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【インタビュー】デジタル化により進化した生活者発想へ マーケティングのカギは「生活者DMP」

2016.11.24
#生活者データ・ドリブンマーケティング
「広告朝日」の特集【Internet Of Media ~デジタル化するメディア~】で生活者データマネジメントプラットフォーム局の安藤局長がインタビューされました。

「デジタル化は『生活者視点』の意義を浮き彫りにする」。そう語るのは、博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局長と博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンメディアマーケティングセンター長を兼務する安藤元博氏。企業やメディアのデータ活用の現況や、「生活者主導社会」に向けた生活者データ研究について聞いた。

生活者DMPを活用し「背景」をとらえる

──広告の世界にデジタル化の波が押し寄せています。こうした流れをどう見ていますか。

デジタル化の波を広告の世界だけでとらえてしまうと本質を見誤ると思います。コネクテッドカー、フィンテック、ECプラットフォームなどにみられるように、デジタル化は産業のあらゆる面に押し寄せています。そして、そこを行き来する人々の行動データが日々集積され、「今、ここにいる/何をしている」という空間や時間そのものがメディアの性格を帯びるようになっています。同じコンテンツでも、見る側の空間や時間が変われば受け止め方も変わるでしょう。それは、従来のメディアの枠組みだけでは広告ニーズに対応しきれなくなっていることを意味しています。

──企業が自社保有データの整備を進めるなど、広告主のビッグデータを取り巻く事業環境が変わっています。

企業はこれまで、来店履歴やアンケートなどから優良顧客を特定し、その層をめがけて値引きやプロモーションを展開する一方、不特定多数に投網をかけるべく広告を展開してきました。それが今、広告との接触や反応データ、自社サイトのアクセスログ、会員登録情報、リアル店舗やECでの購買履歴などのデータを一元化し、そこからとるべき施策を導き出せるようになった。そして、その結果を検証するというPDCAのサイクルを回すことが可能になっています。このようなデータの活用を可能にするのがDMPで、企業のマーケティング活動にとって重要となっています。ただ、自社データで構築するDMP(プライベートDMP)は、自社にまだ接してない未顧客や未知の生活者の開拓には弱く、市場全体を見て新たなビジネスチャンスをとらえるといったことにも向いていません。そうした中で当社が提案しているのが、「生活者DMP」(図)です。

生活者DMP

──「生活者DMP」とはどのようなものなのでしょうか。

自社のDMPで顧客の属性や自社商品への関心は把握できても、その客が他社商品にも興味をもっているのか、どんなライフスタイルを持ち、どんなコンテクストのもとでその商品に関心を持っているのか、といった「背景」までは把握できません。博報堂は、1981年に生活総合研究所という生活者研究に特化したシンクタンクを設立し、生活者の行動やメディア接触、マインドをとらえ、ナレッジを蓄積してきました。この「生活者発想」を、デジタルデータの活用によって深化させるのが「生活者DMP」です。自社の顧客を知るためのDMPと、広く生活者を知り、働きかけ、需要を創造することを可能にする生活者DMPをかけ合わせることで、顧客育成と新規顧客獲得のサイクルを作る新しいマーケティングが実現できると考えています。

メディアプランニングはマーケティング戦略と一体化

──オーディエンスデータ、とりわけオフライン接点を持つマスメディアのデータやコンテンツの価値を生かすための課題は何でしょうか。

人々の生活の多くはオフラインで成り立っていますが、オンラインとの接点が何かしらあるはずです。例えば新聞記事がオンライン化されれば、誰が何をみているのかといった実態が可視化され、その情報を元にコンテンツの拡充やコミュニケーションの最適化を図ることができる。オフラインとオンラインを分けて考えることは不毛です。むしろ意図的に両者の接点を拡充し、いかそうとするのが重要ではないでしょうか。

──DMPを活用してデジタル広告を最適化する動きが進んでいます。データドリブンなメディアプランニングはどのような影響をもたらすのでしょうか。

これまで企業は、マーケティングによるターゲット選定は精緻(せいち)に行っていても、いざ施策となると習慣などで「これくらいの新聞広告をいれよう」「テレビはこのくらい」などとジャンプしてしまうことが多かったと思います。データはそうした断絶をつなぐことができます。マーケティング戦略で設定したターゲットをそのままいかしてメディアプランニングを実施し、結果をフィードバックして戦略にいかす、という形に変わってきています。言い換えると、マーケティングとメディアプランニングが一体化してきているということで、その傾向は一層強まっていくと思います。

──マーケティングのデジタル化が進む中、広告会社やメディアのビジネスは、どのように変わっていくのでしょうか。

デジタル化は生活者視点の意義を浮き彫りにし、「生活者主導社会」への移行を促します。従来型の送り手都合の固定的な発想を押し付ける時代は終わりました。企業もメディアも自分たちの役割を洗い直す必要があり、その手段が「データ」です。広告会社は、様々なデータを統合活用することにより、生活者の行動、メディア接触、マインドをとらえます。それを使って、企業にむけては生活者一人ひとりに響く情報や施策を、メディアにはオーディエンスの真の価値を示しビジネスにつなげる。それこそが重要な役割であると考えています。

安藤元博(あんどう・もとひろ)
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局長
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンメディアマーケティングセンター長

1988年博報堂入社。以来、主にマーケティングセクションに在籍し、数多くの企業の事業・商品開発、キャンペーン開発、グローバルブランディングに従事。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。著書『マーケティング立国ニッポンへ―デジタル時代、再生のカギはCMO機能』(共著)。

※「ウェブ広告朝日」より転載
(A16-1891/朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)

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