現在博報堂の国内グループ会社は50社を超えます。本連載では、多種多様な専門性と強みを誇る各社に直接おもむき、キーパーソンを直撃。それぞれの事業の特長や会社の魅力、博報堂グループの一員としての今後の展望などについて伺っていきます。

第9回は、1965年設立の、マーケティングリサーチカンパニーの東京サーベイ・リサーチ(TSR)をご紹介します。平田智一執行役員リサーチソリューション本部長と、渡部彰博リサーチソリューション本部営業開発部グループマネージャーにお話を伺いました。

生活者理解に基づくリサーチとデータ解析――いま求められるのは統合的な分析


(写真左から)渡部彰博リサーチソリューション本部営業開発部グループマネージャー、平田智一執行役員リサーチソリューション本部長

平田
当社は設立以来およそ50年、時代の変化に対応しながら、クライアントの多様なニーズに応えてきました。訪問調査、集合調査、来店客調査など、全国の調査員をハンドリングして行う調査では一日の長があると思いますし、インターネット調査やデータ解析でも柔軟に対応できる点は強みかなと思っています。
最近ではデータドリブン・マーケティングが盛んになり、POSデータやアクセスログといったアクチュアルデータを解析する仕事もかなり増えています。2008年に博報堂グループの一員となって以降、マーケティングの“デジタルシフト”にいち早く取り組んできたことが、今につながっているように思います。

渡部
デジタル広告のROI(投資利益率)が可視化されるようになったことで、クライアントのマーケティング活動の成果に対する意識が高まってきたと思います。デジタル広告では成果がクリアに見える一方で、マス広告に関しては従来の測定方法に留まっているケースもまだまだ多かったのですが、「統合的にどのマーケティング施策が有効だったのか」というテーマを頻繁に聞くようになりました。そこで我々は、各マーケティング施策の効果がどれほどあったのかを、アクチュアルデータの解析やリサーチを複合的に用いて明らかにすることで、より良いメディアの配分やクリエイティブの方向性、商品開発で重視すべきポイントなどといった示唆を提供し、クライアントのマーケティング戦略構築に役立てていただくということも行っています。

平田
最近になって、データ解析をやってみた方から「数式はできたが、どう読み解いたらいいのかわからなかった」という声をよく聞くようになりましたね。我々はリサーチャーとして生活者サイドに立ちながら、生活者がどう思っているか、感じているかを説明付けできるような解析をしますし、アンケートなどで集めた生活者の実際の「声」とデータ解析結果を掛け合わせて、クライアントにとってわかりやすい言葉に落としていきます。こういった統合的な分析は、我々の強みの一つだと考えています。

やみくもにデータ解析を追いかけるのではなく、意味のある分析を

平田
長いリサーチ業界の歴史の中では、アンケートを集める難しさというのがあって、「いかに正しい集め方をするか」が課題とされてきました。しかし昨今は、収集したアンケートデータの他にも購買データや行動データなど使えるデータが沢山あって、それらをどう読み解くかが求められていると思うんですね。つまり「より正しい情報」ではなくて、「より意味のある情報」が求められている。マーケティングから統計解析まで幅広く、そして部分的には深く分かってないとできないなというのが実感ですね。

渡部
データドリブンの領域で求められるスキルセットは、データベースやプログラミング言語を扱うITスキル、数学やデータ分析に関わる統計解析スキル、価値ある分析をするためのビジネススキルの3つだと言われています。我々はこれまで通りマーケティングやリサーチに軸足を置きながら、これらのスキルをバランス良く身に付けていくことで一歩進んだ価値を提供していきたいと考えています。
ただし超テクニカルな解析は専門性の高いデータ分析会社の方が得意だと思いますし、そもそもクライアントから求められるケースもほとんど無いので、我々は「何のためにデータ分析をするのか?」という目的や活用を議論するフェーズを重視していこうと考えています。データが簡易に取れてしまうが故に、何か発見できるはずとデータ基点で分析を始めると、目的を見失って活用に繋がりにくくなってしまうということもありますし。

平田
そういう意味でも、ビジネスやマーケティングの課題や戦略をきちんと理解した上でデータ分析の方向性を策定し、コンセンサスをとりながら進めていくことが重要になってきていると思います。やみくもに複雑なデータ分析をするのでなく、わかりやすく、かつ活用に繋がる分析を追求していければと。

TSRが見据えるこれからのマーケティングリサーチ

渡部
最近、クライアントが本格的にマーケティング戦略全体にデジタル広告を活用するようになってきた結果、ただ単に「売上にどれだけ効いたか?」だけではなく「ブランディングにどれだけ寄与できたのか?」が問われるようになってきています。そうなるとデジタル広告における従来のKPI指標――たとえばCVRやCPA・ROAS等だけでは成果が測れず、生活者の意識変化に関するリサーチデータも必要になってきます。
こういったケースに限らずアクチュアルデータと生活者意識データをうまく掛け合わせて統合的に分析することで価値の出せる領域が拡大してきていて、それこそが今リサーチ会社である僕らに求められていることなのかなと考えています。

平田
世の中にデータがあふれた結果、実測データだけではわからない、リサーチしなければわからない領域が再認識されてきたんだと思います。そういった意味では、求められる領域が変化しつつも、リサーチの重要性や意義が拡張しているのではないかと思っています。
そういうリサーチ業界全体が過渡期にある中で、博報堂グループの東京サーベイ・リサーチとして、どう進化していけるのかを常に考えていきたいと思っています。

渡部
グローバルでのデータドリブン事業においても、当社は現地のリサーチ会社に対するナレッジや調整力を活かし、海外の調査会社をピックアップ、連携しています。たとえばアセアン地域などの場合は、まだネットが普及していなかったりして、一つのパネルだけだと対象者が集めきれなかったりする。そういう場合は、いくつかの選択肢――ネットだけではなくて、従来型のフィールドワーク的調査を組み合わせるなど――から最適な方法を取捨選択することによって、最適なリサーチソリューションを提供することができます。
これからも、データドリブンとマーケティングリサーチの掛け合わせを武器に、クライアントに対してより良いマーケティングを実現するための重要なパートナーとして、当社独自の価値を出していけたらと考えています。

平田
当たり前の話ですが、当社の価値の源泉は「人」なので、これまでのリサーチャーとしての強みに加えて、時代の変化に対応できる能力をどう身に付けていくのか。そういう人材をどう育てていくのかということがとても大事だと思うんですね。
社員の学びということで最近の社内の取り組みをご紹介すると、TSRアワードという社内イベントを始めました。中身は成功事例の共有ですが、初回は34件のエントリーの中から5件、社員全員の前でプレゼンしてもらって、全員投票で入賞を決めました。こういうイベントは初めてだったこともあり、とても盛り上がりました。
また企画書のスキルアップのためのワークショップも行っています。実際にあったオリエンをもとにお題を作り、チームリーダークラスの社員に自分の力だけで企画書を作り上げてもらうのですが、それぞれが色んなスキルを持っているので、いい共有の場になっているようです。
社員一人ひとりがレベルアップすることで、クライアントの要望に高いレベルで応えていければいいなと思っています。

会社概要
社 名:株式会社東京サーベイ・リサーチ
設 立:1965年6月
所 在 地:東京都中央区日本橋小網町6-1 山万ビル
代 表 者:代表取締役社長 渋谷 利行
従業員数:117名
事業内容:市場調査・分析及びコンサルティング業務

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