今年で20回目を迎えるADFEST 2017「アジア太平洋広告祭」が3月22~25日、パタヤ(タイ)にて開催されました。

3月24日には、博報堂アクティベーション企画局の岡村実玲、博報堂パーセプト(インド)のElvis Sequeira、博報堂インドネシアのDevi Attamimi3名のスピーカーによる博報堂主催セミナーが実施されました。

テーマ:Mother Tongue Creativity
日時:2017年3月24日(金)14:30-15:15
講演者:
岡村 実玲(博報堂 アクティベーション企画局)
Elvis Sequeira(博報堂パーセプト)
Devi Attamimi(博報堂インドネシア)

左から、Elvis Sequeira(博報堂パーセプト)、Devi Attamimi(博報堂インドネシア)、岡村 実玲(博報堂 アクティベーション企画局)

セミナーのテーマは、コミュニケーションにおける最もベーシックなツール、「言語」についての内容。アジアだけでも膨大な数の言語が存在していますが、どれも独自の味わいとルールがあり、文化と密接につながり、我々が生み出すクリエイティビティに大きな影響を与えています。
博報堂グループを代表する3人の登壇者は、インド、インドネシア、日本で使われている言語の特徴を通じて、クリエイティビティの多様な可能性について語りました。

以下、セミナー内容の抜粋。

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1. 母国語はクリエイティビティの源泉だ

言語は心のOS。私たちは自由な発想でアイデアを考えていると信じていますが、言語の影響からは逃げられません。クリエイティビティのアイデアはどれも母国語の影響を強く受けます。文の構造、文法、文のどこに主語と目的語を置くか、全てが私たちの思考に影響を与えます。文法と構文の規則は一見、クリエイティビティの制約になります。しかし、母国語は他の国が簡単には真似できないユニークなアイデアの素晴らしい源ともなり得ます。
そうしたアイデアがどのように生まれるかをもっと理解するために、まずは私たち3人の国の言語の秘密を明らかにしていきましょう。

2. 3つの異なる言語のユニークさ

2-1. バハサ・インドネシア:統一のための平和な言語

Devi(インドネシア):インドネシアには300以上の民族がいて、今も700以上の言語が使われています。インドネシアの国是は「多様性の中の統一」です。統一という役割を担ったバハサ・インドネシア語は、誰もが簡単に理解できる言語でなければいけません。バハサ・インドネシア語には時制がありません。複数形がありません。文法上の性がありません。冠詞がありません。階層がありません。構造がありません。大ざっぱな言語はインドネシア人の考え方を表しています。私たちはおおらかな国民といえるでしょう。

2-2. 日本語:婉曲表現の美しさ

岡村(日本):インドネシア語とは対照的に、日本語には一つの言語しかありません。もちろん地域ごとに異なる方言はありますが、違いはわずかで、基本的には一つの言語が使われています。日本語には二つの基本的特徴があります。結論をすぐに出さないこと、そして、直接的な表現を避けるというものです。日本語の文法も忍耐を要します。日本人は文章の最後まで結論を言いません。日本語が単刀直入でなかったりすぐに結論に行かないのは、言語的な特徴に加え、日本人は行間を読むことを美徳とするからです。それどころか「空気を読む」という言葉もあるくらいです。日本語によるコミュニケーションは聞き手の責任が非常に大きいと言えるでしょう。日本では、コンテクストを理解し会話を円滑に進めるのは、実は聞き手の役割なのです。

2-3. インド:表情や感情、全てで言葉を彩る

Elvis(インド):インドの言語に関して言えば、日本とは対照的です。曖昧さの出る幕は全くありません。理由をご説明しましょう。インドは世界で2番目に英語人口が多い国です。1億2500万人が話しますが、インドの人口の12%です。1532も母国語があるインドは多様性に富み、町で適当に2人の人をつかまえても、彼らが同じ言語を話さない確率は91%にもなります。聞き手に通じないんです。私たちは毎日、話すとき、たくさんの表情や感情、身振り、そして音まで使って言葉を彩ります。コミュニケーションのために身体や手、声まで使います。なぜでしょう?誤解や曖昧さをなくし、言っていることを必ず完全に理解してもらうためです。

3. 言語と広告(クリエイティビティ)

3-1. 日本:空気をつくる広告・空気を読ませる広告

岡村:日本語のコミュニケーションまたは広告について言えば、それは空気をつくり「読んで」もらうことを期待するものとも言えるでしょう。説明や言葉は少なく、場面を読んだり、あるいはもっと踏み込んで、コンテクストの背景すら読む必要があります。私たち日本人は伝えたいことをそのままダイレクトに伝えるのではなく、そのブランドなり製品により関連性を感じられるよう、背景にあるものや気持ちを読んだり感じたりしたくなる空気をつくります。なにかを想像したり、読み取ったりする余白がないと、日本人の心にはなかなか響かないのです。

3-2. インドネシア:わかりやすさとハッピーエンド

Devi:インドネシア人はおおらかな人たちです。そして、とても楽観的です。世界で最も楽観的な国の一つです。日本人とは違い、インドネシア人は深く考えるのが苦手です。なので、あなたが何を言いたいのか、私たちに読み取らせようとしないでください。わかりやすい文脈と表現を好むので、なるべくわかりやすく言ってください。
でも、一般的にインドネシア人は面と向かって人と衝突するのも敬遠します。だから、私たちが前向きに聞きたいと思うことを、私たちに語りかけるようにしてください。ハッピーエンドで終わる物語がオーディエンスの心をつかみます。

3-3. インド:どれだけ足しても、十分すぎることはない

Elvis:インドで広告を制作するときは、みなさんが「たくさん」と思うレベルでもまだ足りません。歌や踊り、詩、音楽、アクセント、キャラクターを使いましょう。もっと、もっと、もっと。ときには全部いっぺんに。ボリウッド(インド映画)のように。多くのオーディエンスをつかむだけでは不十分です。全てのオーディエンス―おじいちゃん、おばあちゃんから孫まで―の心に何かしら引っ掛かることが重要です。デザインの世界ではシンプルで研ぎ澄ました世界観が良しとされますが、インドではいくら足しても決して足しすぎることはありません。

4. まとめ

このセミナーでもおわかりのように、多様な言語、文化、コンテクストが存在します。
いわゆる「グローバルコミュニケーション」という点では、英語がひとつの公用語になっていて、普遍的なインサイトやアイデアを通してメッセージを世界に伝えています。もちろん、それはとても効果的なアプローチです。
しかし、アジアならではのクリエイティビティの追求の仕方もあると思います。私たち自身の言語と文化から生まれるクリエイティビティは私たちの強みにもなります。
母国語のインサイトを理解することは、オーディエンスのインサイトを理解するということです。ある国の母国語とクリエイティビティの特徴が、別の国のマーケットでのアイデアの源やヒントになることもあるでしょう。

Mother Tongue Creativity.
もう一度、母国語をじっくり見つめてみませんか。
あなた自身のクリエイティビティの源泉が見つかるかもしれません。
他の母語と文化も見てみましょう。
新しいアイデアとコミュニケーションの作り方に出会えるかもしれません。

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岡村 実玲
博報堂
アクティベーション企画局 IMCプランナー/アクティベーションプランナー

2008年博報堂入社。入社から10年間、ブランドアクティベーション、およびIMC領域で経験を積み、現在までに自動車、アパレル、化粧品、トイレタリー、飲料および食品など、幅広いクライアントの業務に従事。また日本マーケットのみならず、中国、台湾、およびタイ、ベトナム、インドネシア市場での業務経験を持つ。

Elvis Sequeira
博報堂パーセプト
チーフ・オペレーティング・オフィサー

インドの広告業界でコピーライターとして25年のキャリアと実績を持つ。DDB Mudra、Lowe Lintas、Cheil SW Asia、JWTなどを経て、現在博報堂パーセプトのチーフ・オペレーティング・オフィサーに就任。

Devi Attamimi
博報堂インドネシア
エグゼクティブディレクター・オブ・ストラテジー

インドネシアの広告業界でストラテジック・プランナーとしての17年のキャリアがある。Lowe、TBWA\を経て現職。国内外の広告祭での審査員経験も多数。また、博報堂生活総合研究所アセアンのメンバーでもある。

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