前回、テレビとソーシャルメディアからクリスマスに対するソーシャルインサイトを導くということをやってみました。詳細かつ膨大な消費者データがなくてもソーシャルインサイトが探れるということで、PR発想に可能性を感じていただけたでしょうか?

今回からは、メディア分析を通じてソーシャルインサイトを探るPR発想のキモとなる手法をお伝えしていこうと思います。

事実を見るのではなく、反響を見る

PR業界ではメディアの報道内容を分析することを論調分析といいますが、ソーシャルインサイトを発見し、分析結果をマーケティングに活用していくためには、データの見方を多少変えてあげる必要があります。

通常の論調分析においては、「この媒体でこういう記事が出た」「ネット上で個人がこういう発言をした」という露出文脈のポジネガチェックに大きなウェイトが置かれますが、ソーシャルインサイトを導くためには、「媒体や個人がどういうリアクションを示したのか、示していないのか」といった反響の確認をより重視していきます。

というのも、私たちが探し当てたいソーシャルインサイトは、世の中の潜在的な欲求であり、建前とは違う本音の部分になりますから、記事や発言として表に出てきた内容よりも、その裏にある感情や行動原理を詳しく吟味しなければならないからです。
記事内容や発言内容は、発信者それぞれの思惑やスタンスを色濃く反映するものであるため、細かく分析していっても世の中の潜在的な欲求になかなか辿り着くことはできません。

ですから、ソーシャルインサイトを導くためには、記事内容や発言内容といった表に見えている事実を分析対象にするのではなく、「なぜこのネタをメディアや個人が取り上げているのか、取り上げていないのか」という反応や反響を分析していくことになります。
「特定のネタに反応したか、反応していないか」といったニュースや発言の出現傾向には、その時々の世の中の関心事がどこにあったのかを如実に示してくれるからです。

それでは、テレビ、新聞、WEBニュース、ソーシャルメディアの4つのメディアに関して、それぞれのメディア特性と、そこから何を見ていけばよいのかを説明していきましょう。

ソーシャルインサイトはソーシャルメディアだけ見ても発見できない?!

まずはソーシャルメディアの特性を見ていきたいと思います。「ソーシャルインサイトを探すのにソーシャルメディアを分析する」ということは、理にかなっているようですが、実はことはそう簡単ではありません。
というのも、ソーシャルメディアの利用者属性にはかなり偏りがあるからです。


平昌オリンピックの期間中におけるtwitter投稿者の属性(調査概要後述)

これは平昌オリンピックの期間中にtwitterでオリンピック関連の投稿をした人の性別と齢別区分を示したものです。

一見したところ、明らかに若いです。そして男性の方が多い。Twitterだけでソーシャルメディアの傾向全般を語るべきではないですが、利用者の性年齢属性がtwitter以上に偏っていると思われるInstagramやfacebookの存在を考えると、ソーシャルメディアの投稿から見つけた傾向を世の中の声というには、やはり無理があること言わざるを得ません。

また、「特定話題に関する投稿が伸びたか伸びなかったか」ということで投稿の出現傾向を見に行く場合にも、ソーシャルメディアには一つ問題があります。
前回クリスマスの分析の時にも触れましたが、ソーシャルメディアにおける投稿の大部分は、他ユーザーの投稿やwebニュースのリツイートやシェアになっています。
大規模なSNS販促キャンペーンの投下があると、目に見えて関連の投稿が増えてしまうため「密かなトレンドの盛り上がり」を追うことが難しくなってしまいます。

こういった事情もあり、ソーシャルメディアは、他メディアの傾向を分析して生まれた仮設の検証と、さらなる考察目的で、一番最後に確認します。ソーシャルインサイトを導くためには、これが近道です。
ソーシャルメディアは生活者にもっとも近い媒体なので、ソーシャルインサイトを導く際にもっとも重要なデータであることは間違いないですが、決して一番最初に分析してはいけません。大量の情報とノイズを前に、迷子になってしまいます。

映像という特徴があるからこそテレビは時代を映す

では、ソーシャルインサイトを発見するためには、まず、どのメディアの露出傾向を確認していくのがよいのでしょうか?
現在の日本のメディア環境下においては、テレビだと考えます。

テレビの情報はイメージに反して遅いです。事件事故の緊急生中継を除けば、おそらく今回挙げたテレビ、新聞、WEBニュス、ソーシャルメディアの中で、最も情報が遅いと言えると思います。

その理由は、「映像として具体的に見せることのできる取材現場がなければ、放送の中で見せることが難しい」ということと、「視聴率の観点では、既に話題になっているネタの後追い報道が多い」「人気の高いネタは出来るかぎり追い続ける」ということにあります。

裏を返せば、映像として具体的に見せられる程度に浸透しているネタを扱うのがテレビ。放送時に世の中の関心が高いネタを扱うのがテレビ。と言えます。
実はこのテレビの姿勢のおかげで、テレビはソーシャルインサイトを探すために、非常に都合が良いメディアとなります。

具体的には、テレビにおける露出件数や露出時間を比較していきます。
テレビは時間帯によっては視聴者が主婦と高齢者に偏ることも多いため、番組中で語られたコメントなどの露出文脈の分析に走ってしまうと、真のニーズを堀り出しきれないことがあります。
しかし、露出文脈に惑わされず、「どんなネタが取り上げられたのか」ということだけに集中して露出件数や露出時間を見て行けば、世の中の関心がどこにあったかということが見事に浮かび上がってきます。世の中からの反響を確認することができるのです。

まとめると、ソーシャルインサイトを最短距離で導くためには、まず、テレビの露出を分析から始めます。テレビの露出傾向から世の中の反響を拾い、仮説を立てます。
そして、テレビの分析から得られた仮説を、ソーシャルメディアの投稿内容と照らし合わせながら、ソーシャルインサイトを確定させていくのです。

次に、新聞(ビジネス系の雑誌も含む)の見方を説明していきましょう。

新聞の情報は早すぎる

新聞で情報が出ていくタイミングはかなり早いです。スクープが早いのは当然ですが、トレンドの取り上げに関しても早く、ほとんどが、本格的なトレンドになるはるか前に、芽の段階でニュースとして出ています。
世の中の反響・反応を確認したい側からすると、これではちょっとタイミグが早すぎます。
なぜそうなるのでしょうか?

新聞においてネタが記事になるためには、記事内容の裏付けとなる数字や企業・団体の取り組みが必要になるのですが、逆に言うと、数字や取り組み実態があれば記事として出すことが可能です。加えて大手の新聞社では、企業や業界毎に担当記者が決まっていたりします。
「他社がまだ出していない情報、切り口を世の中に提示する」という想いにより、これらの情報がトレンドとして、ものすごく早いタイミングで記事化されることになるのです。

ですが、悪いことばかりではありません。
こうした記事では世の中の関心が次にどこに向かっていくのか、その向かう先を記事の中で、「今後の展望」として予言してくれています。
テレビとソーシャルメディアを使った分析だけでは、未来のソーシャルインサイトまでを予測することはできませんが、新聞はこの部分を「今後の展望」として補完してくれます。
ソーシャルインサイトを探る上では、世の中の反響が今後もまだまだ続くのか、どのような業界やジャンルに伝播していくのか、などに対して大きな示唆を与えてくれます。

最後にWEBニュースの見方をお伝えしようと思います。

WEBニュースは扱いが難しい

大手ニュースプラットフォームの中には、どの記事にどんな読者がアクセスし、どこまで読んだのかというような読者の反応・反響そのものと言えるデータを取得しているところもあるようです。今はまだ難しいですが、近い将来、そうした数字がオープンになれば、ソーシャルインサイトの発見は容易になっていくでしょう。
ですが、現段階ではWEBニュースは扱いが難しいと感じています。
規模も様々なニュースサイトが毎日大量のニュースを配信しているため、ソーシャルメディアと同じくらいピックアップが困難だからです。

現在WEBニュースから世の中の反響を確認できるのは、記事に対するコメント欄になります。
このコメント欄でニュースに対する賛否が極端に偏っていれば、それは世の中の声として受け止めるべきです。
打つべき施策が決まっていれば、似たような話題のニュースのコメント欄を確認し、その打ち手が世の中に受け入れられるのか、拒絶されるのかを予想することが出来ます。

今回は、メディアの露出からソーシャルインサイトを導くための手順を紹介しました。

次回、いよいよソーシャルインサイトをマーケティング戦略に取り込む手法を紹介していきます。

【調査手法】
○調査キーワード:「オリンピック, 五輪, 平昌」
○調査期間:オリンピック開催期間「2018/02/09~2018/02/25」
○調査媒体:【SNS】Twitter
ソーシャルリスニングツール「Boomresarch」にて検索 ※1/10サンプリング抽出

安川 徹(やすかわ・とおる)
PR戦略局

コピーライターとして2003年博報堂入社、2009年からPR戦略局所属。
ソーシャルインサイトを読むことで、課題の見えにくい新規事業やサービスの立ち上げ、定番商品のリバイタライズを行う。
広報、PR、広告、メディアプランなどのコミュニケーション領域だけでなく、販売戦略や商品ライナップ戦略に至るまで、PR発想のマーケティング施策を立案・実施。2004年TCC新人賞、日経BP広告賞受賞。
(PHOTO by 馬場道浩)

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