博報堂DYグループが2008年から続けてきたアスリートイメージ評価調査では、これまで約520人のアスリートのイメージを調査、主にCMキャスティングの際の基礎データとして、さまざまなシーンで活用してきました。今年10周年を迎えるにあたり、複数のイメージ項目で上位の常連となっている女子レスリング選手の吉田沙保里さんに、自身のイメージについて、またレスリングとの向き合い方、これからの夢などについてうかがいました。

「霊長類最強」のベースにあるのは、たくさんの練習を通して身につけてきた心技体の総合力

――吉田沙保里さんは女子レスリング個人の選手として、オリンピックと世界選手権合わせて16連覇の記録を持ち、「霊長類最強」と謳われています。強くあり続けるためにはどんな力が必要だと思いますか?

どのスポーツも同じかもしれませんが、体力、筋力、スピードはもちろん、心技体すべてがバランスよく備わっていないといけないかなと思います。ただ、体力はやればつくし、技も磨けるものですが、心はもっとも鍛えにくい部分。どれだけ練習を積み重ねて技と体を身につけていても、本番で心が折れてしまって本来の力を出し切れなかったらまったく意味がありませんよね。なので、意図的に追い込んだ状態で練習するとか、コーチからの厳しい言葉をしっかり受け止めるとか、やり方はいくらでもあるかと思いますが、精神的な強さを身につけていくことこそ一番大事なんじゃないかなと思っています。

――吉田さんは3歳の頃からお父様の指導でレスリングを始められたわけですが、心の強さも自然と鍛えられていったんでしょうか。

そうですね、父はとても厳しくて、たとえ骨折していても試合に出ないという選択肢がありませんでした。根性は鍛えられたと思います。あと、何よりも自分が負けず嫌いの性格だったんですよね。何をやるにしても、いざ勝負となると「とにかく負けたくない」という気持ちが出てくる。その気持ちでここまで来られたのかなと思います。
競技って、結構性格が出るんですよ。たとえばふだんおっとりした優しい性格の子なら、レスリングをしていても穏やかなプレースタイルになります。私の場合はせっかちというか、短気というか(笑)。いつもせわしない感じなんですが、試合にもついそれが出てしまいますね。

――試合においては、どんな風に「勝ち」を予感されますか。

基本的に相手の見た目で「強そう」「弱そう」などと判断すると大変なことになってしまいます。当たり前ですが、勝てそうと思って組んでみたら相手の強さにびっくりしたとか、その逆もありえる。とにかくレスリングは試合終了の数秒前でも逆転できるので、最後まで何が起こるかわからない競技です。なので、組んだ瞬間に「やりにくいな」とか「力強いな」などは感じますが、試合中に勝敗を予感することはまったくありません。父にも、「審判の手が挙がるまで絶対に気を抜くな」とよく言われていました。

――勝つためには、かなり密に対戦相手の情報を分析されるのでしょうか。

ビデオ担当の方がいて、国内でも海外でも対戦相手の試合の動画を撮影してくれるので、試合前に見て参考にすることもあります。昔はそういうのもないから、当たってみるまで相手のことはわからなかった。それでも勝てるのでいいんですが、情報があるに越したことはないですね。ちなみに食事でも、昔と違っていまは各選手のコンディションに合わせたメニューを栄養士の先生が考えてくれます。ただ、サポートが整っているからといって勝てるかというと、決してそうではない。やっぱりベースにあるのは、たくさんの練習を通して身につけてきた心技体の総合力だと思います。

――吉田さんにとってライバルや仲間はどんな存在ですか?

少し前はいつも決勝で闘ってきた山本聖子選手、松川知華子選手、村田夏南子選手……いまは向田選手や奥野選手など、自分の階級の人は全員ライバル。彼女たちがいなかったら私もここまで自分を奮い立たせることはできなかったし、一緒に練習する仲間がいるから、頑張れる。私はそれほどストイックな性格ではないので、一人だったら絶対あんなにきつい練習は耐えてこられなかったと思います。そういう意味では、ライバルにも仲間にも感謝しかないですね。

2017年「CMで印象に残ったアスリート」堂々1位。今後は「かわいい」イメージを伸ばしたい!

――私たち博報堂DYグループでは、2008年からアスリートイメージ評価調査を行っていて、アスリートの認知、好意度のほか、独自に構築した29項目のイメージについて、一般の方がどう評価しているかを調べています。吉田さんは2011年から「パワフルな」「明るい」「精神的強さを感じる」といった項目で、上位の常連です。

本当ですか、嬉しい!ありがとうございます。

――直近の2017年のデータだと、「パワフルな」「明るい」「精神的強さを感じる」のほかにも、「子供・次世代の育成に熱心である」「存在感がある」などでも高い評価です。ご自分のイメージについて、どんなふうに自己分析されていますか?

(イメージ項目を見ながら)あまり考えたことはないですが、よく周囲に言われるのは「明るい」ですかね。「パワフル」「存在感がある」「リーダーシップ」もそれなりに納得します。「つねにチャレンジ精神」「精神的な強さがある」「食やトレーニングについての意識が高い」、これは絶対あると思いますね。あと「夢や感動を与える」かな。でも格闘技をやっているので、やっぱり「パワフル」というイメージはとても嬉しいです。

――それから、2017年総括特別編として行った調査では、「CMで印象に残った」アスリートとして堂々1位。これは2位の錦織圭さん、3位のイチローさん、4 位の羽生結弦さん、5位の浅田真央さんをおさえての順位です。純粋想起と言って、選択肢から選ぶのではなく、純粋に「CMで活躍したのは誰か?」を考えて、記述していただくという調査方法の結果なんです。全アスリートの中での1位は、さすがという感じですね。

それはすごい。恐縮します。例の乳製品のCMの効果ですよね。以前警備会社のCMにも出させていただきましたが、CMのお話をいただくこと自体がとても嬉しいことなので、演技でもなんでもやりますという姿勢でいるんです(笑)。

――これから伸ばしたいイメージはありますか?

それはもちろん「かわいい」です(笑)。こうして見ると、浅田真央ちゃん、本田真凛ちゃんなど、やっぱりフィギュアスケート選手のイメージは「かわいい」が多いですね。「人を引きつける魅力がある」「親しみやすい」「華やか」……最強じゃないですか。そうですね、改めて今後は「かわいい」を伸ばしていきたいです(笑)。

大切にしている、いつも「夢追人」であること。目下の夢は結婚と出産!?

――吉田さんはコーチとして、博報堂DYスポーツ所属である宮原優、中村倫也も指導していただいています。2人に期待することは何ですか。

2人ともよく頑張っていますよね。ただ、ケガをしてしまうと、こなせないトレーニングメニューもでてきてしまうので、まずはケガをしない体づくりをすることが必要かもしれません。格闘技である以上突発的なケガはもちろんつきものですが、なるべく大きなケガをしないことも、強い選手になる大事な条件かと思います。

――コーチとしての吉田さんはどんなスタイルで指導されるんでしょうか。

教えるのって本当に難しいなと実感しています。技を教えるところまではできても、それ以上の部分で選手を追い込んでいくところが難しい。何より自分自身が練習の辛さをよくわかっているので、どうしても「もういいよ」とか「後は自分で考えてやってね」となってしまうんですね。これからは鬼コーチを目指さないとだめですね。

――とにかく吉田さんはずっと「強い」「霊長類最強」といったイメージが先行していたのですが、今日実際にお会いして、テレビで見るイメージと違ってとても華奢なのに驚きました。

よく言われるんですよ。10人中10人に、「小さいんですね!」って(笑)。あと、意外に思われるかもしれませんが、ジェットコースターも苦手だしお化け屋敷や暗いところもダメ。基本、怖がりです。あとは、意外にシャイです(笑)。

――そうなんですね(笑)。最後に、吉田さんが大事にされている言葉「夢追人」について、その理由を教えてくれますか。

私自身がいつも「夢を追う人」でありたいし、皆さんにもそうであってほしいという願いがあるんです。生きていくうえで、夢や目標は欠かせないものだと思っています。私自身の目下の夢は、やっぱり「結婚、出産」です。あれ、これだめですか?(笑)

――ぜひ叶えてください!本日は楽しいお時間をどうもありがとうございました。

ありがとうございました!

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