第一プラニング局
崔 喜景

博報堂生活総合研究所が1992 年から24年間にわたって隔年で実施しているオリジナル定点観測調査「生活定点」。このたび2016年度調査が加わり、サイトもリニューアルしました。「私の生活定点」は、「生活定点」を見て気づいたこと、発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

みなさん、こんにちは。第一プラニング局の崔 喜景(ちぇ ひぎょん)です。
「生活者発想」に興味を持って博報堂に入社し、ストラテジックプラナーとしてクライアントの日本国内および海外のマーケティング戦略、並びにコミュニケーション戦略立案のお手伝いをしています。

今回みなさんと一緒に考えたいことは、生活定点の時系列データから見えてくる「面白い世の中の変化」と「マーケティングやコミュニケーションのチャンス」についてです。

去年「みらい博2017 好きの未来」のプロジェクトに参加した際、生活総研の研究員が気になる日常の変化やヒントをノートに記入していると知って、「はっ!」としたことがあります。そこから私も、毎日の小さな気づきを忘れないうちにスマートフォンでメモを取るようにしていますが、その中でも最近気になっているのは、メイクのレクチャー動画を配信しているPONYさん(韓国のBeauty YouTuber)です。日本では、「YouTuber」が2017年の新語・流行語大賞にノミネートされており、子供の将来の夢にランクインしたことで話題になりましたが、韓国でも同じくプロのYouTuberが注目されているんです。

「WEBコンテンツは私の先生」が増えている。

生活者にとって身近になった動画。みなさんどの程度利用するようになっているのか、生活定点を使って年代別の変化を追ってみました。動画オンデマンドサイトの台頭により、「動画投稿共有サイトを利用している」人はやや減少していますが、それでも特に20代における動画投稿サイトの利用は7割強と高く、目立っています。一方、「休日雑誌を読んでいない」は6割強と増加傾向にあります。

「雑誌でメイクや料理などのHow-toを学んでいたみんなが徐々にWEBに移っているのでは?」と思い、近い項目を探してみました。2012年からの追加項目なので「サイト・ブログ」で聴取していますが、WEBコンテンツを「先生」として活用している人が特に女性で増えていることが読み取れます。

気軽にパパッと見られる、お料理動画やメイク動画が人気を得ていることを考えると、直接的な聞き方の設問を追加すれば、実態がより明らかになるのではと思います。

「WEBコンテンツは私の先生」な時代に新しいチャンスが隠れている。

冒頭の話に戻りますが、最近PONYさんのことが気になっている理由は、「WEBコンテンツは私の先生」な時代への新しいチャンスが隠れているんじゃないかと思ったからです。

①高リテラシー層向けの商品が改めて注目される

「PONY」さんの動画コンテンツは、お化粧ブラシなど難しくて面倒だと思われていた道具の使い方や化粧法をわかりやすく説明してくれると評価され、YouTubeで約330万のチャンネル登録者、Instagramで約450万のフォロワーを持つほど人気になりました(12月25日現在)。彼女は、日本の女性誌でも取り上げられたこともあります。

PONYさんのようなBeauty YouTuberが支持され、それに注目したメーカーが実況レポート(試供品をプレゼントし、感想を自由に発信してもらう)に起用しPRに活用したり、戦略商品を開発したりしています。その結果、「色んなタイプのブラシで丁寧に」「カラーコレクティング(様々のカラーのベースを利用し、補色効果でお肌のトーンを調整する)」「コントゥアリング(陰影メイク)」といった難しくて多くの人が諦めていたお化粧方法が改めて注目を浴びるようになりました。少し前の韓国では、BBクリームやクッションファンデーションみたいに「これひとつでほら、こんなに簡単!」みたいなメイク方法が人気だったことを考えると、メイクに関する需要が細分化され、関与度もぐっと上がったことが分かります。

動画が先生になる時代。メイクに限らず、今まで高リテラシー層向けだったものも、映像による解説で流入障壁が下がり、再注目されるチャンスがあるのかなと思います。

②国をまたいだ需要が生まれる

アクセス数が増えると、プラットフォーム側はもちろんコンテンツ作成者にも広告収入が入ります。そのため、プラットフォーム側は翻訳機能を追加したり、見る人に合わせてタイトルを翻訳する機能を作ったりしています。また、コンテンツ作成側も自ら英語字幕を入れる人が増えています。

PONYさんのコンテンツも英語の翻訳をつけていますが、韓国生まれのブランドの実況レポートから、韓国国内のインバウンド需要も創出しています。同時に、PONYさんが北米で流行っている「MLBB=My Lip But Better」商品や日本の「つけまつげ」を紹介したことで、海外へ渡航する韓国人旅行客の間で持ち帰るべき人気のお土産にもなっています。

視聴者が全世界にいるので、韓国国内だけではなく海外に対しても需要を刺激できるのです。

生活の小さな変化を咀嚼し、チャンスにアンテナを張りたい。

新しい媒体やプラットフォームが生まれてから、新たな使い方の発明も生活者主導でどんどん生まれてきていると思います。「今すぐ、YouTuberに担当商品をプレゼントしよう!」という話ではなく、小さな変化の意味やポテンシャルに想像を働かせ、目的に合うシーンが訪れたとき出せるアプローチのひとつとしてストックしておきたいなと思います。

【参考】 PONYさんのYouTube Channel (PONY Syndrome)
https://www.youtube.com/channel/UCT-_4GqC-yLY1xtTHhwY0hA

■バックナンバー
第8回 /「答えを探さない」という使い方。
第7回 / 「もう欲しいモノなんてないよね~」って本当か?
第6回 / 茶色く染まる、日本の食卓
第5回 / スマホ時代の「偶然」との出会いかた
第4回 / トランプ勝利―自国第一・内向き志向はアメリカだけ?
第3回 / 家族の誕生日祝い、大躍進!
第2回 / 生活定点から見えてくる、「新しい大人の関係性消費」
第1回 / 何を見ているのか言ってごらんなさい。あなたがどんな人だか言ってみせましょう。

『生活定点』調査とは、1992 年から24年間にわたって隔年で実施している生活総研のオリジナル定点観測調査です。同じ地域(首都圏・阪神圏)、同じ対象者設定(20~69 歳の男女)に向けて、同じ質問を継続して投げ掛け、その回答の変化を時系列で観測しています。 項目数は約 1,500 項目に及び、衣、食、住、健康、遊び、学び、働き、家族、恋愛・結婚、交際、贈答、消費、情報、メディア接触、社会意識、国際化と日本、地球環境など、生活者のありとあらゆる領域を網羅しています。2016年、最新調査結果の公開にあたって「生活定点」特設サイトをリニューアルしました。http://seikatsusoken.jp/teiten/(時系列データのエクセルファイルもダウンロードできます。日本語版と英語版をご用意しています)「生活定点」特設サイトでは「似てるかもグラフ」「グラフの形から見る」「ランキング表」「面グラフ」など、ふだん、あまりデータを扱わない人にも、統計データを楽しんでいただける工夫をしています。ぜひ、ご活用ください。