博報堂DYグループであるデータスタジアム株式会社は、さまざまなスポーツのデータを収集し、ファンやメディアに対しデータやデータを応用したエンターテインメントコンテンツを提供、配信するほか、選手や競技団体に対しても、強化のためにデータを活用したサポートを行っています。データスタジアムの加藤善彦代表取締役社長に、現在の取り組み内容やこれからのスポーツビジネスにおけるデータ活用の可能性についてうかがいました。

■メジャースポーツからマイナースポーツまで。
■オリンピックに向けて加速するデータ活用の取り組み

当社のサービス領域は大きく分けると2つあります。ひとつは当社が取得したスポーツに関するデータを分析、配信し、メディアを介して一般の方々向けにさまざまなスポーツの楽しみ方をご提案すること。もうひとつは、そのデータを用いて、選手やスポーツ団体の皆さんに選手強化や戦術向上のためのソリューションを提供することです。2001年の設立からしばらくは野球、サッカー、ラグビー、バスケットボールの4競技に重点を置いていましたが、近年は取り扱うスポーツジャンルの幅が大きく広がっていき、卓球、テニス、バレーボール、カーリングといった人気競技から柔道のような格闘技まで20にのぼる競技のデータを取り扱っています。やはり来るべき2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、より効果的な選手強化策や戦術向上策の必要性が高まっており、現在さまざまな競技団体の方々がこれまで目を向けることがなかったデータの活用に取り組み始めています。一方で、ゲートボールなどのマイナースポーツにおけるデータ提供も行っています。日本発祥のスポーツであるゲートボールは、実はチェスや囲碁のようにロジカルにスペースを埋めていくという特徴があり、データが大いに活用できる競技。近年は中国をはじめとするアジア勢に押されている状態なので、世界で勝てるチーム作りのためのお手伝いをさせていただいております。

■データが支える日本代表チーム
■社員も「日の丸を背負う」気持ちで臨む

当社のデータサービスがチームの戦術向上に貢献できたのではないかという一例が、「エディージャパン」として知られるラグビーの日本代表チームです。ご存知の通りイングランドで開催された2015年のワールドカップにおいて、強豪国南アフリカに対し劇的な逆転勝利を収め“ワールドカップ史上最大の衝撃”として大きな話題となりました。実は当社でも、大会期間中はもちろん、それ以前から、対戦相手国をはじめとした各国のデータ収集を行い、どういった戦略・戦術が有効か分析するサポートをさせていただいていました。
そのほかにもさまざまな種目の代表チームに協力させていただいていますが、日の丸を背負うというのが大げさに聞こえないくらい、社員も熱い使命感を持って、選手の皆さんと共に世界にチャレンジするという気持ちでいるようです。

■見えなかったものを見せてくれるデータの力
■加速する「リビングのスタジアム化、スタジアムのリビング化」への動き

データの最大の力は、「いままで見えなかったものを見えるようにしてくれること」です。たとえばサッカーはずっとプレーが流れていて、試合中にどこかを切り取って見るということがなかなか難しい。でも、数値やデータによってプレーをクローズアップしていけば、特定の選手が時速何キロのスピードで走ったかや、どれくらいの距離を移動したかなどが分かり、その数値を選手やチーム別に比較することで新しい観戦の楽しみが生まれるでしょう。実際に某テレビ局では、通常のサッカーの試合中継と同時に、別チャンネルを使ってデータ中心の中継を行っていました。注目選手のデータや動きをリアルタイムで追いながら、解説者もデータを中心に語っていくという試みです。
一方、スタジアム観戦においては、スローモーション映像もないので選手の細かい動きは追いにくい。スマホやタブレット端末を介してそうした情報がリアルタイムでわかれば、観戦をより楽しむことができるでしょう。これらの例は、「リビングのスタジアム化、スタジアムのリビング化」とも言える動きで、オリンピックに向けて、両側面でのICTの活用はますます加速していくだろうと考えます。

■必要なのは、競技自体の盛り上がりとデータの相乗効果。
■スポーツの新しい魅力をデータを通して発信していけたら

今注目しているのは、来年から新しいリーグが誕生する卓球と、錦織圭選手や大坂なおみ選手はじめ新たなスターが生まれているテニスです。データを活用することでスポーツの見方が変わり、スポーツ界全体の活性化につながるということももちろん言えますが、それだけではなく、やはり選手や競技への注目度、競技自体の魅力が増すことで、全体が盛り上がることも欠かせません。そこにデータが加わることで相乗効果が生まれ、また新たな付加価値を創造できればと考えています。
データ活用の新たな可能性としては、今後は、天気予報など複数のデータと掛け合わせることで、プレーや試合展開がいかに予測できるかといった側面に入っていくと思います。AIの活用もすでに始まっていて、より緻密なデータ取得、解析にも活用され始めています。一方でスポーツの魅力はすべてを予測できないところにもある。人はそんな先の読めない展開、不確定なところに一喜一憂し、熱中できるから、スポーツを好きなんだと思います。これからも、データを通して、そんなスポーツの新たな魅力を発信するお手伝いをしていけたらと思います。

加藤善彦●かとうよしひこ

データスタジアム株式会社代表取締役社長

1987年4月(株)博報堂入社。マーケティングプラナーとして自動車、食品、飲料、トイレタリー、エネルギー、不動産などの業種を担当。1995年秋には新設された(株)博報堂スポーツマーケティング<現・博報堂DYスポーツマーケティング>へ参画、2001年より2008年まで同社代表取締役社長。
(株)博報堂DYメディアパートナーズ・スポーツ事業局局長代理を経て、2009年よりデータスタジアム株式会社代表取締役社長。現在に至る。