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【連載】博報堂生活総研・「常識の変わり目」 vol.6:「過半数が50歳以上」に──2023年のニッポン、一体どうなる?

2014.10.22

2014年10月

 先日(9月15日)の敬老の日、「日本は、65歳以上が全人口の4分の1」になり、「75歳以上は、8人に1人」であると統計値を伝える報道を多く見かけました。高齢化がこのまま進むと、2023年──これから9年後に、日本は「全人口の過半数が50歳以上になる」と予想されています。

その後も、この比率はどんどん高まります。2033年には55%を超え、2060年には6割弱にまで拡大すると予測されています。
「人間五十年」、かの武将 織田信長の言葉があります。戦後間もない1947年の男女別平均寿命は、男性が50.06歳、女性が53.96歳。確かに日本人の寿命はつい最近まで、この言葉通り50年くらいでした。ちなみに、明治や大正時代までさかのぼるとそれは40歳代でした。

それがもう、過半数が50歳以上に。飛躍的な速度で日本人は長生きになったことになります。平均寿命が50歳のころにできた年金制度が現状と合わないのも、仕方ないことかもしれません。

ちなみに、平均寿命が男女とも60歳を超えたのは1951年。70歳を超えたのが1971年。そして昨年2013年、日本人は男女ともに80歳を超える長寿国になりました。

このように高齢化が急激に進むと、社会での主役の座も交代していくのでしょう。私たち(博報堂生活総研)が隔年で実施している「生活定点」調査 で、「若者が主役の世の中だと思う」と答えた割合がどう変わったと思いますか? 1998年の20.4%から、2014年は12.6%と、なんと約8ポイ ントも落ちました。以後も低落傾向にあるとみています。

本当に、高齢者の存在感は大きくなっているのでしょうか。

■30代1人に対し、50代以上の6人が取り囲む……社会に?

 そこで、社会人の中でも働き盛り、伸び盛りと言われる30代に対して、その先輩や上司にあたる50歳以上の人がどれぐらいの比率になるのかを計算してみました。

(イラスト:斉藤重之)

 バブル経済絶頂期である1992年は、30~39歳の人口1700万人弱に対して50歳以上は約3700万人でした。30代1人に対する50歳以上の割合は約2.23人となります。それが2000年には同2.8人に、2014年現在はなんと同3.55人に増えました。当時の30代は上の人数が少なく、今より自由に振る舞っていたのではないでしょうか。

確かに、経済状況がよかったこともあり、(私が社会人になったばかりの)1990年ごろの30代の先輩方は、どなたも本当に元気でした。遊びも仕事も、上の人たちにどんどんかけあって、自分たちの世代のペースでガンガン進めていたと記憶しています。「自分も30代になったら、こんなふうになるんだろうなあ」と私も淡い夢を持っていました。

ところが、そうではありませんでした。その後訪れたバブル経済の崩壊、そして就職氷河期を経て、私が30代になった90年代後半には、下の世代の若年社員が少なくなり、上は団塊世代までとてもたくさんいらっしゃるという状況に。上と下に挟まれた厳しい30代を過ごした記憶が鮮明に焼き付いています。

それでも今の30代と比べれば、私の世代はまだましだったのかもしれません。2014年現在は、これまで以上に50代以上が会社に、社会に、家庭にと、至るところに多く存在する高齢化社会になっています。その数は、今後ますます増えていくのです。参考までに、2030年の30代1人に対する50歳以上の割合は5.09人、2040年は同5.35人、2060年には、なんと同6.44人まで増えます。

ともあれ9年後の2023年、周りの2人のうち1人が50歳以上という日本社会は、一体どんな社会になっているのでしょう。

私の世代はそろそろ50歳になります。同じく今の30代も、やがては50歳以上になります。「50歳以上の人口が多い」ことの大変さを知った世代が、上の世代になると……「理解あるオジサマ(オバサマ)」が今まで以上に増えていくと考えられます。

自分らが若い時に苦労したので「上の人が、若い人に甘くなる社会」に? それとも多数派となった50歳以上が「若い人を圧倒する社会」に?

育ってきた時代環境が大きく違うことや、ネットサービス、ソーシャルサービスなどのおかげで、性別や年代を超えてつながることに抵抗が薄い人がどの世代にもある程度いることを考えると、世代間の軋轢(あつれき)が思いのほか少なく、それぞれの世代が独立独歩という社会へ向かっていくのかもしれません。

◆この連載は、さまざまなデータを独自の視点で分析し「常識の変わり目」を可視化していくコラムです。
「Business Media 誠」にて連載中の博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」を基にしています。

著者プロフィール:博報堂生活総合研究所 主席研究員 吉川昌孝
1965年愛知県生まれ。
1989年博報堂入社。マーケティングプラナーとして得意先企業の市場調査業務、商品開発業務、マーケティング戦略立案業務を担当。
2003年より生活総合研究所客員研究員ならびに博報堂フォーサイトコンサルタントとして得意先企業の未来シナリオ創造ワークショップを担当。
2004年より生活総合研究所。
2009年より現職。
著 書に、「~あふれる情報からアイデアを生み出す~『ものさし』のつくり方」(日 本実業出版社・2012年)、「Information Communication Technologies and Emerging Business Strategies」(IDEA GROUP INC.・共著・2006年)、「亞州未来図2010~4つのシナリオ」(阪急コミュニケーションズ・共著・2003年)がある。

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