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博報堂生活総合研究所、『生活動力2013』を発表 2013年に向けた提言テーマは「総子化 ~そうしか」

2012.11.29
#生活総研

■ 増える中高年チルドレン:親が存命の『成人子供』人口が総人口の約半数に
■ 子供平均年齢、30歳超え:未成年に成人子供を加えた総子供平均年齢は32.8歳
■ 親子60年時代へ:親子共存年数は約60年に、人生の3分の2以上を子供として過ごす時代へ

2012年11月29日

博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、毎年末に翌年以降の生活者動向を予測する「生活動力」を発表しています。今回、2013年に向けて提言するテーマは【総子化 ~そうしか】。進展する少子高齢化と人口減少、日本の人口動態はどの国も経験したことのない未知の領域に入っています。生活総研はこの動きを「子供としての自分」という新しい視点から捉えました。日本は今、全人口に占める比率でも、人生における時間でも「子供」が多数を占め、更にその時間が伸びていく「総子化」の時代を迎えています。この大きなうねりから、日本社会と生活者の未来について考察した内容についてご報告いたします。

※下記の内容はニュースリリースにてまとめてご覧いただけます。
ニュースリリース(PDF)

1.「総子化」の実態 ~時系列マクロデータから~

・増える中高年チルドレン
「子供」が増加。親が存命の「成人子供」は総人口の約半数に。未成年も加えた総「子供」数は8,700万人へ。

「子供」が増えています。それも未成年ではなく、成人であり、かつ自分自身の親が存命である「成人子供」が増加しています。1950年には総人口の29.0%にとどまっていた成人子供の割合は、1965年までに未成年子供人口の割合と逆転、2000年には総人口の約半数を占めるに至りました。2010年の総「子供」数は成人子供と未成年子供で8,700万人へ。特に注目すべきは30代以上の「中高年チルドレン」の割合の増加です。2030年には総人口の約4割を占める見込みです。対して未成年子供人口の割合は一貫して縮小。この大きな流れは変わることなく未来へと続いていきます。

・子供平均年齢、30歳超え
「子供」が高齢化。高齢化と少子化の同時進行で、子供の平均年齢が上昇中。2010年時点で32.8歳。

「子供」が高齢化しています。高齢化と少子化が同時に進行することで、子供の平均年齢は5年に1歳程度のペースで上昇しています。1990年代には20歳台だった子供の平均年齢は、2000年に30歳の大台を超え、2010年には32.8歳になりました。2030年には36.7歳になると予測されています。36.7歳といえば身体的にも精神的にも「大人」であるはずの年齢。日本は今、世の中を支える「大人」が「子供」であるという新しい構造の社会へと突入しつつあります。

・親子60年時代へ
「子供」の高年齢化と、平均余命の伸びとともに、生まれてから親を看取るまでの「親子共存年数」が長期化。

「子供」の高年齢化と、平均余命の伸びとともに、生まれてから親を看取るまでの「親子共存年数」も長期化しています。1955年の親子共存年数は父親45.5年、母親51.9年でしたが、2000年には父親50.7年、母親59.4年となり、親子の共存年数は約60年に達したのです。2030年になってもこの年数は変わりません。生まれてから約60年間、人生の3分の2以上を「子供」として過ごす時代。子供のまま還暦を迎え親に祝福される人や、子供のまま役員や社長になる人さえ珍しくありません。

2.「総子化」が引き起こす3つの生活変化~「子供としての自分」が家族、親子、生き方を変える~

「子供としての自分」を持つ大人が社会の大半を占め、個人の一生でも子供としての時間が長くなる総子化時代。私たちの暮らしには、家族・親子・生き方の3つの変化が起きると考えます。

1:家族の変化=「核家族」から「一族発想」へ
総子化時代には、普段は核家族として分散している個々の子供たちの力を集結させ、“一族”というチーム力で困難かつ不透明な時代を乗り切ろうという「一族発想」が強まると考えられます。

【総産化で進む核家族融合】近居、隣居、同居が進展し、会社勤め・家事・育児・地域交流など、それぞれが機能分担し価値の生産に貢献する「一族の総産化」が進む。リスク分散も見据えながら、核分裂した家族が再び融合を始める。【一族の資産はBS管理】PL(損益計算書)発想だった核家族の家計管理から、個々の家族ではなくみんなが所有する財産を俯瞰的に捉え、長期運用していく「一族資産のBS(貸借対照表)管理」へ。
【三代続けば末代続く】
総子化時代の三代目である孫世代は、父母それぞれの血族、計二族の期待を一手に引き受ける。いっそ二族の融合も起こり得るのではないか。

2:親子の変化=「上下反発」から「水平協働」へ長期化する親子時間により、年齢の上下関係から親と子が解放され、反発しあう対象から、お互いに年を重ねてきた大人として「水平協働」する対象へと変化。親子一緒の消費が活性化するだけでなく、親子で移住や起業などの新展開も考えられます。

【長期親子時間が社会を安定させる】親子がそれぞれを大人として認め合うフラットな関係が生まれ、前世代を否定する傾向が弱まり、社会全体の価値観変化が穏やかに進む。親子消費は、子供中心の消費から、豊かな鑑識眼を持った二人の大人の消費へ。
【親の威(資)を借る中高年チルドレン】
親子二人で起業、留学。お互いの健康と蓄えを基盤に、人生をいつでもリスタートする高齢親子。親子一緒だけでなく、特に子供は親の資金を借りて移住、起業、留学、住宅新築、教育費の補てん…親への甘えの長期化も。
【親孝行、したいときにも“親はいる”】
私たちはこれまであまりに早く巣立とうとしていたのかも。親子60年の時代、親と子の距離の取り方や時間の持ち方はもっと自由に。一度巣立ったあと、帰巣して親の面倒をしっかり見ることこそが、これからの自立かも。

3:生き方の変化=「早く大人に」から「子である自由」へ
昔は「早く一人前に」が親孝行でしたが、今や親は長く元気で健在、生活能力もある。子供の気持ちの中には自然に「子である自由」が生まれ、大人としての自覚を持った上でのアグレッシブな挑戦や冒険をする人が出てくるでしょう。学び方や働き方を中心に、自分の人生を俯瞰的に捉える個人が増えていきます。

【節の戦略】成人、就職、結婚、子供が出来たら親としての自覚…かつては世の中の誰もが大体同じ「節」(節目)の感覚を持っていて、それが人生設計のガイドラインとして機能していた。今は、いつ大人になるか、その「節」は自分で自由に決められる。
【いつでもリスタート】
子供は身軽。親が健在という安心感が、新しいことにチャレンジする余裕を生む。総子化時代は、定年退職者であるというプロフィールと、いつでもリスタートできるというアグレッシブさが決して矛盾しない。
【<青さ>が社会を変えていく】
子供は大人にはない<青さ>を持つ。もっといい世の中にできるはず。「子」としての自意識がもたらすアグレッシブさが、社会のありようの捉え直しに向くとしたら。東日本大震災後、そんな「子」たちが動きはじめている。

3.「総子化時代」のマーケティングチャンス

総子化時代のマーケティングのアプローチは主に二つ。一つは子供のポジティブ面から発想された新しいターゲット設定や消費行動。もう一つは親族のつながりを支援する新しいライフスタイルの実現や生活インフラの整備。一人の「子供」生活者の中にある、一族を守ろうとする保守的な動きと、個を発揮するための挑戦や冒険といった革新的な動き。それらが共存することが、総子化時代を彩る風景になっていくと考えます。

1:子供のポジティブ面から発想した新しいターゲット設定や消費行動の創出

親子共学
学ぶのは子、支援するのは親という図式に異変が。親もまた「子」、新しいことに挑戦したい。親子で一緒に習い事に挑戦する「親子共学」というスタイルが生まれる。自分と子だけでなく、自分と高齢の親との共学も増えるかもしれない。

40代「隙間貴族」
子供時間が長くなると、人生の見積もりが変わる。40代後半の時期は、子育てにも介護にも縛られない自由時間。独身貴族ならぬ「隙間貴族」という新たなセグメントが登場。この時期を充実させる消費や価値の提案は有効。

開業女子
子供の頃から習い事に親しんできた世代は、人に教えられる趣味を持っている人も多い。自宅を教室にすれば、育児や介護中でも両立は容易。人気が出れば、取材や講演の依頼も。書店に自分の本が並ぶかも。

老老起業
息子が定年して退職金を得た時でも、親は元気で資産もある。お互いの資産を元手に、二人で一緒に起業する高齢者親子が出てくるだろう。同じ世代だからこそのアイデアで、高齢都市生活者の課題を次々解決していく。

こども定年
技術畑OBの「モノづくりアトリエ」、開発畑OGの「食育キッチン」。定年後コミュニティが続々立ちあがる。保養所やスポーツ施設、健康診断や介護サービス割引も受けられる「こども定年者」向け制度も充実。

2:親族のつながりを支援する新しいライフスタイルの実現や、生活インフラの整備

一族ハウス
2.5世帯、3世帯、さらには親族も合わせた多世帯での「集住」の動きが活発化。キッチン、洗面台、冷蔵庨、掃除機、家具、パソコン、クルマなど、一族で集住するための新たな機能を備えたプロダクト開発にチャンス。

ノマド育児
自分たちの家だけでなく、それぞれの親の家も育児の現場に。育児の現場がノマド化。各世代の育児に対する考え方や方法のギャップを解消する育児講座や、今日の子供の様子を共有し合うサービスのニーズが高まる。

2世代コンテンツ
高齢親子というダブル世代の共通言語となるコンテンツ開発が進む。かつてのアニメヒーローは「2代目モノ」として復活。週刊少年漫画は老眼鏡ユーザーに対応し、親子コミュニケーションの潤滑剤としてロングセラー化。

100超え親子旅行
旅行はゆっくり滞在型で、子も定年後だから時間にも余裕。60代の親と40代の子どもが乗り込む豪華客船、70代の親と50代の子どもが長期滞在する高級温泉旅館、そんな旅スタイルへの需要が増していく。

『○○の日』コンシェルジュ
親への思いを表す「○○の日」について、相談にのってくれるコンシェルジュがいると嬉しい。「今年のお薦め商品」を示し、日が近づいたら「そろそろですよ」とメールで注意し、保管されている相手先住所へ自動的に「宅配」だ。

※上記の内容はニュースリリースにてまとめてご覧いただけます。
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