『みっけ(=Mikke, 日本語で「見つけた!」の意)』とは、朝日新聞社と博報堂が共同開発した、隔月発行の学習誌。昨年9月にタイで創刊して以来、日本ならではの学習コンテンツがたちまちタイの子どもたちを魅了しています。
この「みっけ」プロジェクトを主導するのは、朝日新聞社メディアラボの榎本淳さんと、博報堂の宇都宮毅。二人が語る、「みっけ」への想い、タイの小学校での広がり、そして今後の展望とは――。

(写真左)朝日新聞社 メディアラボ  榎本 淳さん-社内外とコラボし、新規事業開発に取り組んでいる。(写真右)博報堂 クール・ジャパン推進室  宇都宮 毅-広告事業で培った多彩なスキルを生かして、ビジネス機会開発に取り組んでいる。

朝日新聞グループのノウハウを活かし、新規ビジネスに挑戦

宇都宮
博報堂クール・ジャパン推進室は、日本国内の少子高齢化や海外新興国の経済成長といった現状の中で、今取り組むべきは、日本で長年培ってきたプラットフォームを軸にした事業の海外展開だと考えていました。そんなときに榎本さんからお話をいただいたので、すごくいいタイミングでした。

榎本
新聞社の知見や経験を活かせて、かつ海外でも展開可能な事業はないかと思案していた中、日本ならではの学習コンテンツを海外に輸出することを思いつきました。というのも、新聞社は単にニュースを発信するだけでなく、さまざまな学習コンテンツや教育機能を備えており、このノウハウを活かせば、質の高い日本式学習ツールとして、世界展開が可能なのではないかと考えたんです。そこで、具体的なことを相談させていただいたのが宇都宮さんでした。

足掛け3年がかりで発行にこぎつけた「みっけ」。 2号目はプミポン・アドゥンヤデート国王の崩御に伴い、表紙をモノクロで印刷している。

タイの教育現場に笑顔があふれた! 先生にも子どもたちにも好評

榎本
実際にどの国を足掛かりにプロジェクトを始めるべきかを考えたとき、文化的な親和性もあるアジア圏内、その中でも事業が成り立つに十分な経済基盤があるタイにしぼりました。

宇都宮
タイは親日国なので、「みっけ」にも、初めからすごく関心を持ってくれました。

榎本
先進国入りを目指すタイは、教育政策に力を入れてはいるんですが、ニーズに応えられるだけの学習コンテンツもカリキュラムもなく、先生方は日々苦心されていたんです。こちらからの働きかけで、アマリン プリンティング&パブリッシングという現地の大手出版社と提携できることになって、こちらで作ったコンテンツの、翻訳、製本から配布までを担当してもらうことにしました。彼らが持つタイ国内の学校との流通ネットワークを使って、「みっけ」は現在バンコクを中心とした170の小学校に向けて10万部が届けられています。先生向けに具体的なガイダンスも付けてあるので、先生方からも「授業に取り入れやすい」と好評をいただけて。それを聞いたときは本当に嬉しかったですね。

宇都宮
子どもたちが「みっけ」を手にとったときも、すごくいい笑顔を見せてくれたんですよね。ちなみにこの忍者のキャラクター(記事末 最新号vol.4の表紙をご参照ください)は、「みっけ」チームが開発しました。タイに限りませんが、海外の子どもたちにとっても忍者は「鉄板」で、日本発のキャラクターということで結構人気が出てきたようです。

本を読む習慣があまりないタイの子どもたちも夢中に。日本式学習コンテンツなら、学ぶ楽しさを味わえる

榎本
僕らがタイで目にした教科書は、シンプルに活字が並んだものがほとんどでしたね。

宇都宮
リサーチを経てわかったのは、実はタイには読書習慣があまり根付いていないということ。またOECDによる国際的な学力調査(PISA調査)でも下位に低迷しており、そこからの脱却が国の課題にもなっています。そんな子どもたちに、まずは学ぶ楽しさを知ってもらうというのも大切なミッションでした。

榎本
「みっけ」は、まんがで算数を解くとか、科学の謎を解くとか、親子で料理をする食育など…イラストやクイズなども交えた多様なコンテンツで構成されています。朝日小学生新聞で支持を得た人気コンテンツをベースにしていますが、現地の先生には相当新鮮に映ったようです。子どもたちも、楽しみながら読み進められるので、受け入れやすかったようです。

また、タイという国の今後の成長基盤となりうる理数系教育をしっかりと押さえていることや、キャリア教育といった日本式教育らしい内容も取り入れていることも特徴です。「お仕事探訪」といったテーマで日本のコンビニチェーンにご協賛頂き、ビジネスの成り立ちや仕事の意義などをわかりやすく解説したり。

宇都宮
これは、今後日本やタイの企業と連携しながら、CSR活動の一環としてもさまざまな職業を紹介するシリーズにできると考えています。ほかにも、ロボットプログラミングや環境学習などを通して、日本や世界の最先端の事例についても学べるようになっています。そうやって「次世代教育」を進めていければいいですね。

榎本
日本式教育には、教材そのものを指す場合と、マナーとか礼儀とかのカルチャーを指す場合があります。今のところは前者に関する取り組みになっていますが、ゆくゆくは後者の方も紹介していけると、もっと教育に取り入れてもらえる機会が増える気がします。また、昨年11月に、文科省の「Edu-portニッポン※」に「みっけ」は応援プロジェクトとして採択されました。「Edu-portニッポン」とは、日本式教育方法やノウハウを海外輸出しようという同省のプロジェクトです。日本式の教育方法がいかに海外から注目されているかの一つの表れだと思っています。

※「Edu-portニッポン」 https://www.eduport.mext.go.jp/index.html

宇都宮
「みっけ隊、日本をゆく」というシリーズ記事を通じて、日本の自治体と連携した情報発信もしています。非常に好評で、伝統行事や地方の様子を知り、実際に行ってみたいと答える子どもたちも多くいます。中には日本語を学びたいという声もありました。「みっけ」は自宅に持ち帰って家族で読んでね、と推奨しており、確実に日本という国や文化に対する興味関心の醸成につながっていくと思います。

最後に-日本だからこそできる、新しい国際社会への取り組み

榎本
朝日新聞が長年培ってきた教育に関するノウハウ、手法を海外の先生方にも届けられれば、何か新しい価値が生まれるはず。これは「みっけ」プロジェクトの一番根底にある想いです。

宇都宮
これからも、企業や自治体からの協賛の形でCSR活動と絡めたり、キャラクタービジネスにしたり、「みっけ」を多様に展開させていけたらと思います。また、教材を求めている国はタイだけではありませんから、他の国の子どもたちにも広げていけたら嬉しいですね。楽しく学べる日本の学習コンテンツは、まさにクール・ジャパンの一例なんです。

昨年12月、北九州市環境局から派遣された職員が、バンコク市内の小学校で「みっけ」を使って授業を行った。公害に悩まされていた北九州市が、市民を先頭に企業と行政が一体となって青い空を取り戻した歴史、環境の大切さを講義したほか、ペットボトルをリサイクルして風車を作る工作の授業も。

■プロフィール■
株式会社朝日新聞社 メディアラボ 主査
榎本 淳(えのもと・じゅん)
入社後、広告局(現メディアビジネス局)、アスパラクラブ(会員制クラブ運営)、マーケティングセンター、社長室などを経て現職。メディアラボは2013年発足のイノベーションセンター。大手企業からベンチャー企業まで様々な業態のパートナーとの連携を日々画策。メディア事業の枠を超えた、新しい商品開発やビジネスディベロップメントに従事。
朝日新聞社メディアラボ 「みっけ」告知ページ
http://www.asahi.com/shimbun/medialab/mikke.html

株式会社博報堂 クール・ジャパン推進室 ビジネスディベロップメントディレクター
宇都宮 毅(うつのみや・たけし)
自動車メーカーの海外営業を経て入社後、アジア新興国での広告業務に携わる過程で、自ら発案した『インド版巨人の星・Suraj, The Rising Star』のプロデュースをきっかけに、クール・ジャパン視点でのビジネス開発を手掛ける。主な事例として、BSフジ情報番組「Birth of the Cool」、「さいたま大宮盆栽in Paris」プロジェクトのプロデュース等。

■「みっけ」媒体概要
「みっけ」最新号 vol.4  2017年2月号

2016年9月に創刊。現在、タイの小学校4~6年生に配布している。発行部数は10万部(1号あたり)。最新号の第一特集は「地球温暖化:地球はなぜ暖かくなっているの?」。
(忍者のキャラクターは、表紙の周囲に散らされている4人)