日本は今、「女性活躍推進」「働き方改革」のまっただ中。その流れを受けて、こそだて家族の働き方、暮らし方も大きく変わりつつあります。しかし、そこはまだまだ過渡期。大小様々なトライ&エラー(という名のバトル?!)を、企業や家庭の中で繰り返しながら、ちょうどいい折り合い所を模索しているところではないでしょうか。
ほどよい時間で、ほどよい仕事量で、ほどよくやりがいもあって、ほどよく効率的にできる仕事。
パパやママが働きながら、ほどよく家事も育児もシェアする家庭。
そんな理想の世界が本当にあるのでしょうか?
そこで、こそだて研では世界に目を向けて、ヒントを探してみることにしました。もちろん国が違えば行政の制度も違う、文化的背景も違う中で、丸ごと真似をすることはできないですが、そこには何かしらの発見、学びがあるハズです。
近所のママ友との井戸端会議にも「へ~、ほ~」はあるのですから!
世界のこそだて家族と井戸端会議。
前回のアメリカ篇に続き、今回は、パリ郊外(Suresnes)在住の、Atsuko Kodama Demoulinさん(以下アツコさん)を取材。
1994年代に1.66まで落ち込んだ少子化率を2010年には2.0以上まで回復、2015年データでも1.92を維持し(※内閣府世界各国の出生率より)少子化対策の成功モデルとして語られることが多いフランスの暮らしやこそだてについて伺いました。

社員の妊娠は、どんな立場の人でも無条件に祝福される

まずは、フランスでどんなこそだて支援があるのかをアツコさんに伺うと、「企業文化によって多少の差はあるかもしれませんが、社員が妊娠すると基本的にどんな立場にいる人であろうと、ほぼ無条件に祝福されます」と、真っ先に出てきたのが、周囲の雰囲気の話でした。さらに、「フランスでは産休後も同じポスト、もしくは同等のポストに戻ることが約束されており、マネージャーは産休中に社員が疎外感を感じないようにコンタクトし、復帰前にはミーティングを行い、復帰しやすい環境を整えるのが一般的」だそうです。国の制度以外にも、妊娠・出産に対する企業の対応や周囲の雰囲気、マネージャーとの関係性も、フランスの出生率を支える一因のようです。

アツコさんが日仏を比較して疑問を感じるのは、日本の公共交通機関でベビーカーが問題になる事。「フランスでは赤ちゃんを連れたお父さんお母さんが肩身の狭い思いをすることはありえない!」との事。それどころか、階段や段差のあるところでは、必ず誰かしらが助けてくれ、誰も気がついてくれなかったときには「ちょっと手伝ってくれない?」と、聞けば、嫌な顔せずみんな手伝ってくれるそうです。

「週35時間労働」を意識した働き方

フランス人は身近な生活に関する法律を把握している人が多いそうです。労働法に関しても、把握していないと自分が損をするので、「週35時間労働」はみなさん意識しているとの事。現実的にはそれ以上働く人や、忙しい時期などもありますが、定時に帰ろうという意識がベースにあり、デパートやお店では閉店時間になるとお客さんに帰ってもらったり、お客さんを置いて販売員がさっさと帰ったりする、なんて事もあるそうです。
子どもが9~10歳くらいまでは、親が学校に送り迎えをしなければならないため、両親の内どちらかが定時で仕事を切り上げて、お迎えに行かなければならない事も、「定時に帰るのが当たり前」という意識に関係しているのかもしれません。

フランス人は仕事でプライベートを犠牲にすることはほぼない

日本人は「急な仕事が入って・・・」と、家族や友人との約束を守れない事がありますが、フランスでは急な仕事でも、友達と会う約束や、子どもの行事への参加など、先約があれば、プライベートの約束を優先するケースがほとんどだそうです。仕事はあくまでも「生活のため」であり、仕事のために生活を犠牲にするという発想がないと言っていいほどだそうです。
まとまった休暇を取るスタイルが一般的で、夏休みは3週間!というような人も結構いるそうです。「夏は機能しない」という前提で、前後のスケジュールを調整するので、そんなに問題にはならないとの事。子ども達が通う学校も、2ヶ月弱ごとにバカンスがあり、夏休みはなんと2ヶ月間!共働きのこそだて世帯は、祖父母の協力なども得ながら子ども達のバカンスを乗り切っているそうです。

日本の夕飯は子ども中心?フランスでは断然夫婦の時間優先です!

お話を伺った中で最も意外だったのが、フランスの子ども達の夕飯について。グルメなイメージがあるフランス人ですが、子どもが未就学児などまだ小さいうちは、子ども達だけ先に簡単に夕飯を食べさせて寝かしつけて、その後に夫婦がゆっくり食事を取る事がよくあるそうです。特に日が長い夏の間は、多くの家庭が、子ども達に簡単な食事を食べさせながら、大人はアペリティフで乾杯!なんていうスタイルも。「簡単に済ませる」という子ども達の食事の内容を具体的に尋ねると、「下の子がまだ離乳食の時期だったら2歳差くらいだったら上の子も下の子と同じようにピュレーで済ませてしまったり、バターを絡めただけのパスタ、ハム、チーズ、キャロットラペ、ブロッコリーなど、良く言えばシンプル、というか相当適当です(笑)」と。セレブな家庭では、子どもが中学生くらいになるまで親と一緒に食事ができない、なんてところもあるようです。「とにかく子どもが喜ぶものを!」と試行錯誤したり、お母さんは子どもと一緒に食事を済ませ、遅く帰ってきたお父さんは一人でご飯など、子どもを中心に回っている傾向にある日本の状況とは真逆とも言えます。それでもフランスの子ども達は親がワインや食事を楽しんでいる姿を見て、「早く仲間入りしたい」という気持ちが芽生え、いずれはグルメへの道を歩んでいくようです。

フランスのこそだてで大変なことは「ストライキ」

「日本と比べてフランスのほうがこそだてはしやすい」とアツコさん。保育園に入るのは日本と同様大変ですが、保育ママやベビーシッターが充実していたり、アパートに住む人たちでベビーシッターをシェアしているケースもあるそうです。在宅勤務も進んでおり、子どもが熱を出した時なども周囲に遠慮することなくお迎えに行き、自宅勤務に切り替えるスタイルも定着。周囲もこそだて家族に暖かい雰囲気があり、、、という環境の中で、唯一困るのが「ストライキ」。「公共交通機関や教員、学童保育に至るまで、とにかくストライキが多いのがフランス。事前に予告はされますが、木曜は学童がない、○○先生がストに参加するため授業がないので自宅待機にしてください、など言われ、都度対応に追われます」とお困りの様子。専業主婦のママが近所の子どもをまとめて5人くらい預かってお昼を食べさせるなど、どうしても仕事の調整がつかない時には、近所のママ友とも助けあって、なんとか乗り切っているそうです。

いかがでしたでしょうか?
子どもを中心に回りがちな日本の家族の夕飯とは全く逆の発想で、「子どもはさっさと寝かせて大人だけの夕飯をゆっくり楽しむ」というスタイルには驚きました。いずれのスタイルでも、子どもは食への興味を深め、育っていくのですね。また、「急な仕事で…」と、以前から決まっていたプライベートの予定よりも「急な仕事」を優先しがちな日本人の考え方は、そろそろ転換期をむかえても良いのかもしれません。

【執筆者】牧 志穂(まき・しほ)
博報堂 PR戦略局コーポレートPR部・こそだて研究所主要研究メンバー

2000年博報堂入社。2004年よりPR職として、多数のマーケティングPRや企業広報活動サポート、トップエグゼクティブ向けのコミュニケーショントレーニングに携わる。2009年に長女、2014年に長男を出産。2回の産休・育休・職場復帰、育児と仕事の両立・小1の壁など、育児を中心とした様々な経験を活かして、こそだて関連ブランドのPRにも多数関わっている。

★バックナンバー★

世界の家族と井戸端会議 幸せな働き方、暮らし方 byこそだて家族研究所 Vol.1:アメリカ篇