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街中で様々な自動販売機が増えている【アジア生活者のリアル Vol.11 : 中国編】

2018.07.27
博報堂生活綜研(上海)は、株式会社博報堂の独資子会社として2012年に上海に設立された、中国の博報堂グループのシンクタンク組織です。日本で蓄積してきた生活者研究のノウハウを生かし、中国における企業のマーケティング活動をサポートしていくと同時に、これからの中国の新しい暮らしのあり方を、中国現地で洞察・提言しています。その活動の一つとして、中国の生活者の今についてレポートいたします。
今回は、博報堂生活綜研(上海) 研究員の尹 子游(イン ズイユー)が、モバイル決済サービス普及を背景に急速に設置が進んだ、上海の様々な「自動販売機」についてお伝えします。

最近、中国の都市に住んでいる人々たちは、街中に様々な自動販売機が増えていることに気づき始めていると思われます。
日本では自動販売機を至るところで見かけますが、実は中国ではつい三、四年前まで自動販売機を見ることはほとんどありませんでした。その理由は、飲料を販売する個人小売店の多さ、機器内の商品と釣銭が容易に持ち去られてしまうといった治安面の問題や、売上回収と商品補充の物流インフラの不足にあると思われます。

しかし、今になって自動販売機が急速に普及し始めました。昔、「中国自動販売機の価値は液晶ディスプレイやパネルを利用する広告枠にすぎない」のような見方もありましたが、今その状況は変わってきています。

背景として、まず店舗賃料と人件費の急激な高騰があります。中国の店舗賃料について、上海を代表例としてみると、2017年の小売り用店舗の平均賃料は1ヶ月56,500円/坪まで上昇しました。
一方、東京の1階店舗の平均相場は26,800 円/坪です。上海の店舗賃料はもはや東京の2倍以上となっています。さらに、人件費も毎年のように上昇しており、2010年時点の上海の最低賃金は月給1120元(20,160円)でしたが、2017年はすでに倍以上の2420元(44,280円)まで上昇しています。

(※店舗賃料等に関する情報はColliers International社「Shanghai Property Market 2017 Review and 2018 Outlook」より引用)

■上海市内の店舗賃料は年々上昇しています。

もう一つの大きな背景は、電子決済サービスの普及であると思われます。中国の自動販売機は「支付宝(アリペイ)」「微信支付(WeChatペイ)」「銀聯決済」を含む、主要な電子決済に対応しており、「支付宝(アリペイ)」などの専用アプリでQRコードを読み込むと、簡単に支払うことができます。このように電子決済を活用することで、強奪や偽札などの犯罪、お釣りの補充などの問題をクリアすることができたと考えられます。

前述の店舗賃料と人件費の高騰の影響により、設置面積が少なく、常駐店員も不要で、管理コストも安い自動販売機の増加は今後も加速し、小売業でもより重要な役割を果たして行くと見込まれます。市場調査・コンサルティングを行うKantar社の予測によりますと、2011年中国市場の自動販売機台数はおよそ1万台でしたが、2015年には15万台まで増加しており、2020年には2015年の台数から更に9倍以上の138万台まで増加すると言われています。

また、自動販売機業界のかつてのメインマーケットは北京・上海・広州のような大都市でしたが、現在その市場は地方都市まで浸透してきています。それに伴い、地域によって生活習慣が大きく異なる中国では、一般的な自動販売機とは異なる、独自の自動販売機が続々と出現しています。

上海のような大都市では、タッチIDや顔認識システムを応用した、「支払い」という行動すら不要なハイテク自動販売機が出現しました。機器内に備えられたカメラが購入者と購入商品を記録し、自動的に「支付宝(アリペイ)」に請求します。一方、地方ではより現地の人々の生活に寄り添ったバラ売り洗剤やたまごパックの自動販売機が人気となっています。このように、機能やサービス内容を新しい技術と融合させながら、生活者のニーズに対応させていくことで、中国の自動販売機は今後も新たな進化を続けていくと考えられます。

静脈認証技術を応用した「Take Go」自動販売機。中国大手インターネット企業が投資している。
■洗剤のバラ売り販売機

尹 子游(イン ズイユー)
博報堂生活綜研(上海) 研究員

中国江蘇省出身 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士卒。
政府機構、日系コンサルティング会社、メーカー研究所を経て、2018年5月博報堂生活綜研(上海)に入社。

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