株式会社博報堂DYスポーツマーケティングが活動サポートを行っている南谷真鈴(みなみや・まりん)さんが、2017年4月、北極点に到達。それまでに達成していた世界7大陸最高峰への登頂、南極点到達と合わせ、「探検家グランドスラム」という偉業を世界最年少で成し遂げました。その大いなるチャレンジについて、また次の目標である船での世界一周計画についてうかがいました。

■7大陸最高峰制覇から生まれた探検家グランドスラムという新しい夢

昨年の7月、アメリカのデナリ(北米大陸最高峰)への登頂に成功し、セブンサミッター(7大陸最高峰制覇者)となりました。でも、もともと持っていた夢は「エベレストに登ること」。そのための高度順応トレーニングとしてアルゼンチンのアコンカグア(6960m。南米大陸最高峰)、タンザニアのキリマンジャロ(5895m。アフリカ大陸最高峰)、ヴィンソン・マシフ(4892m。南極大陸最高峰)などに登るうち、結果的に7大陸最高峰をクリアすることができ、エベレスト登頂の夢もかなえることができました。その過程ですでに南極点には到達していたのですが、合わせて北極点にも到達すれば、探検家にとっての大きな目標である「探検家グランドスラム」を達成できると知ったんです。これはやるしかないと思い、北極点への挑戦という新しい夢になりました。

■過酷だけど美しい自然に感動。危険も乗り越えて到達した北極点

準備を始めたのは、7大陸最高峰制覇から間もない昨年の秋。大学に通いながらトレーニングを開始しました。今年2月には渡仏、北極点到達体験のある方にトレーナーとなっていただき、シャモニー(フランス東部にある山岳地帯)をベースにクロスカントリーやバックカントリーのトレーニングを行いました。そして3月末にはノルウェーへ行き、北極点への旅を共にするチームメイト5人と初対面。皆さん世界のあちこちでさまざまな体験を積んでこられた探検家や登山家でしたが、リーダーの方を除けば、北極点は初めてのチャレンジという方だけでした。
現地時間の4月5日、いよいよ北極点へ向けての旅が始まります。北極は南極と同じような氷点下30度でも、湿度が高く、肌を刺すような寒さがあります。特に私たちが行ったときは、例年に比べても寒さが厳しく、すべてが凍り付いていた。本来ならばウェットスーツに着替えて海水に入らなければならない行程もあったので、その点はよかったのですが……。海面も凍ってしまっているということは、ホッキョクグマなどの野生動物も、アザラシなど海中にいる獲物を獲ることができないということ。エサを求めてふだんの行動範囲を広げている可能性があるのでかなりの警戒が必要でした。実際、私が先頭になってソリを引いていたとき、後方のメンバーの様子を見るためにソリから離れたスキに、私の荷物に入っていたサラミをクマが咥えていて。間近でクマを目にするとは思わなかったので本当に命の危険を感じました。幸い、ハンターの資格も持つメンバーが銃で威嚇するとすぐに逃げていき事なきを得ましたが、本当に背筋が凍るような思いでした。

北極点に向けては、1日に8~10時間ずっと60~70キロあるソリを引いて歩き続けます。最初は全部で6人だったメンバーでしたが、そのうち1人は凍傷で、また疲労が激しかった1人が救助され、4月12日に北極点に到達したときは4人になっていました。人数が減った焦りもあったし、例年より寒かったのが功を奏して、北極点へ向けて一直線に進んでいくことができたのもあり、10日以上はかかるはずだった工程を7日でクリアすることができました。

一番印象的だったのは、やはり過酷だけど美しい自然の姿です。これまでも私は世界で美しい自然を目にしてきましたが、特に北極は360度どこを見わたしても真っ白な世界で、人の気配がない代わりに、自然とさまざまな動物たちが共存している様子を見ることができました。そんな美しい自然を私たちは次世代に残すことができるのだろうか。残すためには何をすべきなのか。それは私の中でいま大きな問題意識となっています。

■次なる目標は世界の海。可能性は無限だということを伝えたい

今年の7月からは、南アフリカのケープタウンに行き、セーリングのトレーニングを受ける予定です。実は2018年の夏ごろまでにさまざまな準備を整えて、船で世界一周の旅に出たいと考えているんです。まだ計画段階ではありますが、最低でも10カ国は回って、各国の子どもたちと交流したり、ボランティア活動などを行う予定です。
そういった活動を通して子どもたちに伝えたいのは、やはり夢はあきらめてはいけないということ。私自身、ケニアでボランティア活動をしていたときに出会った女性にそれを教わったんです。大変貧しい家庭に育ち毎日工場で働き詰めだった彼女は、「学校の先生になりたい」という夢があったので、夜になると村中の先生の家々を訪ね、少しでいいから教えてくださいとお願いして回ったそうです。そうして強い意思を持って勉強を続け、彼女は先生になることができた。いまも孤児院で先生をしながら、その話を子どもたちに伝えているそうです。
いろんな環境でそれぞれの人が戦っていると思いますが、大切なことは、夢があるのだったらそれを切実に抱き続け、行動に移していくことだと思うんです。自分の可能性を自分で閉じてしまうことはない。私の活動を通して、可能性は無限なんだということを、たくさんの人に少しでも感じていただきたいと思います。

南谷真鈴

1996年生まれ。2015年のアコンカグア(アルゼンチン)を皮切りに現在までに、キリマンジャロ(タンザニア)、モンブラン(フランス)、マナスル(ネパール)、コジオスコ(オーストラリア)、ヴィンソン・マシフ(南極大陸)、南極点到達、カルステンツ・ピラミッド(インドネシア)、エルブルス(ロシア)、エベレスト(ネパール)、デナリ(アメリカ)を征覇。2016年5月にエベレストに登頂し日本人最年少記録を更新、2016年7月にデナリを登頂したことで7大陸最高峰(セブンサミッツ)の日本人最年少記録を更新。2017年4月13日に北極点に到達し、「エクスプローラーズ・グランドスラム」達成の世界最年少記録を樹立。早稲田大学 政治経済学部 国際政治経済学科在籍中。