深谷 信介
スマート×都市デザイン研究所長 / 博報堂ブランドデザイン副代表 / 博報堂ソーシャルデザイン副代表

東京駅よる10時。
残業? はたまた少し飲んだ帰りでしょうか?・・・
足早に帰路を急ぐビジネスマンが駅ナカを慌ただしく行き交う中、毎晩西へ向かって、静かにゆったりと出発する夜行列車があります。

サンライズ出雲。
鉄道好きな方々は、よくご存知ですよね。
鉄チャンではないわたしは、東京駅から夜行列車が出ていることをまったく知りませんでした。

「東京から日本一遠いまち」 。
そんなフレーズで地理の教科書に載ったことがあるまちへ。
今回は、飛行機でもなく新幹線でもなく、在来線を使って行ってみようと思ったのは、数ヶ月前。
でもなかなか切符が取れないんです。人気あるんですね、夜行列車。
1ヶ月前から予約がはじまるその日のあさ10時に、窓口に並んでなんとかゲット!
夜行列車は、30年ぶりかな〜?
いつもの移動が、ちょっとドキドキ・そうとうワクワクしてきました。

夜食を買って、ついでに明日の朝食も買って、10時10分前に列車に乗り込む。
寝台のタイプはいろいろあって、わたしはこの2階の1人個室を選びました。
カプセルホテルよりかなり広めで、大きな窓があるこの部屋は、なんかワンルームマンションみたいな素敵な居心地。
車内は、とっても静か。浴衣も用意されていて、シャワーも付いている。とてもゆたかなひとりスペース。

見送る人が手を振る中、音もなくスーッと、サンライズ出雲はゆっくりと発車しました。
部屋ごとの枕元にある小さなスピーカーから、車掌さんが直接ひとりひとりに語りかけるようにアナウンス。
「次のアナウンスは、岡山到着朝5:00となります。みなさま、ゆっくりとおやすみくださいませ」
ほどなくゆったりとしたアナウンスが個室に響き、列車の電気が消え、動く寝室のはじまったのは、横浜を過ぎたあたりだったでしょうか?
レールの継ぎ目が奏でるカタンコトンという調べだけが、やわらかく響く。
列車の揺れに身を任せて、ボーッとしていたら、
最近あまり味わったことのない心地よい時に包まれ、あっという間にウトウトと・・・笑

「みなさま、おはようございます。あと◯◯分で岡山に到着いたします」
岡山到着、まだ周りは真っ暗。けれどもうすでに通勤・通学の方々がすでにプラットフォームに並んでいます。
日本人ってチャンとしてるな〜と感じる瞬間に、わたしは備え付けの浴衣にスエット姿でベッドの上・・・
岡山からは日の出とシンクロするように、コトコトと山合いを走り抜ける伯備線に入っていく。
車掌さんのアナウンスも朝モードに変わったようです
ちょっとしたまちの案内を織り交ぜながら、なにか軽快な心地よい明るい声色になり、列車のカタコトッ音とうまくハーモニーを奏でて、日本トコトコッ感を強く演出してくれます。

鳥取・岡山の県境、分水嶺のご案内、大山、出雲、松江城・・・ 日本遺産の
そんな景色を堪能しながら、ベッドの上の朝食。何気ないサンドイッチが、この上なく美味しく感じるひととき。
移動は、機能ではなくて、情緒を育むものだなぁ。
移動こそ人類史のエポックだ!っなんて思いながら、コーヒーをいただき、12時間、
終着駅ご縁の国・出雲駅に到着しました。

東京から一番遠いまちへは、ここから在来線(と言っても山陰本線ですが・・・)に乗り換えてもうちょっと。
一両編成の列車に数人のお客様が乗り込み、思い思いの時間を過ごしているようだ。
海沿いを走るこの列車は、ともかく景色の変化が愉しい。山合いを抜けてきたからこそ、今回の海はまた格別だ。
風が少し強い今朝は、風力発電もいい感じで動いていそうだ。

そんなこんなで、ゴーコン開催地の江津(ごうつ)駅にお昼過ぎに無事到着。
昨晩10時に出発し本日お昼に到着、締めて14時間の列車の旅、無事終了です。

長かったのか短かったのか?いつもとは違うルートでいつもとはちがうユニークな時間を過ごしたのち、江津ビジネスプランコンテスト、略してゴーコンの最終審査会に臨みます。
若手UIターン起業家をまちぐるみで全面応援するこの取組は、ことしで7回目
東京から一番遠いまちが、いま、クリエイティブクラス先端活動エリアに生まれかわっています
国もメディアもわたしたちも注目するこのまちは、ほんとうに「山陰の創造力特区」になりつつある。
ビジネスプランコンテストを応援にくるまちのひと150名。
起業と実業の仕組みを強力に支えるNPO/商工会/信用金庫。
そして、どこまでも黒子に徹し、きめ細やかなサポートをしつづける市役所職員のみなさま。
たいへんなことを愉しくすすめる。見えないところで多くの汗をかき続ける、だからうまくいくのかもしれません。
栄えある大賞は、『パクチーで稼げる農業を実践、江津に第3の特産品を』原田さんに決定しました。

みなさんも一度、訪れてみてください。飛行機ではなく、サンライズ出雲に乗って。
きっと車中、イノベーションのヒントをたくさん感じることができるかも、ですよっ笑

あっと最後に・・・
江津駅で降り立ち、渡リ廊下になっている青い高架橋を歩いていたまさにその時、わたしの横を全速力で駆け抜ける学生にすれ違いました。
もう列車は扉を閉め、発車している・・・
あ〜っ間に合わなかった、残念。彼は次の電車まで何時間待つんだろう などと気を揉んでいたその瞬間、
大きなブレーキ音がして、列車が止まり、ドアが開き、学生を乗せ、なにごともなかったように、列車は再出発していきました。まるで知り合いが自分のクルマにやさしく友人をのせるように。

便利や快適の先に、なにがあったのだろう?
江津から一番遠いまち、東京は大丈夫だろうか?
今日も「地域は大丈夫」と強く思いました。

次回は すべらない砂 です

PS
あけましておめでとうございます
ことしも日本トコトコッ、よろしくお願いいたします

にっぽんトコトコッ
トコトコカウンター:ただいま91トコトコッ

島根県江津(ごうつ)市

アクセス:JR山陰本線江津駅
URL:江津市役所 http://www.city.gotsu.lg.jp/
http://go-gotsu.jp/

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