NHK BS1「球辞苑」出演のデータアナリスト金沢慧に聞く、
スポーツをより楽しくするデータの活用法

博報堂DYメディアパートナーズのグループ会社であるデータスタジアム株式会社は、2001年の設立以来、プロ野球、Jリーグ、ラグビーなどのデータを取得・蓄積・分析し、スポーツ団体やチーム・クラブ・選手に対して強化や戦力向上のためのソリューションを提供してきました。ファンやメディアに対しても、さまざまなデータを活用したエンターテインメントコンテンツを提供し、スポーツの新しい楽しみ方を提案しています。
今回は、データスタジアムがデータ提供で協力する「球辞苑~プロ野球100倍楽しくなるキーワードたち」(NHK BS1)にレギュラー出演している、データスタジアム株式会社のデータアナリスト金沢慧にインタビュー。金沢は、チュートリアル徳井義実さんの司会のもと、野球界で話題になったキーワードについてデータ面からわかりやすく解説し、番組を支えています。番組づくりにデータがどう関わっているのか、またデータ活用の今後の可能性などについて伺いました。

「球辞苑~プロ野球100倍楽しくなるキーワードたち」(NHK BS1)1月28日放送「球持ち」収録の様子

■「球辞苑」で紹介するデータができるまで

僕が出演させていただいている「球辞苑」は、毎回プロ野球にまつわる一つのキーワードを取り上げ、関係者の取材やデータ分析、スタジオトークなどから、その裏側や真髄に迫る情報番組です。僕はそこで、関連するデータを紹介、解説する役割を担っています。
番組制作にあたって、まずテーマとなるキーワードが決まったら、早速データの収集、加工の作業に入ります。そこにかかる時間は長くて数十時間、短くて数時間。たとえば2016年12月3日放送の「インハイ」(インコース高め)のように、取り上げるテーマ自体に明確な定義がある場合は、関連するデータが既に存在することが多いので短く済みます。でも、たとえば2017年1月14日放送の「ホームランキャッチ」の場合は、そもそも何をホームランキャッチとするのか、定義が明確ではありません。そうした場合、定義そのものから検討、決めなければならないので、時間がかかってしまうんです。1月28日放送の「球持ち」にも確かな定義はなかったのですが、大リーグで「エクステンション(プレートからどれだけ前でボールを放したか)」という似たような言葉が存在したので、それを頼りにデータを当っていくことができ、心配していたほど時間はかかりませんでした。そうやってデータを用意していき、最終的にはパワーポイント10枚ほどの資料に落とし込んで、収録に臨んでいます。司会の徳井さんはじめ、番組には毎回豪華なゲストがいらっしゃいます。お笑いのプロの方とご一緒するのも貴重な体験ですが、野球界の名選手の方々もたくさんいらっしゃるので、元野球少年の僕としてはものすごい特等席で皆さんを観させていただいているような感覚です(笑)。

■データ分析に向いているプロ野球、これから熱くなるバスケットボール

プロ野球は、プレーが場面場面で途切れるので、さまざまな切り口で分析することが可能なスポーツと言えます。一方サッカーの場合は、どの選手がパスを何本出して、何本シュートを打ったのかといったデータも取ったりはしていますが、プレー自体は途切れることがないので、分析しにくいスポーツだと思います。ただ、どの選手が一試合で何㎞走ったかなどのトラッキングデータも取れるようになったので、これからより分析に取り組んでいく価値も可能性もあるスポーツだと言えるでしょう。また、今後データ活用が盛り上がっていくだろうと考えているのはバスケットボール。日本にもBリーグができて、スポーツビジネスでも人気コンテンツになることが期待されています。バスケットボールって、誰もが学校の授業でやったことがあるわりには、試合をどう見たらいいのかはいまいちわからないというスポーツでもあるんですよね。ですから、試合の時に解説者がデータをどんどん活用していけば、データを通して視聴者の理解も進んでいくんじゃないかなと考えています。「ちょっとは興味があるけどそこまで詳しくない」といった人にとっては、そうした解説者の“通訳”はとても有効だと思うんです。そこにデータを活用できれば、間違いなく競技をさらに面白く見ることができる。そうしたスポーツへの興味の入り口としては、データは最適だと思いますね。

■スポーツにおけるデータ活用の可能性

数年前から「スポーツアナリティクスジャパン」(データスタジアム社協力)が開催されるなど、日本でも「スポーツアナリティクス」への熱が高まっています。スポーツアナリストたちのなかには、フェンシングなど個人競技のデータ分析や車いすテニスのサポートを行っている方もいますし、最近ではデータに関して、自分の状態を知りたいというプロの選手からの問い合わせもあります。一方で、スポーツビジネスにつながる観客や収支に関するデータ、選手の査定や選手の発掘といった球団運営に関連するデータ、スポーツ医学につながるデータなど、データの種類や範囲は本当にさまざまで、それぞれに新しい展開が考えられます。スポーツにおけるデータ活用の可能性はこれからますます広がっていくでしょう。
また、「球辞苑」という番組をやっていて発見したのは、日本の視聴者はストーリーが好きだということ。データや数字そのものからわかる真実にこだわるというよりは、やはりその背景にある人間ドラマや「江夏の21球」のような熱いストーリーを補完する意味でのデータや数字に興味をもつ傾向があるということです。「球辞苑」はまさにそういった視聴者の皆さんのハートをつかんでいる番組ですし、これからもそういった楽しみ方が広がるお手伝いを続けていきたいと考えています。

金沢慧 かなざわ・けい
データスタジアム株式会社 ベースボール事業部アナリスト

1984年生まれ。学習院大学経済学部卒業、筑波大学大学院体育研究科修了。学生時代に雑誌「野球小僧」のライターとして活躍。大学院ではスポーツ経営学を学び、卒業後データスタジアム株式会社入社。プロ野球を分析し続けている。NHK BS1で放送されている「球辞苑」にデータ解説役として出演。