博報堂行動デザイン研究所では、人が普段、無意識下で行っている反応や判断とそれによって引き起こされる行動の関係を把握しようと様々な研究を行っています。
今回は、刺激としての「数の大きさ(多さ)」が人の反応や行動にどう影響を及ぼすかというテーマで研究しました。“扱いやすい数字=3”にまつわる研究をレポートします。

経験的には他人を説得するプレゼンテーションで「3つ理由を挙げる」、「商品を説明するポイントを3つに絞る」、といった行動はよく見受けられる。「石の上にも3年」など、「3」を使った諺も多い。こうした経験に基づき「3」を使うのが効果的という主張もあるが、その真偽、あるいは「3」が有効な理由も解明されていない状況だ。

一般的に理由(根拠)や選択肢は多ければ多いほどいいと考えられるが、逆に多すぎると認知的過負荷(オーバーロード)がかかるとも考えられる(※)。理由(根拠)や選択肢の数は1や2よりも、3の方が好ましいのは自明と思われるので、「3で十分なのか、4つ以上のほうがよりいいのか」を明らかにすることにスタディをフォーカスした。本研究の目的は実務上に有用な示唆を与えることなので、0〜9の全ての数との比較をしなくても「3で十分なのか、4つ以上のほうがよりいいのか」が分かれば、コミュニケーションの送り手(企業や制作者)にとっても実務に役立つと考え、「3」と「4以上」の間に潜む差分に注目した。

  • : Iyengar & Lepper, 2000」

本研究の成果と考察(総括)

なぜ「3」がよく使われるのだろうか?スタディから見えてきたその理由は、「3」という数字そのものに最も説得力があるからではなく、「3」が受け手(生活者)にとっても、コミュニケーションの送り手(企業や制作者)にとっても「扱いやすい数」であるために、よく「3」が用いられるのではないか?ということだ。その扱いやすさとは何か。送り手側に関してはそれは自明だ。理由にしても選択肢にしても、3つ目までは比較的容易に思いつくが、4以上を考えるのは意外に負荷(頭脳的コスト)がかかる。時間も費用もかかる。だから「3つもあれば十分と思いたい」というのが送り手側のインサイトだろう。では、なぜ送り手は「3つもあれば十分」と考えられるのだろうか。そこには、やはり受け手側の納得感といった、ある判断根拠があるはずだ。では実際に、受け手側は「3」をどう捉えているのだろうか。

①諺、故事成句の中でも「3」はよく使われている。

まず、「3がよく使われる」という定説自体を検証したところ、数字を含む諺・故事成句の中では、「1」の次に「3」が多く使われている。

②宗教的モチーフや観光、文芸作品の題名でも「3」が使われている

宗教的モチーフや巡礼参拝を起源とする観光で「3」が使われているものは多い。特に観光案内でよく見られる「日本三景」「三大夜景」などの語彙に関しては「二景」や「四景」というバリエーションは見当たらない。こうした歴史的・文化的背景から、結果として「3は特別」という意識評価が生まれているのではないだろうか。
文芸作品の題名などでも「3」が使われている名作がある。現代の広告やカタログなどで「3」を使うことが多いのは、こうした「3の記憶」が長い時間の中で蓄積されているからではないか。

③“三拍子のリズム感” をもつ「3文字」「3単語」ワードも日本語の語彙でよく目にする

日本語には「3つの文字や単語」をひとかたまりにした語彙がある。その意味性を分析すると※、
(1)“位置関係や全体像”を表現するもの、
(2)“リズム感や順序”を表現するもの
に大別される。(「上中下」「前中後」のように位置関係から順序関係に転用されるケースもある。)
「3拍子」という日本人に好ましいリズム感があるので、そのリズムからこれらの語彙が普及していった可能性もある。

  • 全学連などの3文字略語を除く

④「第三の選択肢」というメッセージは効果が高い

生命保険と洗濯洗剤という、ジャンルの全く異なる二つの商品それぞれに、下図のような架空の広告表現案を起こし、商品ごとに違う被験者に「加入(購入)意向」を聞いた。また、「内向的か外向的か/人付き合いが積極的か消極的か/将来に備えて蓄えるか/ブランドと価格の安さ、どちらを重視するか」など各被験者の性格についての質問にも回答してもらった。

洗濯洗剤と生命保険という違うカテゴリーに共通の傾向として、「第3の洗剤」「第3の保険」という広告表現は、「4」に比べて選ぶ人が約2倍になった。逆に、他の3タイプの表現(◯個の理由、◯ステップ、モデルが◯人)は結果にばらつきがあり、必ずしも「3」が効くとはいえなかった。つまり、「3」という量に関しては評価に個人差があるが、序数としての「3」(三番目の…)には高く反応するといえる(※注)。

  • 序数で示された選択肢が3から4に増えたときに「選択のオーバーロード(選択肢が多すぎると認知に過負荷が かかり評価が下がる)」が急に高まった、というように考えることもできる。コロンビア大学の研究では、試食品の種類 (選択肢)を6から24に増やすと、買い上げ率は10分の1に低下したと報告されている(Iyengar & Lepper, 2000)。

このレポートは早稲田大学渡邊克巳教授、佐々木恭志郎博士(認知心理学)の協力のもと、2017年11月~2018年1月にかけて実施された調査などを元に考察しています。
調査概要、更に詳細なレポートは、行動デザイン研究所のサイトに掲出していますので、是非ご覧ください⇒こちら