松井オフィス代表取締役社⻑、良品計画名誉顧問松井忠三氏、博報堂グループ会社のTBWA\HAKUHODO、クリエイティブディレクター細田高広の講演の後、ファシリテーターとして博報堂ブランドデザインコンサルタント岡田庄生を迎え、パネルディスカッションが行われました。

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写真左から)TBWA\HAKUHODO細田高広、松井オフィス代表取締役社⻑・良品計画名誉顧問松井忠三氏、博報堂ブランドデザイン岡田庄生

「日常的に使える言葉」が力を持つ

岡田 この座談会では3つのテーマについてお話ししていきたいと思います。1つ目は「なぜ、人は動かないのか?」というテーマです。ほとんどの会社には、社訓や行動指針などがあります。しかし、それが完全に実行されているケースは少ないと思います。それはなぜなのか。松井さんの著書には、「根性論で人は変わらない」「性格は変えられないが、行動は変えられる」といった指摘がありますね。

松井 人間とは元来保守的で、これまでと異なることをやることには抵抗感があるのだと思います。変わるために必要なのは意識改革で、そのためには経営層が毎日のように繰り返し必要なことを社員に伝えていかなければなりません。また、その結果として効果を出していくことも重要です。効果が見えないと、人はなかなか納得できないものです。

細田 「動かそう」という試みでは、簡単には人は動かないと考えています。一方で、「新しい景色を見せよう」という試みは比較的うまくいくことが多いように思います。
ひとつ事例をあげましょう。アメリカの小学校で、子供に自発性がないことに悩んでいる先生がいました。そこで、子供たちを「小さな学者さん」と呼ぶようにしたところ、自分たちで自主的に勉強するようになり、自分が学んだことを先生に教えるようになったそうです。これは、「言葉を変えることによって見える景色を変えた」ということなのだと思います。
かっこいい言葉、飾っておきたくなるような言葉ではなく、「日常的に使える言葉」こそが力を持つ。そんな例だと思います。

創造性を外部に求める

岡田 2つ目のテーマは「仕組みだけでなく、ビジョンが必要なのはなぜか?」です。松井さんいかがですか。

松井 1980年代にセゾングループの代表であった堤清二さんは、たいへん進んだ方でした。あの当時から、アドバイザリーボードを設置して、田中一光さん、小池一子さんといった一流のクリエイターに意見を聞いていました。企業が成長していくためには「創造性」が必要ですが、それは仕組みだけではなかなか生まれません。「知恵」は生まれたとしても、企業を違う地平に運んでくれるような創造性はなかなか出てこない。それを外部に求めたということです。ビジョンとは、その創造性から生まれるものだと私は思っています。
経営陣には、仕組みを作り上げていく役割があります。同時に、外部から創造性を招き入れていくことも重要です。その2つが両輪とならなければならないのです。

細田 なぜ?が理解されないと、人は動きません。その点で、ビジョンは長期的に行動の理由になりうると僕は考えています。ビジョンとは企業や組織や商品の「Why」、つまり「なぜそれが必要なのか」を示すもので、「What」や「How」に先立つものです。「MUJI GRAM」を開くと、最初のページで「なぜ」がしっかり説明されていますね。それがあるからこそ、社員の皆さんの行動が喚起されるのだと思います。

断片的な言葉をつなげてストーリーを編んでいく

岡田 3つ目は「仕組みの限界とデザインの役割」です。無印良品は仕組みが9割といわれます。では残りの1割は何なのでしょうか。

松井 繰り返しになりますが、創造性がないと企業はうまくいきません。それが仕組み以外の残りの1割ということだと思います。創造性を企業経営に生かして、画期的なアイデアを生み出すために、デザインをはじめとするクリエイティブの力が必要になる。そういうことなのではないでしょうか。

岡田 細田さんは、そのような創造性を企業に提供する立場ですね。

細田 いろいろな会社とお付き合いをしていると、「いい言葉」にしばしば出会います。社長、事業部長、開発のご担当者などが何気なく言った言葉が非常に重要であったりするわけです。それらの断片的な言葉をつなげて、一つのストーリーにしていくのが僕の役割だと思っています。魅力的な言葉でも、社内から見ていると気が付かない事もあります。だからこそ、私のような外部の人間の役割とは、社会や文化のような大きな視点から、その企業のストーリーを描くことではないかと思っています。

岡田 なるほど、人を動かすには大きな視点の言葉と、日常的に使える言葉の両方が必要なんですね。今日はありがとうございました。

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「動かす言葉」2 前編-良品計画名誉顧問 松井忠三氏が語る「無印良品」復活と改⾰を導いた哲学とは?