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赤坂に、笑顔の花咲かせたい―。3社共同の事業所内保育所「はなさかす保育園」が誕生

2017.12.22
#キャリア
2018年4月、TBSテレビ、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの3社が共同で設立する事業所内保育所「はなさかす保育園」が赤坂に開園します。
(ご参考:http://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/38868
誕生までの道のり、保育園開設にかける思いなどについて、本プロジェクトを推進するTBS 人事労政局 徳光真理さん、本保育園を運営するまちの研究所 代表取締役 松本理寿輝さん、博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 人事局 大迫佐江、博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 川口真輝が語りました。

ダイバーシティ推進の新しい施策として立ち上がった「事業所内保育所」案

徳光:今回の「はなさかす保育園」設立は、私たち3社の「ダイバーシティ推進」の一環としての取り組みです。TBSではこれまでも、女性のキャリア支援を長らく行ってきました。たとえば女性を積極的に採用したり、ワーキングマザー研修を行ったり。子どもが小学4年生までの育児時短勤務制度もありますし、ジョブリターン制度といって、家庭の事情で退職せざるを得なかった社員の再雇用に向けた制度もあります。

大迫:博報堂、博報堂DYメディアパートナーズでは、従来より「粒ぞろいより粒違い」という人材に関するキーワードがあり、ダイバーシティという言葉が注目されるようになる以前から自由でフラットな社風を築いてきました。人事としても、採用、配置、評価、育成あらゆる面で男女の別なく運営していますが、特に近年は新卒採用の女性比率も4割近くを占めるなど全社的に女性社員のボリュームが増えており、そのうち約30%がママ社員です。法定基準を上回る各種制度はもちろんのこと、この10月からは病児保育のサポートや家事代行サポート、外部の専門窓口を設けた育児コンシェルジュ制度も開始。男女の別なく活用できるさまざまな制度を展開しています。

徳光:そんな中、この赤坂という地をご縁にお付き合いのあった3社が、改めて女性の活躍や仕事と家庭の両立支援についての情報交換を始めたのが2015年のこと。そして、具体的な取り組みとして立ち上がったのが「事業所内保育所」設立案です。
実は弊社内では、保育園の話はたびたび浮上していましたが、実現に至りませんでした。実際、2003年頃に取った社内アンケートでは「都心までわざわざ子どもを連れていくのは大変」「地元の保育園に通わせたい」といった意見が多かったんです。でも2015年に改めてアンケートしたところ、育児サポートに対する要望として「社内保育所」が2番目に上がりました。近年の待機児童問題などで状況が変わってきたのだろうと思います。そもそもテレビ局は通勤時間が一定でなかったり土日勤務があったりするので、地域だけでは受け皿を見つけ辛いということもあるんですね。また、近年、新卒採用の半数近くを女性が占めており、仕事と子育ての両立をサポートする体制がますます必要になってきています。

大迫:ここ数年で働き方、育て方の意識は大きく変わりつつありますよね。また2015年4月から、事業所内保育所に関する公的支援制度が手厚くなったというのもある。皆さんの意識の面でも、世の中的にも、関心が高まっていたと感じています。

TBS 人事労政局厚生部 担当部長の徳光真理さん。

モチーフは赤坂の地名の由来になった「茜の花」――ネーミングとロゴに込めた思い

松本:僕は一時博報堂にいたこともあるんですが、不動産ベンチャーなどを経て2010年に保育園運営会社を立ち上げました。以来、都内5カ所に「まちの保育園」「まちのこども園」という園を運営しています。一貫して取り組んでいるのが、まちぐるみで子どもたちを育てるということ。子どもだってダイバーシティの一つだし、子どもたちがダイバーシティのなかで育っていくのはこれからの社会でとても重要です。子どもがいろんな人に出会ったり、支えられたりする場であると同時に、周囲の大人もそこを訪れることで子育てに関わっていけるような場づくりにこだわっています。

川口:実は、松本さんの運営する会社と博報堂ブランド・イノベーションデザイン局と博報堂メディアパートナーズと共同で、2015年2月に事業所内保育所設置・運営の支援を行う“かいしゃほいくえん”プログラムを開発し提供を始めていたのです。そこで今回プレゼンの機会をいただき、我々の考える保育園づくりのコンセプトを説明、お手伝いさせていただくことになりました。

松本:名前については、TBSと博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ3社の中心にある赤坂サカスから「サカス」をいただき、かつ子どもたちの可能性をどんなふうに育てていこうかと考えた時に、彼らに自分なりの花を咲かせてもらいたいという願いをこめて「はなさかす保育園」としました。

川口:ロゴマークについては、赤坂にある意味から考え、アイデアを深めていきました。モチーフは、赤坂の地名の由来にもなったという茜(赤根)の花です。上から見ると人が手をつないでいるように見えます。子ども同士、子どもと親、子どもと社員、子どもと赤坂の人などと、たくさんのつながりが生まれるイメージです。松本さんは自身の運営する園でずっと「子ども」と「まち」のつながりを大事にしているのですが、事業所内保育所であるここでは、そこに「会社や社員」という要素も入れたんです。

はなさかす保育園のロゴマーク。

徳光:それから、五角形の間には少し隙間があって、閉じてないんですよね。子どもはたくさんの大人から刺激を受けて育つものなので、保育園を閉じられた空間にせずに、外に開いていこうという思いをこめています。

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 人事局労務部の大迫佐江。

3社のカルチャーを体現させた、保育園のアイデア

川口:どんな保育園にしていくか、ワークショップを行ったのは2016年8月でしたね。未来を想像して描き、理想的な利用者像をつくり、生みだしたいストーリーや関係性、持つべき価値、さらに目指すビジョンをつくりあげていきました。

2016年のワークショップの様子。各社担当者が集まり、活発な議論を実施した。

徳光:同時進行で、リサーチのために他の地域の保育園をいくつも視察しました。でも保育園は地域性が大きく影響するもので、いくらなるほどと思っても、そのまま持ち込むことはできないんですね。ですから、ここではどういう園にしたいか?をとにかく考えないといけなかった。
地域だけでなく、3社の社風もありますし、社員の求めるものに応える必要もあります。

松本:議論のなかで印象的だったのは、「自分たちのカルチャーが表現できる保育園って何だろう?」ということ。そこでわかったのが、TBSにも博報堂、博報堂DYメディアパートナーズにも共通しているのが、人でつながっている会社だということです。どちらも人とのつながりに積極的な会社だし、何かをつくりだすための好奇心、創造性が強い会社でもある。そういう「らしさ」をこめられるといいね、という話をしましたね。

大迫:具体的なアイデアとして出たのが、たとえばTBSのアナウンサーの方に読み聞かせをしていただくとか、制作の方に子どもたちと一緒に工作をしてもらうとか……弊社にもクリエイティブ部門があるので、いろんな展開が考えられると思うんです。

松本:いずれにしても重要なのは、こうした取り組みが一方的ではなくて、つねに相互的であることだと考えています。子どもにも、社員にも、地域の人にもいい刺激、いい作用になる場を目指していきたいと思います。
ある調査によると、子どものクリエイティビティって、幼稚園児だと98%、小学生は32%、中学生が10%と、残念ながら教育を受けるにしたがってどんどん低下していくんだそうです。小さな子どもと触れ合うことで、そういうクリエイティビティの刺激を大人もきっと受けられると思うんですよね。

川口:確かにそうですよね。会社って多様な人が行き交っているようでいて、実は一定の年齢層の人としか接していないのが事実です。子どもの存在によって社員の発想力や社会の見方も変わるかもしれません。
別に親と子だけに閉じられた場所ではない。子育て経験の有無にかかわらず、多様な価値の人が関われる場所にするためにも、社員全体が何かしらメリット、魅力を感じられるような場にできればと思います。

まちの研究所株式会社 代表取締役 松本理寿輝さん。

職場と近いからこその、空間づくりのこだわり

松本:保育園なので、まず子どもが安心して過ごせる場所というのが第一。でも閉じてしまうのではなくて、セミパブリックなスペースとして、社員も入れて、地域の人たちと交流もできるような空間設計を考えています。

川口:空間は、大きくは保育室ゾーンとセミパブリックなゾーンに分かれています。保育のゾーンは子どもたちが安心して過ごせるよう、ナチュラルで優しい設えです。セミパブリックなゾーンは、少しだけシックなトーンで表情を変えています。一つには、社員や地域の人も含めた大人にも開かれた場にするため。もう一つは、仕事を終えたママやパパが一旦スイッチの切り替えをできるように。というのも、会社から慌てて迎えに行ったはいいけれど、仕事モードのままひきつった顔で子どもに接してしまうのが嫌だという悩みが結構あるんです。僕自身もそうですから、よくわかる(笑)。ですから、少しだけリセットできるような空間を設けました。

はなさかす保育園のイメージパース。

大迫:それは職場と保育園が近いからこそ必要なことですよね。

川口:はい。それから、オフィス街の中で目立ちすぎず、でも存在感もつくりたかったので、白い茜の模様を窓にデザインしました。赤坂の町で、子どもたちがいるそこに、もう一度茜の花が咲くというストーリーをつくりたかったんです。

博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局の川口真輝。保育園のコンセプト開発やデザインディレクションなどを進める。

仕事も育児も地域への貢献も。「アンド」の発想で、すべてによい効果を

徳光:都心に保育園をつくるということで、場所の選定には大変苦労しましたが、地域の方の理解を得てプロジェクトを進めることができています。これには本当に感謝しかありません。そういう意味でも、保育園を通じて長きにわたって地域に恩返しをしていけるといいなと思っています。
ここは企業主導型保育所として国から助成を受けることが決まっています。企業主導型は、保育について一定の水準を守りながら、入園者の選定や開園時間など運営のかなりの部分を企業が独自に決めることができ、これからますますその存在感を増していくものだと思います。そのシンボル的な存在にできるよう、新しいことをやっていけたらと思いますね。

大迫:弊社としては、現在育児休業中の制度はとても手厚いのですが、これからは復職後のサポートにもより一層投資していかなくてはなりません。女性の切れ目のないキャリアデザインや、本人たちのモチベーション維持のためにも、セーフティネットは必要です。待機児童の問題で自分のキャリアプランを変更せざるを得ない女性が多いなか、少しでもそのセーフティネットとして、ここが彼女たちの選択肢の一つになれればと思います。

川口:開園することがゴールではないですからね。これから、社員や地域の方の声も聞いていきながら、育てていかなくてはなりません。企業主導型だからこそやっていきたいことですね。

松本:はなさかす保育園の価値は、ここで子育てと働くことの距離が相当縮まるということにもあると感じています。子どもの領域を大事にしつつ、働くお父さん、お母さんの環境づくりのことも考えている。会社全体、地域全体に貢献していくことができるのではないかと思います。少し前だと、仕事か育児か、という二択問題にされていたかもしれませんが、ここでは「アンド」の発想ができる。仕事も育児も、働く環境も地域も、すべてによい影響が波及するようなものにできるといいなと思います。

<終>

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