妊娠・育児期を取り巻く環境が変化する中、博報堂DYグループでは、お母さんお父さんの声から生まれた「親子健康手帳」と「母子健康手帳アプリ」を開発・提供しています。このたび兵庫県芦屋市の「母子健康手帳」と「母子健康手帳アプリ」として合わせて採用していただきました。芦屋市は両サービスを採用いただいた全国で最初の自治体となります。

この両サービスの採用を決定した経緯、そして当社グループが開発時にこめた想いや今後の展望について、芦屋市で「子育て世代包括支援担当」として活躍する田中佐代子さんと、「親子健康手帳」の推進を通じて自治体における育児や学習環境をサポートする事業に携わる博報堂の今宿裕昭、「母子健康手帳アプリ」の企画・コンテンツを制作する博報堂DYメディアパートナーズの実吉賢二郎に聞きました。

左より、博報堂DYメディアパートナーズ実吉賢二郎、芦屋市保健センター芦屋市こども・健康部 健康課 子育て世代包括支援担当主査(保健師)田中佐代子さん、博報堂今宿裕昭

変化する子育て環境~芦屋市が手帳とアプリの採用を決めた理由

田中さん(以下、田中):2014年4月から博報堂の「親子健康手帳」を芦屋市の「母子健康手帳」として採用しています。親子の姿を描いたシンプルな表紙デザインやイラストが妊産婦さんに好評です。また、お父さんも育児に積極的に参加できるよう、パパの協力を促す項目、パパになる心構えなど、お父さんに関連するページが充実しているのがいいですね。

「母子健康手帳アプリ」を採用したのは、子育て世代のために健康情報やレシピなどの情報配信を検討していた時に、芦屋市でつくりたかったものがそのままこのアプリに入っていることを知り、理想とぴったりでした。医療機関や管理栄養士をはじめ、各分野の専門家が監修にあたっているため、情報に信頼が持てます。この4月より、保健センターに来る妊婦さんに「母子健康手帳」をお渡しする際に、アプリの利用案内も同時に配布しています。

実吉:お母さん方は育児に精一杯で、自治体から大事な情報を一度に紙の束でもらっても読み切れないし、忘れてしまうことも多いので、その人に合った情報をその人に合ったタイミングで提供できるのはメリットが大きいと思います。アプリによる情報配信は、情報格差を埋められるという点もあるので、ぜひ母子健康手帳と一緒に使っていただきたいです。

田中:子育て環境は、昔と違って、今は多くのお母さんが外で働いている上、周囲に相談できる相手がいなかったり、頼ったり頼られたりする“お互い様”の関係性が希薄だったりします。このアプリがあれば、そんなお母さん方も情報を入手しやすくなるし、子育ての大きなサポートになると思います。今後、このアプリが市民の皆さんにとってのコミュニケーションプラットフォームになると感じています。芦屋市では、子育て広場を運営したり、子育てサークルやイベント企画・実施する子育て推進課と、保健センターが連携し、自治体としての情報発信の仕方をこれからもっと考えていきたいと思っています。

博報堂DYグループの「親子健康手帳」と「母子健康手帳アプリ」とは?

今宿:60年以上も前に日本で生まれた母子手帳は、当時「妊産婦手帳」と呼ばれ、妊産婦や乳児の高い死亡率の改善を目的に配布されていました。その後も、母子の健康を守るとともに、親子の「絆」を育むものとしての大きな役割を果たしてきました。博報堂では、2011年に生活総合研究所の研究員が「日本の母子手帳を変えよう!プロジェクト」を立ち上げ、父親も参加できる「母子健康手帳(通称:親子健康手帳)」を開発しました。現在195の自治体で採用されています。

ここが使いやすい!「親子健康手帳」

親子の記念日を記録したり、お子さんの健康や成長を記入できるページをたっぷりつくりました。

実吉:「母子健康手帳アプリ」は、市区町村で配布されている母子手帳の内容を電子化しています。厚生労働省の定める省令に準拠しており、妊娠中から6歳時の健診までの記載項目を全て網羅しているため、お子さまのデータをスマートフォンで一元的に記録・管理することができます。また、学校での健康診断結果など、20歳までの健康記録を合わせて管理できます。2016年からはスマートフォン、タブレット向けアプリの配信も開始しました。モノとして後世に残せるのが紙の母子健康手帳の良さであるならば、情報配信の最適化やデータ管理の効率化などを図り、お母さん達のコミュニケーションの場を作れるのがアプリの良さ。これらを併用することでさらに便利になります。

ここが使いやすい!「母子健康手帳アプリ」

妊娠期に必要な情報が届き、はじめての妊娠・育児をするお母さん・お父さんも分かりやすい設計。赤ちゃんの成長グラフを表示したり、提携している自治体や医療機関からの情報が簡単に手に入ります。

今宿:親子健康手帳の中に広告を掲載することにより、印刷費の低減やアプリの開発・運用費にも当てることができ、広告も育児の情報源になります。本プロジェクトは、広告を社会課題解決のために活用する事業にもなっています。

育児体験者たちも多くかかわる本プロジェクト。 子育て経験者が、いまの子育て世代に伝えたいこととは?

実吉:「母子健康手帳アプリ」の前身となる「妊婦手帳アプリ」の開発時期と妻の妊娠・出産・育児期が重なり、サービスの立ち上げと子育てを並走していました。開発の途中経過を妻に見せ、意見を聞いたりしました。厳しい意見もありましたが、大きなヒントになっています。土日くらいは思い切って子どもたちと父親だけで一緒に過ごし、お母さんに自由に過ごせる時間を持ってほしい。本アプリが、お母さん方の大変さを少しでも軽減する力になれたら、大変うれしいです。

今宿:「親子健康手帳」の推進を通じ、各自治体で子育て環境向上に向けた事業に携わっていますが、妻が育児で大変なときは、おむつを替えるくらいしかできなかった。その代わり今、土日は料理をするし、家族の話はとことん聞くように心がけていますね。

田中:保健師の仕事と子育てを両立してきましたが、どうしてもメディアなどでは“子育ては大変”というイメージで伝えられてしまいます。でも、思い返せば、半分以上が楽しいことや喜びなんですよね。本当は子育てをお母さん一人ではなく、地域全体で応援できるのが理想。そうやって子育て環境が整い、子どもが増えれば、子どもたち同士で成長し、同時にお母さん方も子どもと一緒に育つことができる。「母子健康手帳」と「母子健康手帳アプリ」は、地域からの応援のひとつとして心強い味方になると思います。

今後の展開として、この秋には「母子健康手帳アプリ」を家族で共有できるよう、開発を進めています。芦屋市でも、いまは4カ月健診の参加者の3割くらいにお父さんが同伴され、お父さんの育児参加が増えてきています。芦屋市だけでなく、今後さらに子育てへの家族参加が進んでいくことが見込まれます。「母子健康手帳」と「母子健康手帳アプリ」は、これからもますます子育て家族を応援していきます。

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山中健 芦屋市長より

全国どの自治体においても、人口減と子育て環境の改善は重要な課題の一つでしょう。芦屋市においても、就職などで一度市外に出た若い世代の方々がまた戻ってきたいと思えるような、あるいは芦屋市に少しでも興味のある方が一度住んでみたいと思えるような、よりよい街づくりに努めています。そのためにも、母子健康手帳とアプリは大変魅力的なサービスになると考えています。

*プロフィール

田中佐代子さん(芦屋市保健センター芦屋市こども・健康部 健康課 健康増進係長)
芦屋市に保健師として入職、芦屋市保健センターにて市民の健康づくり・食育に関わる活動・事業に携わる。2017年より、子育て世代包括支援担当として、妊娠期からの切れ目のない支援を実現するよう、子育て支援担当課と連携して取り組む。
(芦屋市HP http://www.city.ashiya.lg.jp/

今宿裕昭(博報堂MD統括局マーケティングディレクター)
2015年より、母子健康手帳を自治体に推進する事業に携わる。また、ネットショッピングで東北の被災校を支援する「ウェブベルマーク運動」を推進し、同協会の常務理事。
(親子健康手帳HP http://mamasnote.jp/

実吉賢二郎(博報堂DYメディアパートナーズ投資戦略局グループマネージャー)
新規事業開発に取り組み、2013年より前身となる「妊婦手帳アプリ」「育児手帳アプリ」の開発に携わる。本アプリは2014年にグッドデザイン賞、2015年にはキッズデザイン賞を受賞。
(母子健康手帳アプリHP https://www.boshi-techo.com/service/