2017年6月17から24日まで、 カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下:カンヌライオンズ)がフランス・カンヌにて開催され、博報堂DYグループの三浦竜郎、佐藤カズー、鈴木智也、大木秀晃、中澤壮吉の5名が審査員を務めました。

以下、5名が審査員を務めた各部門のグランプリ受賞作品と受賞の秘訣や、審査員ならではの視点をご紹介します。

■モバイル部門

三浦 竜郎(みうら たつろう)

博報堂 統合プラニング局
クリエイティブディレクター

モバイル部門では、HUNGERITHMLIKE MY ADDICTIONなど、モバイルというプラットフォームを一段階上のレベルへと引き上げる表現や、GOOGLE HOME OF THE WHOPPERKISS THE KREMLINなど、プラットフォームで誰も試していないことに勇敢に挑戦した表現が評価されました。

そんな数々の強い表現を乗り越えてグランプリを受賞したTHE FAMILY WAYは、そもそもプラットフォームがまったく予測しなかった「精子を撮影する」という技術を新しいプロダクトにするというアイデアが極めてユニークで、不妊とジェンダーロールという問題に新たなカンバセーションを生み出した点がとても勇敢であると評価されました。

審査員仲間たちは、そんな「予想外で勇敢」なクリエイティブが、これからも日本から飛び出してくるのを待っていると言っていました。期待に応えたいですね。

モバイル部門グランプリ

リクルートライフタイル「THE FAMILY WAY」(DENTSU Y&R・日本)
http://player.canneslions.com/index.html#/works?category=mobile&entry=828011&festival=CL

■プロダクトデザイン部門

佐藤 カズー(さとう かずー)

TBWA\HAKUHODO
チーフクリエイティブオフィサー

建築家、プロダクトデザイナー、リサーチャー、エンジニア、大学教授といった審査メンバーの中にエージェンシー出身は私一人。アワードゲーム的な側面は全くなく、皆純粋に素晴らしい作品を見つけようという思いで議論を重ねました。作品に疑問点があれば即座にリサーチし徹底的に話し合い、またプロダクトのファンクションに不安を感じたらパーツを分解までしてまでして構造を分析するなど、極めてプロフェッショナル、そして公正な審査であったと思います。

受賞した作品とそうでないものを隔てた大きなポイントは、そのプロダクトの社会における存在意義にあったように思えます。ただフォームが美しいだけのトラディショナルな作品は影を潜め、社会を変えるようなインパクトを持ったプロダクト、そしてその作品が持つスケーラビリティーが問われました。

プロダクトデザイン部門グランプリ

TIGO-UNE「PAYPHONE BANK」(GREY・コロンビア)
http://player.canneslions.com/index.html#/works?awards=Grand%20Prix&category=product-design&entry=834322&festival=CL
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■エンターテインメント部門

鈴木 智也(すずき ともや)

STORIES, LLC. / STORIES INTERNATIONAL, INC.
CEO

新設エンターテインメント部門のキーワードは、「オーディエンスファースト」。
マーケティング上のコンシューマーターゲットを、一旦エンターテインメントの「オーディエンス=観客」と捉え直し、オーディエンスを第一に考えたプロジェクトになっているかが大切なポイントです。観客が時間を使ってよかった、もう一度見たい、究極的にはお金を払ってまで見たい・体験したいものを目指すことが重要です。6日間にわたり、1000以上に及ぶ全世界からエントリーされたプロジェクトや映像をじっくりとみて、ハリウッドの大物プロデューサーから芸能エージェンシー、広告会社など様々なバックグラウンドを持つ素晴らしい審査員20名と深いディスカッションに明け暮れる。実に貴重な機会でした!

グランプリを獲った、SANTANDER BANKの「BEYOND MONEY」※は以下3つの点で、「カンヌライオンズ エンターテインメント」のグランプリを獲るにふさわしいものでした。
まず一つ目に、アイデアの素晴らしさがあります。「BEYOND MONEY=お金より大切なもの」というテーマを「銀行」が語っているということ。
二つ目は、作品自体のクオリティの高さ。「エンターテインメントとして見た時に、お客さんがその17分をいい時間であったと思えるものになっているかどうか」です。
三つ目は、その作品がエンターテインメントとしての配信・配給のされ方になっているのかという点です。このプロジェクトでは、ショートフィルムを単にサイトに置くのではなく、上映会という形で20館以上の映画館で実際に公開されていました。

エンターテインメント部門グランプリ

SANTANDER BANK「BEYOND MONEY」(MRM//McCANN・スペイン)
http://player.canneslions.com/index.html#/works?awards=Grand%20Prix&category=entertainment&entry=829581&festival=LE
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。
※スペインの銀行が公開した17分のショートフィルム。買い物依存症の女性が、お金のために記憶を売っていくというストーリー

■ダイレクト部門

大木 秀晃(おおき ひであき)

博報堂ケトル
プラナー

今年のカンヌの全体的な傾向として、商品・企業・社会の課題に対して、まっすぐに解決したものが多く受賞したという印象があります。言い換えると、クリエイティビティが、課題解決に直結できる、ということを実感することができ、この産業に関わる人間として勇気づけられました。

その中で、ダイレクト部門の特徴は何か?テクノロジーやメディアの発達によって、まさにダイレクトに生活者とコミュニケーションをとることができるようになった今、企業はどのように生活者とつながるべきなのか?ということを問う部門だと思います。

ダイレクトに伝えることができるからこそ、どこまで踏み込むか、踏み込む勇気とセンス、(審査員仲間の中には、ロマンチックさやセクシーさと言っていた人も)が問われます。それは広告会社だけでは解決しません。世界を見ると、広告主側との関係の進化も見ることができました。広告主と広告会社が一緒になって生活者との距離感を考え、その上で課題解決するクリエイティブアイデアが生み出されたものはやはり強いです。

今後2〜3年、注目すべき部門であると感じたのと、日本ではまだまだ未熟であり、チャンスのある部門であると思います。

ダイレクト部門グランプリ

BURGER KING「GOOGLE HOME OF THE WHOPPER」(DAVID・アメリカ)
http://player.canneslions.com/index.html#/works?awards=Grand%20Prix&category=direct&entry=812526&festival=CL
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

■メディア部門

中澤 壮吉(なかざわ そうきち)

博報堂DYメディアパートナーズ
データドリブンプラニングセンター センター長代理

世界中からエントリーが集まるカンヌライオンズ。その中でもメディアライオンズはエントリー数が膨大です。そこでカンヌ開催期間前にショートリストを選出するための、言うなれば“予選”を行ってから現地で“本選”審査を行う仕組みが導入されています。今回は、この予選審査員=ショートリスト審査員としてカンヌに参加させていただきました。

ショートリスト審査はとてもシンプルで、割り当てられたカテゴリーのエントリー作品ひとつひとつについてオンライン上で評点します。評価のクライテリアとウェイトは、インサイト&アイデア=30%、ストラテジー&ターゲティング=20%、エグゼキューション=20%、インパクト&リザルト=30%です。私が担当した2つのカテゴリー「Use of Ambient Media: Small Scale」と「Use of Branded Content created for Digital or Social Media」だけでも応募作品数は300を超えていて、世界のクライアントとエージェンシーのクリエイティビティと仕事への熱量を、たっぷりと感じることができました。

今年のメディアライオンズのショートリストには290作品が選ばれ、その中から95作品がアワード(ブロンズ以上)を獲得。ゴールドには9作品が、そしてグランプリは米国の流通小売企業JET.COMの「INNOVATING SAVING」が受賞しました。「ターゲットのソーシャルメディア利用や検索行動のインサイトを見事に突いてブランドを確立した(メディアライオンズ審査委員長談)」ことが高く評価されました。毎年巨額の広告予算が投入されテレビCMにも全米の注目が集まる“スーパーボール”にジョークを効かせて低予算で相乗りしたり、グーグルの自動音声変換機能にナレーションを読ませて格安でラジオCMを制作したり、フェイスブック上の「いいね!」数に応じて友達(へのプレゼント予算)に値付けしたり(自分の投稿に無反応だった友達は$0とかw だから余計な出費をしなくてすむというわけです)・・・・・・“saving(節約)”というブランドの約束を彼の国らしいユーモアとともに“メディア戦略で体現した”統合メディアキャンペーンだといえるでしょう。またデータドリブンなデジタルクリエイティブやタグマネジメントなど、精緻なメディアエグゼキューションも評価のポイントだったのではないでしょうか。

メディア部門グランプリ

JET.COM「INNOVATING SAVING」(R/GA・アメリカ)
http://player.canneslions.com/index.html#/works?awards=Grand%20Prix&category=media&entry=814175&festival=CL
(注)動画URLは、公式サイトで一定期間閲覧可能。

カンヌライオンズ2017アーカイブ
【カンヌライオンズ Vol.1】博報堂DYグループから5名が審査員に決定。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/column/38665