、「地域」に特化したいという思いがありました。地域には今魅力的な活動がたくさんあります。様々なクリエイタ―、行政の方も発信に取り組まれているのですが、海外とつなぐという点でお手伝いできることがあるんじゃないかと思ったんです。僕らがこれまでやってきたナレッジと融合できたらと思いましたね。

 

会社設立に向け、世界4拠点会議+100人ヒアリングを実施

 

-設立に向け苦労した点を教えてください。

岡本:「AD+VENTURE」審査通過には苦労しましたね。亘さんは中国、僕は日本にいたので、作業は分担しつつ、オンラインチャットとネット会議でやりとりしました。

高橋:春節などで帰ってきたときには直接話し、あとはオンラインでした。毎週1回土曜日の朝8時半から、電話会議とネット会議をしていましたね。

 また、営業的視点が必要だと感じていたので、アメリカに留学してMBAの勉強をしていた同期を電話会議に混ぜたりもしました。あとは、広告業界以外の視点も欲しくて、ワシントンにいる商社の友達をテレビ会議に入れて、4拠点会議(広州・東京・ワシントン・ノースカロライナ)をずっとやっていましたね。あれはよかった。

岡本:構想自体は2人の中であったけれど、事業計画をいざつくろうといったときに、外部の視点をいただけたのは良かったですね。僕らの強みも客観的に見られたし。

高橋:その会議を経て事業の大枠が決まったら、次はとにかくいろんな人に会いました。ベンチャーキャピタルの方やWEBのマーケティングディレクターの方とか、日本人も外国人も含めてですね。とりあえず会って、こういうことを考えているんですけどどうですか、って。100人くらいは会ったと思う。

岡本:博報堂のスタッフって、自分のアイデアを大事にするじゃないですか。僕らはそういう面もありますが、執着心はゼロなんです(笑)。どんどんぶつけて、「いい」と思うものがあれば、即取り入れる、といった感じで進めていましたね。

高橋:あと、地域もたくさん回りました。地域会社にも協力してもらいながら、日本全国をぐるっと。それぞれの地域の県庁等にも行って、ヒアリングをしました。いろんな人と会話すればするほど、自分たちの事業プランの漏れに気付いたリ、逆に確信を持てたりしました。

同じ志を持つ仲間を増やし、「地域と外国をつなぐ」方程式を世界に展開したい

 

-営業開始したばかりですが、意気込みを聞かせてください。

高橋:とにかくワクワクしていますね。僕らの会社名って、「&co.」がついているのですが、これは仲間たちという思いを込めています。

僕らは、仕事をする上で、一緒の目標を持つ仲間を世界中につくっていくということをすごく大事にしているんです。その、仲間になってくれる人が、すでに国内はもちろん、中国にも韓国にも香港にもヨーロッパにもいっぱいいて、その人たちがこの会社を応援してくれているし、一緒にやりましょうと言ってくれる。そういった人をもっと増やしていきたいですね。

岡本:あと、最終的な目標としては、wondertrunkの海外版みたいな人たちといっぱいつながっていきたいです。そのうちwondertrunk・ロンドンができたり、バンコクができたり。地域と外国をつなげるというのは、世界中どこでもできる方程式だから、その志を持っている人たちとアライアンスを組んでいきたいですね。

高橋:そうだよね。「ビジット・ジャパン」を担当している時にも強く感じたけれど、戦争などの国家都合でお互いの国のことを嫌いになったりすることがあるけれど、実は市民レベルではそうじゃない。本当は行ってみたいし、好きだったりします。そのしがらみを越えて行くのって、生活者だし、人。そこに信念を持っている人と、つながりたいし、つなげていきたいですね。

(※)2010年に、博報堂DYホールディングスが事業会社である博報堂、大広、読売広告社、博報堂DYメディアパートナーズとともに開始し、現在は博報堂DYグループ傘下の54社を横断する社内公募型ビジネスアイデア募集・育成プログラム。

<終>

【プロフィール】

株式会社wondertrunk&co. 代表取締役共同CEO
岡本 岳大(おかもと・たけひろ)

2005年博報堂入社。統合キャンペーンの企画・制作に従事。世界17カ国の市場で、観光庁・日本政府観光局(JNTO)のビジットジャパンキャンペーンを担当。沖縄観光映像「一人行」でTudou Film Festivalグランプリ受賞、ビジットジャパンキャンペーン韓国で大韓民国広告大賞受賞など。国際観光学会会員。

株式会社wondertrunk&co.  代表取締役共同CEO
高橋 亘(たかはし・わたる)

2003年博報堂入社。自動車、飲料・食品等のマーケティング戦略・コミュニケーション開発、中国・アジア等のグローバル業務、政府観光局等のインバウンドプロモーションに従事し、2009年よりビジットジャパンキャンペーンを担当。中国ROI Marketing Award受賞など。2013-16年に中国駐在。

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