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ヒット習慣予報 vol.5『人間味ファースト』

2017.12.26
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの栗田です。
2017年最後のコラムを担当します。

今年一年を振り返ると、AIやスマートスピーカー、VRゲーム機などが話題となり、日ごろの業務でもチャットボットやスマートスピーカー、AR/VR関連の案件が増えてきており、デジタルが好きな私にとっては、非常に刺激的な年となりました。

さて、ヒット習慣予報の第5回のテーマは「人間味ファースト」です。人間味ファーストとは、「デジタルが普及していろいろと便利になっていく中で、あえて少し面倒なアナログで人間味のある手法をデジタルに組み込んで楽しむ人が増えている」という気づきからネーミングさせていただきました。今回は、そんな人間味ファーストな事例をいくつかご紹介させていただきます。

みなさんも既にご存じかもしれませんが、最近Instagramで、ポラロイドで撮影した写真をあらためてスマホのカメラで撮影し直して投稿する「Photo in Photo」という手法や、紙に書いた手書きのメッセージを撮影して「#手書きツイート」というハッシュタグと共に投稿をする手法が話題になっています。ちなみに、Instagramでの#手書きツイートの投稿は約48万件にのぼります。(2017年12月時点)

博報堂のTopic Finderというツールを使って、blog/Twitterなどの「#手書きツイート」に関する投稿件数を調べてみても、2017年1月~7月を中心に特に話題になっていたことが伺えます。

出典:Topic Finder

Photo in Photoは、画像調整によって画一的になりがちなスマホ写真に、偶発的で独特の風合いがでるポラロイド写真を加えることで自分らしいオリジナリティのある表現ができることを楽しんでいるようにみえます。また、#手書きツイートは、手書きのメッセージによってデジタルだけでは表現しきれない「その人の強い想い」を込めているように感じます。いずれも、デジタルに「人間味」を加えることで、自分らしさをもっと伝えたいという欲求に向き合っているのかもしれません。

次の事例ですが、ここ数年、リアルな場所を移動して陣地を取り合ったり、キャラクターをゲットしたりというスマホゲームが話題になりました。また、先端テクノロジーを活用し、自分で描いた魚のイラストがデジタルの水槽を泳いだり、自分で描いた昆虫のイラストがデジタルの森の中を動き回ったりという体験ができるアトラクション施設が話題になりました。

スマホゲームの事例もアトラクション施設の事例も、大人がまるで子どものように楽しんでいるのが興味深いと思いました。子どものころに公園で虫取りをしたり、画用紙にお絵かきをしたり、水族館でワクワクしながら魚を眺めていたなつかしい気持ちを取り戻したいのかもしれません。

いくつか事例をご紹介させていただきましたが、共通して言えることは、デジタル体験の中に「人間味」のある手法を組み込むことで「人間のプリミティブ(原始的)な欲求」を満たしているのではないでしょうか。デジタルが普及したからこそ、「デジタルで失いかけた人間味をあらためてデジタルで取り戻す」という体験が話題になっているのかもしれません。

ということで、「人間味ファースト」はこれからヒット習慣になる可能性があり、いろいろなカテゴリーでのビジネスチャンスについて考えてみました。

「人間味ファースト」のビジネスチャンスの例
■ 最新のものに古い味わいを施す(例:電子書籍を古本風にする)。
■ ECのレコメンドに人間味を加える(例:手書きのPOPを添える)。
■ スマートスピーカーに人間味を加える(例:関西弁をしゃべる)。など

広告プランナーの仕事をしていると、先輩から「生活者のプリミティブな感情に訴えるべきだ!」と言われることがありますが、今回のコラムを通じて、その必要性を再認識することができたように思います。デジタルが好きな私みたいなタイプは、手法を重視しがちなところもあるため、「人間のプリミティブな欲求」を忘れずに、多くの人に動いてもらえるような体験づくりをしていけたらなと思います。

栗田 昌平(くりた・しょうへい)
アクティベーション企画局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

インタラクティブプランナーとして、データやテクノロジーを活用したデジタルアクティベーション企画を考える仕事をしています。髪は長め。おなか弱め。谷中生姜とジャニーズが好き。ほぼ毎日キングダムを読んでいます。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

<バックナンバー>
vol.4『平日夜の週末化』
vol.3『朝たんぱく食』
vol.2『カラ―トリップ(色起点の旅行)』
vol.1『木曜日のちょい飲み』

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