深谷 信介

スマート×都市デザイン研究所長 / 博報堂ブランドデザイン副代表

※今回は予定を変更して、「からむし しょうわ かすみそう」をお届けします。

<写真1|昭和村の風景>

「ここに来よう!と思わないと、来られないところなんです。あっ道を間違えて訪ねてくる、そんな人もいますね。道を1本間違えると、ここに出るんです」
道の駅の女性駅長にお会いするのは、初めて。お約束の時間より30分以上も早く着いてしまったのに、お待ちしてました〜と気さくに応対してくださる、ここは昭和です。


<写真2|道の駅>

「そうなんですよ、まだ行ったことがないんです」
地域のおしごとをしつつも、まだまだ行ったことがない場所がたくさんあります。
日本全国とは言わないまでも、なるべく多くのところを訪れてみたい。そんな気持ちから、新上陸エリアとなる関係者に声をかけてもらえると、思わず「あっ行きます!」と応えてしまうわたしがいます。

「世界で3番目のダリコレクションの美術館もありますし。ご案内しますよ、隅々まで。」
「いつにしましょう〜? 2・3ヶ月先なら確実に・・・」
「では7月ということで(笑)」
今回は、なんとあの江津(トコトコッ#4 参照ください)と雲の上のたいせつな同級生が縁をつないでくれた凸凹3名チームで、いつもの珍道中です。

17も市町村がある、ともかくひろ〜〜〜い会津地区。
クルマで走っても走っても、まだまだ見渡す限り真っ平ら。もはや盆地の枠を超えて、大平野・大平原に見えるこの地は、間違いなく自然の恵みが豊かなんだろうな〜と実感されます。

<写真3|会津の風景>

どうせ訪れるなら奥の奥まで!
「じゃあ行ってみますか? ソースカツ丼もありますし」
「行きます行きます、ぜったい行きます!」
と言うことで、平野の外れの山奥に深く深く入っていくことになりました。

昭和に着いたのは、それから1〜2時間経ってからでしょうか? 深い山あいをクルマで抜けていくたびに、先人たちの凄さ・素晴らしさに敬意を表さずにはいられません。この険しい山あいを何日も何日も間違えなく歩いて道をつくり、この地に居を構え、森をかき分け、地面をならし、田畑を興し、耕し、くらしをつくってきたんです。

「2つの村が合併するときに、なかなか名前が決まらず、そのとき新しい年号になったばかりということもあって、未来を見据えて昭和2年に昭和村っていう村の名前になったんですよ」
へ〜っ、昭和って奥会津にまだあるんだ、知らなかったな〜。
昭和と名乗るまちは、昭和の時代にいくつかあったみたいだけれど、平成の大合併でなくなったところもあったな。

冬になると、めっぽう雪が降るこの昭和村。農閑期のてしごととしてからむし織が盛んに行われていて、夏に収穫される繊維は新潟に出荷されていたんだそうです。無知なわたしは、興味深々。からむし(苧)は全国どこでも育つ品種だそうで、ここ昭和村でもそこここに生育しているものでした。それを毎年毎冬、途切れることなく織続けて来たのは、日本広しといえども、ここ昭和村だけ。
ずっと続ける。しかもすべて自らの手で。
山深いまちの人たちの、こだわりと気概が伝わってきます。

<写真4|からむしたち>

この道の駅は、からむしに関する工芸博物館も併設されていて体験もできる素敵な施設になっています。敷地内には、全国各地のからむしが育っていて、あっ、けっこう違うんだ、個性があるんだ〜、なんてこともわかります。地に足のついた体験型施設って感じです。

「わたし、おり姫なんです!」
道の駅駅長がお話を続けてくれます。
「んっ??」
おっ、なんとタイムリーな、今月は七夕でした。そうすると、わたしはひこ星だったのか? なんて勝手に思い浮かべながら、お話を伺います。

<写真5|おり姫とからむし>

いまから20数年前、地元の大切なまちしごと、からむし織の後継者不足に悩んでいた昭和村。思い切って、そとからその後継者を募ることにしました。
からむしを織るしごとは、ここ昭和村では女性のしごと。繊細さが要求される織のしごとは手先の器用で根気よく続けられる女性ならではのおしごと。このしごとに興味関心を示して、10名の女性が第1期生として昭和村に移ってきました。からむし織はほんとうに熟練の必要なおしごと。糸の太さや均一さは、それぞれ何をつくるか? 何を織るか? によって決まってきます。少し太くしたり、糸を均一にしたり、すこし変化をもたらしたり・・・。すべてからむし織のおり姫たちの、手先1つできまる。熟練の技が、すばらしい反物や商品を生み出すのです。
加えてここ昭和村は豪雪地帯の1つ、冬になると主要幹線道路の1つは閉鎖されてしまい、大きな街に行くには大回りしていかないとたどりつけません。
厳しい暮らしに、志なかばでこの地を離れるおり姫候補生もいたそうです。

そんな、外からきて村に残ったおり姫は現在で約30名、地元のおばあちゃんおり姫から日々教わりながら、そのてしごとを受け継いでいます。
「旦那さん候補が足りなくなっちゃったんですよ〜」
女性駅長は、村の人との素敵な出会いもあり、こちらに居を構えて20数年、お子様にも恵まれたそうなのですが、近年の人口減少・若者流出はこのまちにとっても大きな課題で、お嫁さん候補はたくさんいるのに、旦那さん候補がいないという、ビックリ逆転の状態になっているんだそうです。
へ〜っ、すごいな。こんな話は初めて伺いました。

平成の時代、からむし織日本一の昭和村。かすみ草栽培でも日本一なんだそうです。細かくわかれたたくさんの枝先にふわふわとして小さなかわいらしい白い花をさかせるかすみ草。一面春霧のように見えますよね。

<写真6|かすみ草>

清らかな心、無垢の愛、親切、感謝、しあわせ
そんな花言葉を持つ、フラワーアレンジの名脇役かすみ草がそこここに咲くまち。
そこに渡来した、たくさんのおり姫たち。
「手をかけるんです。手間じゃないんです」
ここにはたしかに昭和のステキがきちんと残っている、そんな想いが溢れてきました。

あっ、ソースカツ丼ムチャクチャ美味しかったですよ。


<写真7|ソースカツ丼完食>

次回は、(今度こそ)おかみさん です。

にっぽんトコトコッ
トコトコカウンター ただいま155 トコトコッ

道の駅 からむし織の里しょうわ
http://www.okuaizu.net/spot/974/
福島県大沼郡昭和村
http://www.vill.showa.fukushima.jp/

*写真1と6は、道の駅からむし織の里しょうわさまよりご提供頂きました。

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