2016年9月21から23日まで、スパイクス・アジア2016がシンガポールで開催されました。
Digital部門/Digital Craft部門/Mobile部門の審査委員長を務めた、博報堂ケトル代表取締役共同CEOの木村健太郎他、博報堂DYグループから審査員を務めた6名のコメントが届きました。各部門のグランプリ受賞作品と、受賞の秘訣などを一挙にご紹介いたします。

■Digital部門/Digital Craft部門/Mobile部門 ― 審査委員長

木村 健太郎(きむら けんたろう)
博報堂ケトル代表取締役共同CEO
エグゼクティブクリエイティブディレクター

今は、ほぼ全てのキャンペーンがデジタル施策を含む時代。だからこそ真にデジタル/モバイルドリブンなアイデアを見つけよう。さらに人間性を置き去りにするテクノロジーでなく、僕らの生活をより人間らしくした仕事を探そう。デジタル部門とモバイル部門はこのふたつの方針で審査をしました。

「もしも、めんどくさいことが一瞬で片付いたら、人生はもっとスムーズにいくはず。」デジタル部門のグランプリ「Intelligent Parking Chair」(日産自動車)は、このクルマの機能が僕らの人生にもたらすであろう本質的なベネフィットを、デジタルテクノロジーで「手を打つだけで片付いてしまう会議室の椅子」にしてしまった発明。全審査員が、今回一番嫉妬したアイデアだと語りました。

Digital部門グランプリ

日産自動車「INTELLIGENT PARKING CHAIR」(日本/TBWA\HAKUHODO)
https://www.spikes.asia/winners/2016/digital/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

デジタルクラフト部門は、アイデアやリザルトではなく、純粋にエグゼキューションとエクスペリエンスだけにフォーカスしました。世界中の人が日本のアートワークを自由に楽しめる「Museum in the Cloud」(全日本空輸)は、デジタルイメージもUXも素晴らしく、スパイクス1年目のグランプリにふさわしいという結論になりました。

Digital Craft部門グランプリ

全日本空輸「MUSEUM IN THE CLOUD」(日本/ENJIN)
https://www.spikes.asia/winners/2016/digitalcraft/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

「イライラしてきたら、甘いものを食べた方がいいから、スニッカーズの値段がさがったらいいのに。」モバイル部門のグランプリ「Hungrithm」(Mars)は、こんな妄想をかなえるために、MITと共同開発したアルゴリズムによって、ソーシャル上の怒りに応じて1日に100回以上値段が変わるという画期的なしくみをモバイルで実現したキャンペーンです。
(※Hungerithmはメディア部門でもグランプリを獲得しました)

Mobile部門グランプリ

MARS CHOCOLATE AUSTRALIA「HUNGERITHM」(オーストラリア/CLEMENGER BBDO)
https://www.spikes.asia/winners/2016/mobile/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■Design部門

杉山 ユキ(すぎやま ゆき)
博報堂
アートディレクター

デザイン部門で重要視されたのは、Humankind。
情報があふれかえる世の中で、アウトプットの形態にとらわれず、見る人を惹き付け、心を揺り動かし、行動をおこさせるような、デザインを評価しようという方針のもと審査をしました。

グランプリは、「TOUCHABLE INK」(SAMSUNG)。
視覚障害者のための、点字などが立体的に印刷できるインクです。
どんな家庭用のプリンターも点字印刷機に変えてしまう画期的なアイデア、本当に人の役に立つ商品で、誰にでも使える利便性があり、パッケージのデザインも美しく、総合的にすばらしいという評価につながりました。

Design部門グランプリ

THAI SAMSUNG ELECTRONICS / THAI ASSOCIATION OF THE BLIND「TOUCHABLE INK」(タイ/J. WALTER THOMPSON)
https://www.spikes.asia/winners/2016/design/index.cfm?award=1
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■Direct部門/Promo & Activation部門

細田 高広(ほそだ たかひろ)
TBWA\HAKUHODO
シニアクリエイティブディレクター

Move Business by Moving People. 人を動かすことで、ビジネスを動かす。そんな広告ビジネスの基本を体現するアイデアを賞賛しよう、という大方針を掲げて審査が始まりました。

しかしながら、このたった一行のシンプルな基準をクリアするのがどれだけ大変なことか。新しくて面白い手法ではあるけれど、クライアントビジネスへの影響が小さいもの。反対に、斬新さはないけれどビジネスには貢献しているもの。ほとんどの応募作がどちらかに当てはまってしまうのです。前者を選べば、広告業界の自己満足で終わる。後者を選べば、クリエイティビティを置き去りにした賞になる。議論を尽くして蓋を開けたら、衝撃的な結果が待っていました。

なんと、ゴールドに残ったのは両部門を通じて「McWhopper」(BURGER KING)と「Brewtroleum」(DB BREWERIES)、たった2つの仕事だけ。当然、グランプリもこの2つが分け合うことになりました。「ビールVSバーガー」の年だったと言えるかもしれません。

審査基準が厳しすぎるのでは?との声も、もちろんあがっています。いくつかの応募作の当落については個人的にも不服です。ですが、バーを下げなかったことには満足しています。バーの高さは、目線の高さにつながるはずだから。そしてバーは、高すぎると批判する人よりも、飛びこえたいと思う人のためにあるはずだから。アジアの跳躍を信じる。それが賞に込められたメッセージです。

Direct部門グランプリ

BURGER KING「MCWHOPPER」(ニュージーランド/Y&R)
https://www.spikes.asia/winners/2016/direct/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

Promo & Activation部門グランプリ

DB BREWERIES「BREWTROLEUM」(ニュージーランド/COLENSO BBDO)
https://www.spikes.asia/winners/2016/promo/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■Media部門

中澤 壮吉(なかざわ そうきち)
博報堂DYメディアパートナーズ
データドリブンメディアマーケティングセンター センター長代理

「430ものエントリーの中からベスト・オブ・ベストを選ぶ。我々メディアエージェンシーの人間は簡単に“アイデア”に恋をしがちだけど(笑)、メディア部門として本当に相応しいグランプリを選出しよう」メディア部門の審査は、プレジデントのこんな発言からスタートしました。

審査で特に重視したポイントは、データやテクノロジーの活用によるメディア戦略の進化、購買プロセス全体を通してのROI、スケーラビリティ、そしてブランドにとっての意味。メディアは“スペース”ではなく、アイデアとイノベーションの“プラットフォーム”であるという共通認識のもと議論を尽くしました。

グランプリに輝いた「Hungerithm」(Mars)は、スニッカーズらしい、ちょっとやんちゃな(?)キャンペーンです。ソーシャルメディア上に現れる“怒り”をリアルタイムに計測し、その動きに合わせて販売価格を変動させるというアイデアを、メディア/データ&テクノロジー/流通のコラボレーションによって実現させました。メディアの可能性を示し、様々な業種のすべてのマーケッターをモチベートする“強さ”があるということが栄冠の決め手になったと思います。
(※Hungerithmはモバイル部門でもグランプリを獲得しました)

Media部門グランプリ

MARS CHOCOLATE AUSTRALIA「HUNGERITHM」(オーストラリア/CLEMENGER BBDO)
https://www.spikes.asia/winners/2016/media/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■Outdoor部門/Radio部門

新沢 崇幸(にいざわ たかゆき)
TBWA\HAKUHODO
シニアクリエイティブディレクター

結果から見れば順当。しかし学びがたくさんあった審査でした。

あらゆるものがデジタル化して、PCやスマホのスクリーンに内在しているこの時代に、フィジカルな実際の空間を使って、どれだけヒトの心を動かせるか。がアウトドアの審査基準。その観点では、巨大なスタントも一枚のポスターも同列に扱われます。あらゆるカテゴリーの中でもっとも幅のあるエントリーが揃っているのがアウトドアの特徴。文化背景もアウトプットも千差万別。その中で「心を動かすマグニチュードが高いのはどれか」を探すのが審査員の仕事でした。

一方ラジオは、逆に、全カテゴリーの中で最も手法が限定されています。使えるのは音だけ。比較対象はどうしても古典の名作になってしまいます。どこまで「フレッシュ」なアイデアか、が議論の対象でした。

アウトドアとラジオ。極端に違う2つのカテゴリーの審査でしたが、すごく重要な共通点がありました。それは1日目の審査後、審査員たちとバーに行って夜中まで話していたときのこと。どの国の審査員も口を揃えて嘆いていたのが「コピーライティングの力が低下している・・」。どこかで聞いたような話です。ラジオも、ポスターも、インテグレーションのコンセプトも。アイデアを規定し、輝かせるのにコピーの力は欠かせません。日本でも言われて久しい「コピーの低迷」。その課題は世界共通だと分かったのが、僕にとっては新しい発見でした。

Outdoor部門グランプリ

DB BREWERIES「BREWTROLEUM」(ニュージーランド/COLENSO BBDO)
https://www.spikes.asia/winners/2016/outdoor/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

Radio部門グランプリ

RADIO CITY 91.1 FM「CANDY CLASS」(インド/GREY WORLDWIDE)
https://www.spikes.asia/winners/2016/radio/
(注)動画・音声URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■PR部門

遠藤 祐(えんどう ゆう)
オズマピーアール
エグゼクティブバイスプレジデント

PR部門はキャリア20-30年の8カ国の審査員で構成されました。審査基準は「Perception ChangeからBehavior Changeを超えて、その先に何があるか、そのリザルトにこだわろう」、といったものです。たとえば法改正や社会問題の解決への端緒になる、また合意形成を推し進めたアイデアかどうか、などが議論されました。

グランプリに輝いたのはインドを舞台にしたUnileverの「CHAMKI」。インドの山奥の村では不衛生な環境で乳児の死亡率が高く、手洗いも習慣化されていません。そこで石鹸での手洗いを妊婦に習慣化させるためにはどうするか、という社会実験を試みます。まだ生まれていない子供を映像化し、母親になる女性に「健康なのは、石鹸で手洗いしてくれたからだよ、ありがとう」と語りかける内容でした。まさに妊婦のBehavior Changeそのものを垣間見ることができます。

これは、Unileverが手掛ける‘HELP A CHILD REACH 5’という活動の一部で、この活動が発端となって、国連の定めるSustainable Development Goalsの中に「石鹸での手洗い」が組み込まれるまでに至りました。

グランプリ以外にも優れた作品がたくさんあり、PRの力で、本当に世の中を良い方向に変えられるのだ、という思いを改めて感じた1週間でした。

PR部門グランプリ

UNILEVER (LIFEBUOY)「CHAMKI – THE GIRL FROM THE FUTURE」(シンガポール/MULLENLOWE)
https://www.spikes.asia/winners/2016/pr/
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

スパイクス・アジア2016 アーカイブ

【ニュースリリース】博報堂グループ、スパイクス・アジア2016にてグランプリを受賞。 他金賞5、銀賞3、銅賞12を獲得 ― ヤング・スパイクスでも2位 ―

【スパイクス・アジア Vol.1】博報堂ケトルの木村健太郎が、スパイクス・アジアDigital部門/Mobile部門/Digital Craft部門の審査委員長に。博報堂DYグループから6名が審査員に決定。