スパイクス・アジア2016セミナーレポート第3弾。
イノベーション、メディア、データマーケティングの分野でそれぞれ活躍する博報堂のスペシャリストが、今年のスパイクスのセミナーの特徴についてレポートいたします。

「スパイクス・アジア 2016から見るアジアのマーケティング・トランスフォーメーション」

淮田哲哉(わいだ てつや)
生活者データマネジメントプラットフォーム局
グローバルデータマーケティンググループ
グループマネージャー

デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プラニング、マネジメント、事業開発、グローバル展開を主に担当。自動車、IT、精密機器、家電、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、組織開発といった企業のマーケティング高度化のサポートを行う。アジア・中国の海外業務にも精通。APACエフィー2016審査員。

◆今年のスパイクスの特徴は?

スパイクスは、カンヌのアジア版という位置づけでカンヌと比べると小規模ですが、見る側にとっては、中国、インド、アセアンからの参加も多く、よりアジアの熱気やアイデアを感じる事ができるのが特徴です。
昨年は、インドを中心としたソーシャルグッド、スタートアップ連携、データ vs クリエイティブの対立構造のテーマが多かったのですが、今年は「よりビジネスや事業視点のマーケティングトランスフォーメーション」にシフトしている印象を受けました。VRやAI、モバイル、イノベーションといった市場を先取りした領域のテーマもカンヌ同様に今年のトレンドだったのですが、いずれも語り口はブランドやビジネス成果を重視しています。私がそのように感じたポイントを2つご紹介します。

◆グローバルマーケティングは、よりローカルリードのマーケティングシフトへ

マッキャン・ワールドグループのチェアマン兼CEOであるHarris Diamond氏のセミナー ”Creativity and Cultural Nuance in an Omni-Platform Marketing World”では、マッキャングループは、グローバル投資とローカルカルチャー重視のマーケティングの2つを強化していくと語っています。
(公式サイト:https://www.spikes.asia/festival-programme/#/creativity-and-cultural-nuance-in-an-omni-platform-marketing-world


(写真)Harris Diamond – Chairman, CEO, McCann Worldgroup ©Spikes Asia

マッキャンでは、グローバルブランドスタディを世界的に行い、その結果によると、英国のEU離脱といった動きにもあるように、ローカルに根付くナショナリズムや音楽、ファッション、家族、文化資産といったことが、ますます重要になっているそうです。

従来のグローバライゼーションは効率化が目的だったが、今はローカル市場へのインパクトが重要。ブランドプロミスはグローバル統一にするが、そのブランド価値とローカルカルチャーとのバランスを取っていく新たなマーケティングのプロセスが必要だと提唱していました。

◆ブランドとエージェンシーの両方で起きているマーケティングトランスフォーメーション

マスターカード・アジアパシフィックのSVP Head of Marketingのサム・アーメッドSam Ahmed氏は(”The Marketing Holy Trinity For The New World: Creativity Technology And Partnerships”)、生活者とブランド価値の意味と、ビジネス成果の両立が可能か?というテーマで、#Powerofone(1人の力)というインドのキャンペーンを紹介。(公式サイト:https://www.spikes.asia/festival-programme/#/the-marketing-holy-trinity-for-the-new-world-creativity-technology-and-partnerships

(写真)Sam Ahmed – SVP Head of Marketing, Mastercard Asia Pacific ©Spikes Asia

このキャンペーンは、インドの独立記念日を、単に国家を賞賛するのではなく、賞賛されるべき社会活動をしている一人一人、つまり、謳われない英雄(Unsung hero)にハイライトすることでインドの成長と独立記念日を祝うというアイデア。

これだけを聞くと、よくあるソーシャルキャンペーンなのですが、実際のアウトプットは、TVや屋外広告といったオフライン施策だけでなく、ソーシャル分析や画像解析、デジタルクリエイティブ、プログラマティックといったデータに基づき、リアルタイムマーケティングを実践したキャンペーンで、利益も15%向上したそうです。

これを実現したのは、マスターカードが2年前に設立したDigital & Ecommerce engineという、Eコマース上のトランザクションを増加させるリアルタイムマーケティングを実行する専門チーム。デジタル広告ではなく、デジタルビジネスに対応するチームだとアーメッド氏は言っています。つまり、担当エージェンシーもこういったデジタルビジネス組織やスピードに対応するケイパビリティがあるということです。

このように、生活者のカルチャーやインサイト、行動を読み解くローカルリードのマーケティングシフトに加えて、国ごとに異なるデータやデジタル環境に適応したマスターカードのようなリアルタイムマーケティングの仕組みこそ、アジア独自の進化を遂げていくトランスフォーメーションと言えるでしょう。今回は紹介できませんでしたが、中国も独自進化の事例が多く、今後のアジアのマーケティング進化から目が離せません。

<スパイクス・アジアとは>
スパイクス・アジアは、カンヌライオンズの地域版フェスティバルとして2009年にスタートし、毎年9月にシンガポールで開催されるアジア地域最大級の広告コミュニケーションフェスティバルです。
2016年は、「Digital Craft部門」と「Music部門」が新設され、全20部門となり、23の国と地域から過去最高の5,132作品の応募がありました。
アジア太平洋地域の広告分野における創造性の発展と、アイデアと人的交流のプラットフォームとして、カンヌライオンズ同様注目を集めています。
また本年度は、カンヌライオンズの受賞数ランキングトップ10に、アジア太平洋地域の国々が3ヶ国がランクインするなど、アジアが躍進を遂げています。

スパイクス・アジア2016 アーカイブ

【スパイクス・アジア Vol.4】セミナーレポート 2 皆川治子―タッチポイントエバンジェリストが「トランプから考えるメディア戦略とアジアの強み」

【スパイクス・アジア Vol.3】セミナーレポート 1 岩嵜博論―イノベーションデザインのスペシャリストが語る「Power of Prototyping(プロトタイピングの力)」

【ニュースリリース】博報堂グループ、スパイクス・アジア2016にてグランプリを受賞。 他金賞5、銀賞3、銅賞12を獲得 ― ヤング・スパイクスでも2位 ―

【スパイクス・アジア Vol.2】今年のスパイクスの受賞の秘訣とは?博報堂DYグループ審査員6名コメント一挙紹介

【スパイクス・アジア Vol.1】博報堂ケトルの木村健太郎が、スパイクス・アジアDigital部門/Mobile部門/Digital Craft部門の審査委員長に。博報堂DYグループから6名が審査員に決定。