買物をする生活者=ショッパーの変化から「未来の買物」を提言する実践型シンクタンク「博報堂買物研究所」。今回私たちは2000年以降に成人になった「ミレニアル世代」が家族を形成しはじめたことに注目。この連載ではそんな彼らの家族像と買物の特徴をご紹介します。

近年、働く女性の数は増加し続け、現在ではいわゆる生産年齢(15歳~64歳)の女性の64.6%が働いています。従来、結婚・出産をすると就業率が低下する「M字カーブ」が問題視されてきましたが、結婚をしている有配偶者だけで見てみても、働く女性が増加。特に、その割合は25~34歳で高い上昇率を見せており、昭和50年からの40年で約2倍の約6割まで増加。小さい子供を持つ若いママであっても「働くママ化」が顕著です。


(総務省 労働力調査より)

1.働く女性は増加、けれど「働くママ」は?

私たちは今回、全国の25歳~34歳で6歳未満の子供を持つミレニアル世代の母親に対して生活調査を実施。ここでは、ミレニアル世代における、専業主婦・フルタイム共働き女性との比較から見えてきた、「ミレニアル世代の働くママ」の特徴をご紹介しましょう。

まずミレニアル世代の女性全体を見ると、男性が仕事を、女性が家庭を守るといった考え方を持つ女性は既に少数派。「男性は仕事、女性は家庭を大切にする方がよいと思う」と答えた割合は約1程度。さらに、回答者の約7割が「男性も女性も関係なく、出来る方が家事をすればいいと思う」と答えています。これらの割合は、専業主婦女性もフルタイム女性も同じで、双方ともよりフラットな意識を持っていることがわかりました。

しかし、こと子供を産んでから仕事をするということへの意識となると、事情は異なります。「女性は子供が生まれても仕事を続ける方がよいと思う」という意識は、35.8%とまだまだ過半数に及びません。さらに、フルタイム女性では約5割がそう思うと回答しているのに対し、専業主婦は2割未満と意識の差も大きく見て取れます。

社会の意識として、働く女性が増加している一方で、実はまだまだ「働くママ」の存在は十分に肯定されているわけではない実態が見えてきました。

しかし、一億総活躍社会の元に「働くママ」は、これからますます増えていくのは事実。今回は、これからの家族のありかたや消費を変える、この「働くママ」の意識と買い物行動に注目したいと思います。

2.「働くママ」は自立しながら活用する。

働くママたちには次のような特徴があります。

①ステレオタイプな女性像に縛られない

「男らしさ・女らしさは大切だと思う」と答えた割合は、フルタイム女性では36.0%で、専業主婦では55.3%。
「女性らしさ」「男性らしさ」という性役割に対しては、働くママの方がよりフラットな意識を持っています。

②子離れしながら働くママ。

「母親はなるべく子供と一緒にいる方が良いと思う」と回答した割合は、専業主婦では68.6%、フルタイム女性では37.6%。働くママの方が子供への依存が少なく、より子離れしている傾向が見て取れます。

③頼れるものはとことん使う。

家事配分率を見ると、専業主婦女性の夫の家事配分率が1.4割、フルタイム女性は2.3割と、差があります。働くママの夫の方が、より多く家事に参加しているのです。

また、実家からの家事支援状況を見ると、フルタイム女性での支援が全体的に多く、約5割が子供の世話全般の支援を受けています。

ちなみに、家事補助ツールの利用率を見てみると、お掃除ロボットでは専業主婦が利用率4.3%に対して、フルタイム女性は利用率11.7%。洗濯乾燥機、食器洗浄機などにおいても利用率が高く、家電等の家事補助ツールにおいても、働くママの活用上手な一面がわかります。

このように、働くママは、自立した一面を持っていながらも、働く忙しい中で時間をやりくりするために、身の周りの人・モノを活用しながら忙しい毎日を乗り切っているのです。

3.「働くママ」の買物は、タイムパフォーマンス重視。

では、このような働くママの、買物行動はどうなっているのでしょうか?ここにも3つの大きな特徴が見えてきました。

①買物は最小限の労力で。

買物時間を比較してみると、フルタイム女性は専業主婦より、平日の買物時間が大幅に少なく、約2分の1の26.4分。
しかし、休日の買物時間は専業主婦と同じ55分となっており、働くママは、買物時間そのものが少ないということがわかります。

また、買物をする店舗チャネルの平均利用数を見ても、あらゆる商品ジャンルにおいて専業主婦よりも利用数が少なく、いろいろな店を見て回るというより、絞られた店舗で買い物している様子がみえてきました。
さらにフルタイム女性は、コンビニやECの利用率が高く、身近な店舗、便利な買い方を使いながらとにかく徹底した時短を目指していることが見えてきました。

②タスクと化した買物。

次に、買物意識を見てみると、「買物をすることでストレス解消することができる」と回答した割合は、専業主婦が47.3%なのに対して、フルタイム女性は29.4%。働くママにとって、買物は楽しいものではなくタスクであることが伺えます。

③抑圧された買物欲。

 このように、買物をタスクとみなし最小限の労力で行っている働くママですが、一方で買物に対して「もっと時間をかけて、良いものを買いたい」という気持ちも持っています。
「買物を楽しみたい」という意識を見ると、専業主婦よりは若干低いものの、フルタイム女性でも6割を超える意向を持っています。
また「複数の店を見てから買いたい」という問いに対しては、専業主婦が38.5%なのに対し、フルタイム女性が38.8%。さらに、「少し遠出してでもよい物を買いたい」という問いに対しては、専業主婦が31.0%なのに対して、フルタイム女性は36.4%と高くなっています。このように、働くママであっても専業主婦と変わらない、買物を楽しみたい欲求を持っていることが分かりました。
しかし働いて時間がない中で、結果的に利便性の高いチャネル利用に偏り結果として買物にかける労力を抑えているのです。

4.「働くママ」の買物欲を満足させる日本へ。

このように、「働くママ」は、買物を最小限の労力で行い、頼れるものは活用し、自分の買物への欲求を抑える…という徹底した「時間」と「気持ち」のコントロールを行っています。
しかし、忙しいからといって「買物を楽しみたい」という欲求を抑圧したままでいいのでしょうか?これからますます増える働くママ。そんなママたちの毎日を少しでも楽しくするために企業ができる2つのポイントを最後に紹介します。

まず、時間をかけずに効率的に、だけど楽しく買物が出来ることが大切になります。そこで、少ない買物時間でも「私たち家族が欲しいモノだ!」ということが楽しく伝わりやすい環境を整えることは、ミレニアル家族に選ばれるポイントと言えます。
例えば、ハロウィン、クリスマス、お正月、節分…などの家族の季節イベントに向けて「こんな工夫をするともっと家族が楽しくなる」というビジュアル化されたわかりやすい提案をすることは今後重要になってくるでしょう。

【Impression】家族の幸せを直感
✓その買物で家族の時間が充実し、楽しくなることがビジュアル的に分かりやすい

また、遠くの店に行ったり、たくさんの商品の中から選んだりしたいが、時間がなくてできない。そんな抑えられてしまっている買物への欲求に代わる、「新しい喜び」を提供することも大切になります。特別な行動ではなく、買物体験そのものが新しい喜び・付加価値を作り出すことがポイントです。
例えばブラジルの大手スーパーでは、野菜売り場に実際に土に植えた野菜を陳列し「収穫しながら買物する」というキャンペーンを実施し好評を博しました。このような「日頃の買い物の中での楽しみ、サプライズづくり」はますます重要になってくるでしょう。

【Pleasure】買物のついでの喜びづくり
✓モノを買う以上の体験がある
✓買物自体が家族の学びになる
✓買物が社会貢献になる

働くママでも毎日の買い物を楽しめる。そんな日本になるとますます、生活も楽しくなり市場も活性化するかもしれませんね。

以上が、ミレニアル世代の「フルタイム共働き女性」「専業主婦女性」の買物行動分析でした。
次回は、ミレニアル世代を「都市」「郊外」「地方」の居住エリア別分析から見える発見をお届けいたします。

博報堂買物研究所 リサーチャー
瀧﨑 絵里香(たきざき・えりか)

慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。
2015年博報堂入社後、卸・流通を中心に、リテールマーケティングを起点としたマーケティング立案に携わる。2016年からは博報堂買物研究所にて、化粧品、日用雑貨、衣料品、自動車などの、ショッパージャーニー分析を起点とした統合プランニング業務に携わりながら、未来の買物行動についても研究を行っている。

※編集協力:博報堂 買物研究所 ストラテジックプラニングディレクター 山本泰士(やまもと・やすし)

【調査概要】
ミレニアル家族 生活実態調査
【定量調査概要】
全国のミレニアル世代の家族(子あり)とアラウンド50世代の家族(子あり)の妻に対して、両世代の比較調査を実施。ミレニアル世代の家族の定義は25歳~34歳で長子6歳以下。
対象者:ミレニアル世代(25歳~34歳)主婦 930名 (うち専業主婦563名、フルタイム367名)
手法:インターネット調査
期間:2016年8月

★バックナンバー★
【博報堂買物研「ミレニアル家族が買物を変える!」第1回】新・家族の買物像「身の幸(さち)家族のフレキシ消費」