深谷 信介

スマート×都市デザイン研究所長 / 博報堂ブランドデザイン副代表

<写真1|厳かな駅>

まてよ〜?
山を大量に切り崩して、しかもたくさんの木々を切り倒し続けていたら、あっという間に山は荒れ果てまちはみるも無惨な姿になっているはず。ほら、軍艦島ってそうじゃない・・・でもそんな感じじゃないんだよね、このあたり・・むしろ自然真っ只中100%に見えるし・・・
あっそうか〜、まだ見ていないんだねその場所は・・・

「そうですか〜。じゃああの山の向こうとか、きっとすごい状態なんでしょうね〜。」

「えっ?
やまの向こうも同じような風景がつづいていますよ〜。
自然とひとが調和して、この稀に見る素敵な風景が形成されたんです。
だからこそ、日本遺産や文化的景観に指定されたんだと思います。」

若干会話が噛み合っていない感じだな・・・

「んっ
そうですか? じゃあやまを切り崩した跡は、どこにあるんですか?」

「あ〜っ(笑)
そこです、そこここですね。
その目の前の田んぼですよ、深谷さん。
やまを削ったあとを、開墾して田んぼにしたんです。
どうも鉄分が多いらしく、とても美味しいお米が取れるんです。」

砂鉄発掘場が、田んぼに変身??

<写真2|仁多米稲はで>

「そう、鉄を運ぶために、牛や馬が飼育されて、いまでも美味しい仁多牛の産地になっています。
たたらの技術が変容してそろばん産業も発達しましたし、たたら製鉄が終わったあとも、ガスが普及するまでは、良質な木炭の産地として全国に供給していました。」

<写真3|そろばん製作>

<写真4|仁多牛放牧中>

<写真5|仁多牛加工中>

1つのことが起こると、それがいろんなかたちに広がって、このまちの豊かさをさらに広げてくれていたんですね。
たたら操業はかなりの富を得られましたから、鉄師のなかでも特に有力だった御三家は、歴史的な価値のある古民家や民芸調度品、歴史的な史実や贅沢品など、びっくりするほどのお宝が眠っています。
そしてそして、栄えたまちには必ずいい和菓子が、ある。ここにも、とっても美味しい和菓子がたくさんありました。
へーっ! 奥って、なんかやっぱり凄いな〜。いや凄すぎるな、アメーバのように広がる奇跡・軌跡・キセキ。

<写真6|たたら御三家・田部家蔵>

<写真7|たたら御三家・櫻井家庭園>

<写真8|たたら御三家・絲原家16代当主と>

「あっ、そうだ!
現代でも、世界で唯一この地でたたら製鉄を続けているんです。
この製法じゃないとつくれない、鉄があるんです。いまだにその秘密が解明されてなくって、日本文化の象徴であるあの日本刀をつくるのに欠かせない大切な原材料、玉鋼(たまはがね)なんです。」

え〜〜っ!
あのしなやかで強靭な日本刀を支える材料が、このたたらで作られてるなんて。
しかも、この製法じゃないとつくれないなんて、こりゃたいへんだ ビヨンド・サイエンスだ!

村下(むらげ)っていう鉄の技術師(マイスターか!)がいらっしゃって、その方の元年に数回だけ、神聖に和鉄づくりが行われているんです。

鉄づくり
圧倒的なイノベーションを興したはずの、たたら操業

良質な砂鉄と
豊富な森林に恵まれ
たたら製鉄がさかんとなったこの地・このまちは、いまでいう企業城下町だったのです。
それも、日本全体を牽引するほどの 世界へその名を轟かせるほどの・・・

しかも地元の資源資産を多方面に活かし、次々と続けられるしごとをつくっていく。究極のエコシステムじゃないか。なんてこった。
さいきんのにんげんは成長してるんだろうか? って思わさられることが、地域にはいっぱい詰まっています。
ほんの少しずつでも、それらを掘り起こしていきたい。掘り起こしたモノ・コトを、ふたしかなミライを生き生きとしたミライに変える力にしたい。珍しく、そんな夢物語みたいなことを思いながら、奥のそのまた奥のさとやまを降りるのでした・・・(笑)

「深谷さん、どうでしたか島根??」
満面の笑顔で、元同僚が訪ねてくる。
「なんにも知らないって、やっぱりあかんな〜。凄すぎるの先だったよ。
誘ってくれて本当にありがとう、気持ちを新たに日本中の地域と世界の地域と向き合っていくよ。都会も田舎もない、すべてはフラットな『地域』だね。」
「よかった〜、誘ってみて(笑)」

まちづくりフレームは、簡単だ。
資産を魅力にすればいい、魅力にし続ければ、多様な広がりがうまれ持続可能なまちづくりができていく。
そんな事実をすべてこの地の先人に垣間見せてもらった。何にも変え難い素晴らしい日々になった。これがまちづくりのホンシツだ。

その後、山陰ヘビーローテーションとなり、会う人会う人たたらつながりになり、山を越えて鳥取たたらともつながり、いまや5つの市町とたたらとそのくらしに向き合うことになっています。
そして、自分の大切な恩師がたたらに関わっていたことが後から分かったり、別件でつながった地元の先生が深く長くたたら研究をされていたり・・・ この類まれなる「ご縁」つづきは、どう考えても、FBなどを越えて、出雲の神さまの思し召としか、思えないのです。
原材料が文化を創る。

そして近々、みなさんも、やたらたたらを目にする機会がきっと来るはずです(笑)

次回は、イです ロです! です

にっぽんトコトコッ
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島根県奥出雲地方

https://www.okuizumogokochi.jp/ 奥出雲ごこち
http://tetsunomichi.gr.jp/ 鉄の道文化圏推進協議会

*写真①~⑤ は島根県奥出雲町より写真⑦は鉄の道文化圏推進協議会よりご提供頂きました。

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