買物をする生活者=ショッパーの変化から「未来の買物」を提言する実践型シンクタンク「博報堂買物研究所」。今回私たちは2000年以降に成人になった「ミレニアル世代」が家族を形成しはじめたことに注目。この連載ではそんな彼らの家族像と買物の特徴をご紹介します。

買物研究所では、これまで、リリース「身の幸家族でフレキシ消費」第1回のコラムで、ミレニアム家族の消費行動をご紹介してきました。
ただ、同じミレニアル家族といっても、専業主婦とフルタイム女性に分けて比較すると異なった買物特徴があることは第2回コラムでお伝えした通り。今回、同様に、住んでいる地域別に分析をしてみると、都市と地方で異なった買物特徴があるということが分かったのです。
今回は、人口100万人以上の都市に暮らすミレニアル家族と、人口30万人未満の地方に暮らすミレニアル家族とで比較した、それぞれの異なる消費行動の特徴をご紹介します。

1. 実家との繋がりが強い、地方のミレニアル家族。

まず、消費行動をご紹介する前に、都市と地方のミレニアル家族の暮らしの違いをご紹介しましょう。
地方のミレニアル家族は、都市のミレニアル家族よりも父母との近居率が高くなっています。
具体的には、都市の母/義母との近居率が17.9%なのに対し、地方は37.6%。
父/義父の近居率でみても、都市が17.1%なのに対し、地方は34%と高くなっています。
高い近居率の影響もあり、家事や子育て等の定期的な実家支援状況も地方が優位。子供の世話で見ると、地方の定期的な支援率が10%以上高くなっています。

さらに「家事のやり方は親の影響を受けていると思う」と答える割合も、地方は44.4%と、35.6%の都市よりも高くなっていて、結婚してからも実家との関係が強い様子が伺えます。

2.買物の「広さ」が異なる都市と地方

そんな、都市と地方のミレニアル家族で、買物をする意識・行動面での違いはあるのでしょうか。

①金銭面でシビア、間違いのない買物をしたい地方のミレニアル家族。

「今の生活に満足している」と回答する割合は、都市のミレニアル家族では55.2%、地方のミレニアル家族では47.8%。
「お金の余裕がある方だ」と回答する割合は、都市のミレニアル家族では20.5%、地方のミレニアル家族では12.9%でした。
このように、地方のミレニアル家族は、都市のミレニアル家族よりも金銭的にシビアな傾向がみられました。

このため、地方のミレニアル家族は、やはり買物にもシビアな一面があります。
「コストパフォーマンスやお得感で商品を選ぶ」と回答した地方のミレニアル家族の割合は56.7%と、都市よりも10ポイント以上も高く、「気に入れば中古品やリサイクルでも構わない」と回答した割合も38.8%と、都市の30.5%よりも高い結果になり、より節約志向な一面がみてとれます。

さらに「いつも同じ物を買いがちだ」と回答した割合が、地方で77.4%、都市で65.4%という結果になり、都市よりも狭い範囲で買物を行っている様子が見て取れました。

普段接触しているメディアで比較してみても、口コミ・比較サイト等のWebサイトの接触率も、都市よりも低い傾向にありました。また、ECの非利用理由のランキングを見ても、「商品が多すぎて選ぶのに時間がかかる」と回答した割合が32.3%と、3位にランクイン。より多くの情報や商品を探索するよりも、いつもの間違いのない範囲で買物をしようとする傾向が見えてきたのです。

②情報を探し、吟味して買物する、都市のミレニアル家族。

節約志向の地方のミレニアル家族に対して、都市のミレニアル家族の買物は品質への探索重視の傾向にあります。
「たくさんの商品の中から選んで買いたい」と回答した割合は、都市で46.6%、地方で41.5%。
「よりよい物を買うために調べる」と回答した割合は、都市で50.7%、地方で42.6%。
「お店のオススメや店員のアドバイスを参考にして買物をする」と回答した割合は、都市で22.1%、地方で14.1%。

都市のミレニアル家族の方が、家の周りに店舗が豊富であったり、商品情報があふれている空間に慣れているため、自分に合う商品の情報を収集しながら、積極的に商品を吟味するという傾向がみてとれます。

3.どんな場所でも、満足度の高い買物をするために。

このように一口にミレニアル家族といっても、住む地域によって生活意識や実態、買物行動にも違いがあります。
そこで、都市のミレニアル家族と、地方のミレニアル家族それぞれの買物がより満足度の高いものになるために、企業が取り組むポイントを1つずつご紹介します。

・多くの情報を求める、都市のミレニアル家族に

沢山の情報の中から積極的に情報を吸収していく都市のミレニアル家族には、沢山の情報を取捨選択し、商品を選びやすい買物環境を整えてあげることが大切になります。
たとえば、スペインのある精肉店では誰でも分かりやすく肉を買えるよう、動物の肉の部位を大きな絵で示しているパッケージ使用しています。例えば牛のモモ肉であれば、牛のイラストのモモの部分に大きくマルをつけているのです。さらに、羊の乳から作ったチーズでは、羊のイラストの乳房の部分にマルをつけるなど誰でも分かりやすく買物が出来る工夫をしています。こうした工夫で、じっくりパッケージの説明文を読まなくても、一目で情報を吸収して商品を選択することができます。
このような、直感的な情報発信の仕方は、商品を選択する際に今後ますます重要になってくるでしょう。

・間違いのない買物を求める、地方のミレニアル家族に

一方、地方のミレニアル家族は、実家とのつながりが強い人々でした。この身近な人とのつながりをさらに拡大。地元や地域を活用して安くて、良い商品を手に入れられるような買物環境を作るのはどうでしょうか。たとえば、親族やご近所さんと協力した買物や、コミュニティ内でのリユースを促進させてあげるような商品・売り場作り等が考えられます。
すでに、アメリカではご近所で中古品などのモノを売ってくれる人を探すことができるフリマアプリがあります。地域の人とつながりながら、遠くまで出品する手間をかけずに取引をすることが出来るのです。アメリカではこうした、ローカルでモノを取引できるサービスが活況で、「中古で高く売れるモノを買う」と言ったように、新品のモノの買い方にも影響を及ぼしています。仲間や地域の繋がり活用しながら間違いのないものを手に入れる買い方作りや、商品作りが今後重要になってくるかもしれません。
地域の買物特徴に合わせたアイデアで、買物の満足度が上がる。
もっとそんな試みが増えると、どこに住んでいても買物に不便なく、楽しい買物生活を送れる人が増えるかもしれませんね。

以上が、都市と地方のミレニアル家族についての買物行動分析でした。

次回は、ミレニアル世代の「幸せを感じる消費」について分析し、そこから見えるミレニアル世代の幸福感についての発見をお届けいたします。

瀧﨑 絵里香(たきざき・えりか)
博報堂買物研究所 リサーチャー

慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。
2015年博報堂入社後、卸・流通を中心に、リテールマーケティングを起点としたマーケティング立案に携わる。2016年からは博報堂買物研究所にて、化粧品、日用雑貨、衣料品、自動車などの、ショッパージャーニー分析を起点とした統合プランニング業務に携わりながら、未来の買物行動についても研究を行っている。

※編集協力:博報堂 買物研究所 ストラテジックプラニングディレクター 山本泰士(やまもと・やすし)

【調査概要】
ミレニアル家族 生活実態調査
【定量調査概要】
全国のミレニアル世代の家族(子あり)とアラウンド50世代の家族(子あり)の妻に対して、両世代の比較調査を実施。ミレニアル世代の家族の定義は25歳~34歳で長子6歳以下。
対象者:ミレニアル世代(25歳~34歳)主婦 620名
(うち都市在住310名、地方在住310名)
手法:インターネット調査
期間:2016年8月

★バックナンバー★
・【博報堂買物研「ミレニアル家族が買物を変える!」第1回】新・家族の買物像「身の幸(さち)家族のフレキシ消費」
・【博報堂買物研「ミレニアル家族が買物を変える!」第2回】 気持ちも時間もコントロール 「働くママ」の買物行動