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連載【私の生活定点】第5回ー「料理好きな男は転職を考えてるかも」

2015.06.08
#生活総研#生活者調査

2015年6月8日

博報堂 クリエイティブプロデューサー
鷲尾和彦

新しくなった「生活定点」調査のウェブサイト。 

なかでも、「似てるかもグラフ」が面白くて、ときどき眺めています。
時系列の推移を示す折れ線グラフの「カタチ」が似ている調査結果を、約4,200万通りの組み合わせの中からプログラムで自動抽出して重ねてみせてくれるのが、「似てるかもグラフ」。

例えば、こんな感じ。

例1)
室内に観葉植物や鉢植えがある× 友達のような夫婦関係がよいと思う
(男性40 代)

http://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/581-863-6.html

例2)
自分へのごほうびとして自分にプレゼントを買ったことがある × 運命を信じない
(男性)

http://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/989-1484-2.html

「似てるかも」って感じるのは、なにか理由があるからかもしれないし、全くの偶然かもしれない。興味のおもむくままに見ていると、予想外の出会いが待っていたりします。

ときには、こんな風に、「どきっ」とすることも。

例3)
広告は新しい暮らし方を教えてくれると思う× 若さが欲しい
(男性40代)

http://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/1188-82-6.html

例4)
料理を作ることが好きな × 転職したい
(男性40代)

http://seikatsusoken.jp/teiten2014/answer/421-292-6.html

調査結果やデータを「仮説をもって臨むべし」、あるいは「戦略のフィジビリティを検証しよう」として見ることが普通は多いと思います。
仕事だし、提案を通したいし、というわけなんですが、調査データもある視点から世界の有り様を映しだすものだとすると、意外と僕らは、そんな「事情ありき」で、世界を眺めていることになる。
(生まれたばかりの子どものように、世界をフラットに眺めることは、社会人にもなると、そもそもとても難しいわけなのだけど。)

しかし、変化のスピードがとても早く、世の中に表出している「課題」といわれることも、その背景の要因が複雑に絡み合っていて、一見するとどこに真の「課題」が潜んでいるのか見えにくいのが、今の時代です。ひとつの「文脈」やこちらの「事情」を頼りにしていては、本当の課題を見つけ出したり、有効な解決策をつくりだせるとは限りません。逆に、そこから遠ざかってしまう危険性の方が大きいかもしれない。

むしろ、自分の中に既にある「文脈」(と、それらを無意識的に導きだしている自分の「経験」や「実績」など)を投げ捨てることができる、異なる「文脈」をオープンに取り入れていく、そんな「コンテクストフリー」「マルチコンテクスト」な姿勢のほうが、真の「課題」を見つけ出し、新しい創造性を生みだせるのでは? つまりは、「未来」につながっていくのでは?なんて思うのです。

少し話が広がってしまいました...。

で、この「似てるかもグラフ」。
これって、自分の中の「文脈」を揺さぶってくれる、ときには壊してくれる心地よさを秘めているように思います。そこが面白いなと僕が感じているところ。気ままな散歩のような感覚で、ふらっと眺めるのがちょうど良い気がします。

連載【私の生活定点】バックナンバー

第4回”科学技術が進歩しすぎて不安である”という設問を”科学技術の進歩”を用いて解析
第3回「友達」と「金髪」と「ソーシャルメディア」
第2回「愛」より「カネ」か?日本人。
第1回「引っ越しをしたい30代は、焼肉・ぎょうざ好き?」

『生活定点』調査とは、1992 年から 22 年間にわたって隔年で実施している生活総研のオリジナル定点観測調査です。同じ地域(首都圏・阪神圏)、同じ対象者設定(20~69 歳の男女)に向けて、同じ質問を継続して投げ掛け、その回答の変化を時系列で観測しています。 項目数は約 1,500 項目に及び、衣、食、住、健康、遊び、学び、働き、家族、恋愛・結婚、交際、贈答、消費、情報、メディア接触、社会意識、国際化と日本、地球環境など、生活者のありとあらゆる領域を網羅しています。2014年、最新調査結果の公開にあたって「生活定点」特設サイトを開設しました。
http://seikatsusoken.jp/teiten2014/ (時系列データのエクセルファイルもダウンロードできます。日本語版と英語版をご用意しています)
「生活定点」特設サイトでは「似てるかもグラフ」「グラフの形から見る」「ランキング表」「面グラフ」など、ふだん、あまりデータを扱わない人にも、統計データを楽しんでいただける工夫をしています。ぜひ、ご活用ください。

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