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日々進化する「デリバリーサービスアプリ」【アジア生活者のリアル Vol.9 : 中国編】

2018.06.20

博報堂生活綜研(上海)は、株式会社博報堂の独資子会社として2012年に上海に設立された、中国の博報堂グループのシンクタンク組織です。日本で蓄積してきた生活者研究のノウハウを生かし、中国における企業のマーケティング活動をサポートしていくと同時に、これからの中国の新しい暮らしのあり方を、中国現地で洞察・提言しています。その活動の一つとして、中国の生活者の今についてレポートします。 今回は、博報堂生活綜研(上海) 主任研究員の包 旭 (ホウ キョク)が、モバイル決済サービス普及が進む上海で、生活者に人気が高まっている「デリバリーのサービス」についてレポートいたします。

近年、スマホ及びモバイル決済サービスの普及によって、「デリバリーサービスアプリ」が人々の生活にとって欠かせない存在となっています。その中で、特に生活者にとって人気なのは、O2O(Online to Offline)フードデリバリーサービスという新しいサービス形態です。サービスの内容として、スマホアプリで注文すると、30分~1時間以内で指定する場所(家やオフィスなど)にお店の料理を届けてくれるサービスです。
2017年のO2Oフードデリバリーサービスの市場規模は2011年から6年間で約10倍に急成長し、2017年に2,046億元まで成長と推測されました。2016年の統計では、飲食業界全体の売上の約4.6%にまで達しました。
本格的な中華や洋食、和食のような主食からお茶やコーヒーなどの軽食・飲み物など、また庶民的な店から高級レストランまで、多様な飲食店の食事をアプリで注文できるようになっています。その影響で、ひとり暮らしの若者や新婚のカップルは自炊する機会が減り、極端な例では一日三食すべてをデリバリーで済ませるという人も増えているそうです。また、飲食店の営業形態にも変化が見られ、出前専門の店も街のあちこちで急速に増えてきました。
今、フードデリバリーサービス市場のメインプレイヤーとして、「餓了吗(アーラマ)」と「美団外売」という2つの主要プラットフォームがあり、その背後には、中国IT業界の巨頭とも言われる「アリババ」と「テンセント」がそれぞれ出資しているという実態があります。まさにフードデリバリーサービス業界は激戦区の一つとなっているとも言えます。

■O2Oフードデリバリーサービス市場(出典:「2017年中国外売発展研究報告」)
■よく街で見かけるデリバリーサービスの配達員(青・黄ジャンパー2社とも大手インターネット関連企業が出資している)

一方、フードデリバリーサービスだけではなく、在宅生活を応援してくれる様々な種類のデリバリーサービスも多く存在しています。

例えば、

・「医療品配達サービス」:24時間対応で、薬を30分以内に自宅まで届けてくれる。
・「料理人出張サービス」:専門の料理人が、食材を持って来て、自宅のキッチンで料理を作ってくれる。
・「ペットレンタルサービス」:寂しさを癒やすために、猫や犬を自宅に連れてきてくれてレンタルできる。
・「スマホ修理出張サービス」:自宅やオフィスに来て、15分間でスマホを修理してくれる。
・「自宅美容サービス」:美容、化粧、ネイルなどを自宅に来て施術してくれる。
などなど…

このような様々なデリバリーサービスの出現によって、生活者の生活内容と満足度が一気に向上している気がします。極端かもしれませんが、家から出なくても、何でもできてしまうような生活環境になりつつあるとも言えます。

■「スマホ修理出張サービス」を利用して、自宅やオフィスでスマホを修理してもらう

電話での注文に慣れている日本と違い、スマホアプリでサービスをオーダーする生活習慣が浸透している中国においては、企業が従来の商品機能、サービス内容を新しいデジタル技術と融合させながら、生活者のニーズの変化に対応させていくことは、新たなビジネスチャンスにつながると理解しています。

アジア生活者のリアル アーカイブ
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/column_type/asia-seikatsusha

包 旭 (ホウ キョク)
中国上海市出身 拓殖大学商学研究所 修士卒

大学院を卒業後、中国へ帰国し、その後博報堂生活綜研(上海)に入社。
モノゴトに対して常に好奇心を働かせ、新しく出来たお店や商品、サービスをすぐに試みることがポリシー。
若い生活者の日常生活の流行りに乗ってみることで自分のモノゴトに対する“童心”をキープ。

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