博報堂生活綜研(上海)は、株式会社博報堂の独資子会社として2012年に上海に設立された、中国の博報堂グループのシンクタンク組織です。日本で蓄積してきた生活者研究のノウハウを生かし、中国における企業のマーケティング活動をサポートしていくと同時に、これからの中国の新しい暮らしのあり方を、中国現地で洞察・提言しています。その活動の一つとして、中国の生活者の今についてレポートします。
今回は、博報堂生活綜研(上海) 主席研究員の王 慧蓉(オウ ケイヨウ)が、中国の春節トレンドについてレポートいたします。

中国では、2月15日から旧正月(春節)が始まり、街中は春節ムードが高まります。
中国の多くの家庭では、春節を迎える準備の一つとして、家の玄関に「春聯(しゅんれん)*」を飾る習慣があります。(*「春聯」(しゅんれん)とは赤い紙に各種の縁起の良い対句を書いたものをいい、家の入口などに貼る、中華圏における春節の風習の一つです。)
「春聯」は対句の一種であり、短歌や俳句のように、良い対句を作るには、かなり言葉のセンスが問われます。本来は自分で創作し、毛筆で書くものですが、今の世の中では、そうしたことをする人はどんどん少なくなってきて、ほとんどの人が市販の既製品を買っているだけです。


写真①:一般家庭の玄関に飾られている「春聯」

文化あるいは儀式とも言える「春聯」という生活上の風習について、実際に守ってやっている人が少なくなってきているということ以外には近年特に変化はないと思っていましたが、先日、「AI春聯」というネットニュースを見て、「春聯」にもデジタル化の影響が表れていると感じました。
中国では、大手検索サイト「百度」が製作して提供している「人工知能春聯」の無料サービス(スマホを使って二次制作が出来るソフト)が巷で話題になっています。利用者が自分の好きな文字(2~4文字)を入力するだけで、AIが自動的に複数の「春聯」の案を作成してくれます。早速やってみましたが、かなりの出来栄えでした。自分のお気に入り「春聯」案をネットで注文して印刷してもらうのもよし、自筆で書くのもよし、デジタルデータをそのまま親戚や友達に送るのもよしと、実に色々な活用方法があります。贈る側も、貰う側も、どちらも楽しめることが「AI春聯」の楽しみとなっています。


写真②:スマホアプリで作成した「AI春聯」  ※百度 人工知能春聯より

一方、「AI春聯」だけではなく、Alipay(中国のアリババグループが提供するモバイル決済)やWechatPay(中国のテンセント社が運営するSNSのWechatのモバイル決済)などの電子決済アプリの普及によって、この1~2年「圧歳銭(お年玉)」の渡し方にも変化が起きています。昔のように、「紅包」(赤い封筒)に現金を入れる必要性がなくなり、また、スマホの「電子紅包」から好きなデザインを自由に選んで、そのまま送金できるようになりました。数年後には、紙の「紅包」さえ見たことのない子供達も出てくるのではないだろうかと一瞬考えました。

写真③:「電子紅包」=電子化お年玉

とは言え、たとえ春節祝いの風習のあり方が変わっても、また「春聯」がデジタル化になっても、中国人にとって春節が家族と一緒に過す大事な祝祭日であることは変わりません。
最後に、このコラムを読んでくださっている皆様へ、「祝新春快楽、万事如意!」新春おめでとうございます!

王 慧蓉(オウ ケイヨウ)
中国上海市出身 上海外国語大学英文学部 学士卒 ロンドン都市大学MBA卒

メーカーのインハウス調査部門、市場調査専門会社を経て博報堂生活綜研(上海)に入社。課題の把握やソリューションの提案などにおいて経験を持つ。中国、日本、イギリスでの在住経験からか、異なる見方で物事を考えることが好き。角度を変え、新しい側面を見つけたときの「アハ」の瞬間を求め、常に脳の体操をし続けている。

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